愛に溢れた切ない映画。
舞台はアメリカ南部。
老人施設で、一人の老人が入居者である老婦人に、ノートに書かれた物語を読んで聞かせていた。
それは、貧しい若者ノアと富豪の一人娘アリーとの恋の物語だ。
ノアの一目ぼれで始まった身分違いの恋は、ひと夏の夢のはずだった。
でも、それは運命の恋、別れた後も、二人の心の奥で熾き火のように燃え続けていた。
そして、ある日二人は再開する。
「その結末はどうなるの?」
「それはまだまだ先だよ」
「そのお話・・・」
「思い出したかい?」
「読んだことがあるような・・・」
老人の彼女を見る目がやさしい。
やがて老人は、「アリー」と彼女に呼びかける。
「これは、私達のことね!あなたはノア?」
「そうだよ、アリー」
その物語は、今は年老いたノアとアリーの輝かしい青春の物語だったのだ。
認知症を患って、彼のことを忘れてしまったアリー。
「ああ、ノア、私、いつまでこうしていられるの?」
「この前は5分だった」
彼女がアリーに戻るその5分間のために、ノアは、何度も何度も彼らの物語を読んで聞かせていたのだ。
アリーを取り戻したひと時の幸せは、前触れもなく突然終わる。
彼を突き放し、「あなたは誰!」「どうしてここにいるの?」と半狂乱になるアリー。
ノアの悲しい表情が切ない。
読んでいたノートには、「愛するノアへ、アリーより」と書かれているというのに。
老いるって、なんて残酷なのだろう・・・
ある夜、ノアはアリーに戻った彼女の傍らで、眠る。
翌朝、病室を訪れた介護士が見たものは、手を取り合ったまま旅立った二人の姿だった。
これはきっと幸せな結末なのだろうと思う。
でも、長年連れ添った夫が、妻が、自分を忘れていく悲しみはいかばかりか。
自分が愛する人を忘れていく悲しみは・・・
ある日、あなたは誰?と問いかけられたら・・・
その日の恐ろしさに震えてしまう。
最後まで憶えていたい、憶えていてもらいたい。
そのために、いったいどうしたらいいのだろう・・・