短い評論ですが、田代親世さんの鑑賞コラム が載っていました!
母親の歪んだ愛に運命を狂わされる義兄弟の行き着く先が気になります
「蒼のピアニスト」は、復讐が交錯する狂詩曲!
「蒼のピアニスト」鑑賞コラム Vol.3
『蒼のピアニスト』は、チュ・ジフン、チ・チャンウクという美しきピアニストの
兄弟が織りなしていく、激しい愛憎のドラマ。
『妻の誘惑』『天使の誘惑』『運命の誘惑』といった数々の復讐ドラマで知られる
キム・スノク脚本家の作品だけに、ドラマで描かれる憎しみは1つや2つではなく、
あちこちに復讐のベクトルが向けられ、交錯しているのがすごいところだ。
発端は憎悪を抱えたヨンランの夫婦関係だ。愛の無い結婚を強いられたヨンランは
夫を愛さないことが復讐だと思って生きてきた。
その夫は、妻を愛するがあまり、10年も共に暮らしながら自分に関心を向けようと
しない妻を恨んでいる。
そんな妻にあてつけるように浮気もするし、果てはよその女との間にできた子だと
いってジホを引き取ってくるのだ。
もうスタート時点から憎しみが充満している。
そして事件が起こるのだが……。ヨンランによって罪を被せられた男性の遺族は、
長い年月をヨンラン憎しで過ごしている。
そしてもう一人、ヨンランにかつてこっぴどく捨てられた男が、ヨンランと彼女の
率いるプソングループを潰そうと、名前を変えて現れる。いやはや、ヨンラン、
あなたはいったいどれだけ多くの人から恨まれているんですか……
という仕掛けである。
その上、ヨンランは始め実の息子イナからも恨まれる。
溺愛しているのに、やることがいつも裏目に出てしまい、息子からその愛を
疑われる母。
一方で、義理の息子のジホには愛情など掛けたくもないのに、かけざるをえない
状況になっていく皮肉。
やがてはジホにもその魂胆がバレて、ジホすらも母ヨンランを恨むように
なっていく。
イナはイナで、自分の大切なものをすべて奪っていくようでジホのことが憎くて
たまらない。
このように、幾つもの旋律が音楽を成して
いくように、人物の間を行き交う何本
もの愛憎の線がドラマを展開させてゆく。それだけに、あっちでもこっちでも
それぞれが復讐の刃を研いでいる状態なので、やって、やられて、違うところ
から弾が飛んできて……
という具合にどこに転ぶか先が読めなくなっていくのだ。息もつかせぬ、
これでもかという展開で見る者を引っ張るドラマを書いてきたキム・スノク
脚本家ならではの、「ええっ!?」「おおっ!?」っとびっくりさせられる
仕掛けが終盤に行けば行くほど入ってくる。
これはもう韓流ドラマならではの何でもありの衝撃ワールドなので、それを
楽しみながら翻弄されるべし。
KSTYLE
文:田代親世