ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

台湾を行く~中興の祖・鄭成功と日本の関係

2013-02-05 | つれづれなるままに

               

いきなり剣呑な話題ですが、かつてNHKの「ジャパン・デビュー」訴訟について、
思いっきり訴訟側に立った言論の上から激しくNHKを糾弾したことがあります。

台湾から提訴した人が来日した時に靖国神社に参拝し、
「私たちの父親がこんなところに祀られている」と涙したこと、
裁判のあと、自分たちのインタビューを不本意に編纂したうえで
ねつ造ともいえる恣意的な偏向報道を行った当事者に対し、
提訴した台湾人が深々と頭を下げたことについて触れ、
さらにはディレクターがこの問題について「二万冊もの関係書を読み込んだ」
と、物理的にありえない発言をしたことを皮肉って、

「この裁判そのものをドキュメンタリー番組にすればどうか。
二万冊の資料を読み込む必要もないし」

と結んだ、渾身の(ってほどでもないけど)ログだったのですが、ある日
何者かのサイト内侵入によって後半の文章を削除されていました。

そんなこと実際にあるのか、って?
わたしもにわかには信じられませんでしたが、「やわらか戦車」の「アニジャ」によると(←)
定期的にパスワードを変えないと、サイト侵入は難しいことではないらしいです。

とにかく、ある日このページへのアクセスがあったと思ったら、
原稿のおよそ3分の2がきれいに消されていました。

この稿は今でも証拠のためにそのまま放置してあるので、興味がある方は
「NHKジャパンデビュー訴訟問題」でサイト内検索していただけば、
わたしのいつものまとめ方にはありえない、支離滅裂で惨憺たる「嵐の後」が
実際にご覧になれるかと思います。

というか、もう一度作り直すのも面倒なので放置してあるだけなのですが。

ネットで不用意なことを言うと何が起こるかわかりませんので、
この件についてはそういう事実があったということを言うに止めますが、
この事件以降、そしてそれからほどなくして行われたこの公判で、
東京地裁がこの訴訟に対して無罪判決を出したのを知って、
この放送局に関するすべてのことが信用できなくなっているどころか、
うっすらと「背後の黒い影の存在」すら感じている今日この頃です。

しかし組織全部が悪の集団というわけでは(おそらく)ないですし、
ここにはエリス中尉の個人的な知り合いも二人いることです。
彼らに免じてというわけではありませんが、本日は「敵に塩を送る」といいますか、
いわゆる番組制作アイデアの提供をさせていただくことにしました。

前年度も大コケだった大河ドラマ、今年も出だしから難航しているようですが、
つまり取り上げる人物の「ネタ」が尽きてきた、というのが不調の原因の一つではないかと、
エリス中尉、テレビが無いので全く観ていませんが、そのように思うのです。

しかし、考えても見てください。
そんなにたくさんいるわけでもない誰でも知っている日本の歴史上の人物を取り上げて、
ついでにその出身地が、ブームにあやかって一儲け(?)を期待する、みたいな
従来の「お約束」は、もうそろそろ終わりにするべきなのではないでしょうか?

本日御局にプレゼンさせていただく企画は、
近松門左衛門作、「国性爺合戦」。
台湾中興の祖と言われた鄭成功が主人公の大河ドラマです。
中国語をしゃべらなくてはいけないので、主人公は金城武を起用しました。

「国性爺合戦」(こくせんやかっせん)とは、台湾を拠点に明朝の復興を図った超人、
「和藤内」を描いた人形浄瑠璃(のちに歌舞伎)で、モデルの鄭成功は、
38年台湾を支配していたオランダと戦い、台湾人の手に国を取り戻した人物でもあります。

決め台詞は「国を、取り戻す」
自民党の党首の言葉でなかったら、きっと流行語大賞になったこのセリフ、
おそらく現政権は長期に亘ると思われるので、2015年度に取り上げても、
決して「オワコン」にはなっていないことを保証いたします。

少なくとも「海賊王に、俺はなる」よりは皆に受け入れられるに違いありません。
とはいえ、

「いくら原作が近松だからといって台湾人を大河に取り上げるのは・・・」

と思った大河国粋主義のあなた、それはもっともです。
それでは、この主人公になぜ金城武を起用するかということからお話ししましょうか。



台南には、昔オランダが38年間統治していた時の名残、
ゼーランディア城があるということを前回お話ししたのですが、
ここには鄭成功の石像があります。



まるで上野の動物園のような城への入場門。



石像の前でモデル立ちしてポーズをとる女の子。



この木もどうやらガジュマルの木のようです。
傘のような繁り方が美しい。



オランダ人の残した大砲。(たぶん)



城壁を守るかのように転々と。
当時を再現しているようですが少なくともこの部分は
後から作られたものでしょう。

 

それではこのいかにも古そうな部分は?
右はどうやら本物だと思いますが、左は微妙ですね。

 

どこが本物なのかさっぱりわかりません・・・。



往年の姿。
それにしてもこの模型も古すぎないかい?と思ったら、実はこの遺跡、



昔(といっても写真が存在した時代)にはこうだったのです。
この写真はだれが撮りましたか?
そう、もちろん日本の台湾総統府ですね。

日本政府は、この統治国のこのような遺跡まで当時再現したのです。

何度も何度も言いますが、ただの搾取するだけの植民地の、
このような遺跡をわざわざ巨費を投じて保存する国がほかにありましたか?

むしろ、彼らの精神的よりどころであるものであるほど、それを破壊するのが、
GHQなどに見られる統治政府の本来の姿なのではないでしょうか。

 

こういう武器も残されていた模様。



こういった鉄製のチェストや、

   

家具調度のたぐいも保存されています。



左は当時のオランダ総統府の偉い人。これもたぶんです。
右が鄭成功ですが・・・うーん、金城武は少し男前すぎるかな・・・・。

しかし、もしこの企画が実現するなら、鄭成功をぜひ金城武にしたい理由があります。

鄭成功は1624年、日本の平戸に、中国人の父、日本人の母の間に生まれました。
幼少期の名を「福松」といい、7歳まで平戸で過ごし、その後福建に渡りました。

・・・・・ね?

日本人の父と台湾人の母の間に生まれた金城武にぴったりの役じゃないですか?



日本人の母と一緒の幼き鄭成功の像。
半分日本人であることを台湾の人々は尊重しているようです。

浄瑠璃「国性爺合戦」は、「国姓爺」と呼ばれた鄭成功が、明の復権をめざし、
それに成功(シャレ)して、息子を帝位につけるというハッピーエンドなので、
近松はオリジナルに敬意を表し、実際の「姓」を「性」に変えて執筆しました。

事実は、南京での戦いに大敗した鄭成功軍は、立て直しのために台湾に渡り、
そこにいたオランダ人をあっという間に追い出し、ここを根城にしたのですが、
わずかそののち1年で病に倒れ、38歳の若さでこの世を去るのです。

近松門左衛門のハッピーエンドよりもこの史実の方がNHKの好みに合うかしら。

だったらいっそ、台湾人作家陳舜臣が鄭成功を描いた「旋風に告げよ」とか、
日本人白石一郎の手による「怒涛のごとく」なんていう題の小説が、
司馬遼太郎っぽいタイトルでより大河っぽくていいかもしれませんね。

台湾であちらこちらにある蒋介石由来の場所には必ず「国父」と記されています。
本当に蒋介石が台湾の国父にふさわしい人物であったかどうかは、
少なくとも大陸出身ではない本省人がそれを認めていない、ということが、
この国の一筋縄でいかないややこしい歴史を物語っています。
(もう少し後に、蒋介石の悪行を暴くログがありますのでどうぞお楽しみに)

この「中興の祖」そして「国父」、鄭成功もまた、中国人と日本人の血を持ち、
純粋な台湾人ではありません。

しかし、台湾の「中興の祖」が台湾の人間ではない、ということは、
あるいは、この小さな、しょっちゅう異民族がが流れてきては同化していった
激動の島の人間にとって、もしかしたら大した意味を持たないのかもしれません。

とはいえ島国のわれわれ日本人にとって、今も昔もそれは大きな関心事となります。
近松門左衛門がこの題材で物語を書いたのも鄭成功が半分日本人だったからで、
日本政府が統治国の遺跡を復刻保存したのも、それが大きな理由だったでしょう。

というわけで、大河のネタがすでに枯渇したとお嘆きのNHK制作のあなた。
これ、結構いいアイデアだと思うんですが、いかがですか?


え?

町興しを狙う地方がどこも恩恵を受けないからダメって?
何をおっしゃる、7歳まで鄭成功が住んでいたのは平戸ですよ。
ザビエル教会にカトリック天主堂、昆虫自然園、立派な観光地です。
ブームにする下地は十分すぎるくらいあります。

それにこの際、台湾の台南地方が町興しになるのもいいじゃないですか。
日台合作すれば話題にもなるし、台湾の人々がしてくれた地震の寄付金への恩返しにもなる。
何より、例の件の罪滅ぼしにもなりますし。


そうそう、関係ない話ですが今後NHK関係のログは保存することにしましたからね!

(にっこり)