ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

「情けは人のためならず」のDNA

2011-08-05 | 日本のこと

            
 



サンフランシスコに着いてすぐ、アパートの角にある小さなグロッサリー(コンビニのような店)
に入りました。
店番の、おそらくギリシア系と思われる女性が私の履いていた5000円のサンダルを指さして
「いい靴ね~!そんなきれいな靴観たことないわ。どこで買ったの?」
「ボストンのTJマックスだけど・・・・去年のよ」
「そうかー、残念・・・。日本人?」
「そうですよ」
That's good!

えー、日本人なら何がグッドなんでしょうか。
よくわからないけど日本人が歓迎されているらしいのは分かった。
「地震の後避難してきたの?」
「ううん、息子のサマーキャンプだけど・・・やっぱり逃げてきた日本人多い?」
「このアパートは(私たちの住んでいるところ)日本人が多いですよ。
地震の後たくさん引っ越してきたみたい」
「へえー、そうなんだ」
「ここはジャパンタウンが近いから、そのせいじゃない?」

サンフランシスコのジャパンタウンは、チャイナタウンやコリアンタウンと違い
「その民族が集まって住んでいるところ」ではなく
「日系アメリカ人の組織が作ったショッピングモール」なのです。

ジャパンタウンには、和食の店、日本食スーパーは勿論、パンのアンデルセン、ベニハナなどの
「日本的なもの」、紀伊国屋(本)や日本文化を扱うものなどが入っているのですが、
私はあまり好きではないのでここ何年か足を踏み入れていません。
やたら古臭く、1960年代の日本?って雰囲気なんですよね。
それにね。
これは余談というかグチですが、冒頭のジャパンタウンの写真を見てください。
アメリカの旗、日本の旗、カリフォルニアの旗のわざわざ近くに何故か中国人のインチキ和食屋。
右写真はゲイリーストリート側の、つまりモール内部ではない、表に面しているところなのですが、
みんなハングル。

どうしてわざわざジャパンタウンに寄生しているのこの人たち?
日本の店と間違えてあほなアメリカ人が来るのを待ってる?
あなた方の嫌いな日本と思われたいの?
ロスアンジェルスのジャパンタウンも同じように寄生されて悲惨なことになっているようです。
昔無理やり併合されたという言い分は、こういうことからも全く信用できないといつも思います。


ここアメリカで日本人は、不法入国をしない、犯罪を犯さない、コロニーを作らない、そして
何と言っても一人一人が「よき外国人」であろうとしてきました。
その歴史が、今日の「日本人?それはいいわね!」に繋がっていると思うのです。
(こんなことをリアルで言ってもらえる国民って、他にいるのかなあ)


一般に日本人ほど世界に日本がどう思われているかを気にする民族はいないと言われます。
外国人は日本人からよく受ける「日本をどう思うか」という質問を奇異に思うそうですし、
「菊と刀」「日本人とユダヤ人」などの「世界の中の日本」的なテーマは出版界でも好まれます。

個人単位で言うと、平時でも日本人であることを行動の規範にしている民族はいないでしょう。
「こんなことをしたら日本人みんなが悪く見られてしまう」
という意識が、あるときは弱い自分を抑えるストッパーになり、
あるときは善行を積むことによって、日本人全体にその評価や恩返しが返ってくると考えるのです。

去年のことですが、スーパーマーケットで初老の中国系女性に声をかけられました。
「携帯電話をかけさせてもらえないか」
待ち合わせの場所に娘が現れないので連絡したいのだけど携帯を持っていないとのこと。
わたしの携帯はグローバル対応なので、アメリカで使うと国際電話扱いになります。
勿論一回の通話料は高いのですが、非常時にしか使わないのでずっとそうしています。
「わたしの携帯電話は国際電話で、私の国を経由した料金がかかるのです。
すみませんが通話料がかかりすぎるので他の方に頼んでください」

そういうと、インテリらしくきれいな英語をしゃべる彼女は穏やかに
「そうですか」
と、言って私の傍を離れました。

その後も気になって彼女の様子を見ていたのですが、一向に他の人に電話を借りに行かない。
店内には数人の客がいるのにもかかわらず。
そこで、彼女の立場で考えてみました。

よく知らない場所で長時間待たされて心細い状態で他人に電話を使わせてほしいと頼むのに
ロシア人中年男性
アラブ系若い男性
インド系初老男性
アメリカ人老婆
子供を連れた日本人女性
という人たちがいたら、誰に頼むだろうか。

・・・・・これはどう考えても子供を連れた日本人女性(つまりわたし)でしょう。

すぐさまその考えに至り、彼女に近づき、
「電話、お使いください」
「いいんですか」
「If I were you, I would ask it to me」(もし私があなただったら私に頼んだと思います)

この女性がもし、今後アメリカで困っている日本人を見たら、同じように助けてあげてくれればいいなと
電話が終わって彼女がほっとした顔で「日本人ですか」と聞いてきたときに思いました。


よく、日本人は無宗教なので行動が無節操、みたいなことを言う人がいますがとんでもない。
日本人にとって「日本」は、まさに宗教に相当する規範や抑止力となっているのです。
旅行会社の調査で「現地で歓迎される旅行者の国」第1位の栄冠をいつも頂いているのも、
多くの日本人が日本と言う国をどこかで「代表して」旅行しているからだと思うのです。
民間外交官のようなつもりで。

我々日本人はは意識するとしないにかかわらず、親や社会から教育された
「情けは人のためならず」という言葉をDNAに刷り込まれて行動しているのではないでしょうか。


ところで今日、ジャパンタウンの角を歩いていたら
「ジャパンタウンでスシ食べたいんだけど、もうここはジャパンタウンなの?」
と聞いてきた旅行中らしい男性。
「レストランは建物の中です。(言外:外に面しているのはインチキジャパニーズだからね)
ここをまっすぐ歩いていったら入口がありますよ」
「いやありがとう、日本人?」
「そだよ」
「あのさ、ジャパニーズガールって・・・いいよね!君もね」
「サンクス」
ガールって歳じゃないんですが、まあ、これもアメリカ人のよく使う言い方で深い意味は無し。
「名前なんて言うの?」

ナンパではありません。
アメリカ人はこうやって一瞬すれ違う人にも名前を聞くのです。
「エリス(仮名)」
彼は握手の手を出して
「エリス(仮名)、それじゃ」
Have a good sushi!

ここアメリカではスシも人気ならジャパニーズガールも人気ですよ。