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台湾を行く~台湾人と美容整形

2013-02-06 | お出かけ

欲望、などというと大層ですが、街にあふれる広告や看板を見ると、
その国の人々のの消費傾向や何を欲しているか、どんなものが人心にアピールするか、
何が流行っているか、そんな欲望の方向性がわかってなかなか面白いものです。
海外旅行の楽しみとは自国と現地とのそういった相異を改めて確認することにあります。

というわけで、台湾の街中で目を惹いた広告やお店を今日はご紹介します。
冒頭写真は、大型書店にあった演劇のポスター。
これ、なんだと思います?
カンのいいあなたならお分かりだと思いますが、「ノートルダムのせむし男」。

え?せむしは差別用語だろって?
今これはなんていうタイトルなんです?「ノートルダムの鐘」?
まったく、この「言葉狩り」ですが、本当にいい加減にしてね。
昔、深夜のテレビでアイスショーの宣伝をしていたんですよ。
どうやら「白雪姫」を題材にしたスケートショーのようでしたが、
このお話に欠かせないのが7人の「小人」。立派な「放送禁止用語」です。
というわけで困った広告会社がひねり出したらしい文句が、

「白雪姫と七人のおじいさんの楽しいショー!」(;・∀・)・・・・ハ?


・・・・・・・・・・・・。

七人の老人をかいがいしく介護する白雪姫の姿が彷彿としてしまいました。
おじいさんじゃないでしょ?ドワーフ、つまり小人症の7人でしょ?
アメリカのドラマにはしょっちゅうと言っていいほどこの小人症の俳優が出てきます。
小人症の男が故人とデキていたゲイでおまけに悪い奴だった、という映画も見たことあるな。
つまり、小人症も肌の色や人種のように、普通に「特色」として扱われているのですね。

その言葉すら「いうことができない」日本ってどんな言論封殺社会なの。

それはともかく、この原題は「ノートルダムドパリ」。
つまり「パリのノートルダム」。
鐘つき男のカジモドが「せむし男」であることからそれをタイトルに採用したのは、
我が日本の翻訳者だけだったんですね。

ちなみにこのビクトルユーゴーの原作、登場人物全員が死んでしまい、
ディズニーのとは大違いの悲惨な結末です。



走る車から撮ったのでわけわかりませんが、ペットショップの看板。
ペットのお洋服半額、となっています。
このとき結構夜遅かったのですが、ペットショップが遅くまでやっている傾向は日本と一緒。



前にも少しお話しした学習塾。
補習班と言います。
学歴社会ならではで、台湾の街角にはこの補習班が角ごとにあります。



数少ないパチンコ屋の一つ。
高雄の街角で見つけました。
まるで、日本の温泉街にある古いパチンコ屋のようなたたずまいです。
日本のほど広告が外に出ていないので、それほど目障りではありません。
前にずらりと並んだバイクはこのパチンコ屋の客のもの。
いわゆる「換金システム」がここにもあるのかは知るすべもありませんでした。



車でお金を借りられる、という金貸しの宣伝。
借りたことも今後その予定もないので、この「車でお金を借りる」
というシステムの意味がいまだにエリス中尉まったく分からないのですが、
つまり車を担保にして利息を加算しない、ってことなんですね?



車を投棄するのが違反であることはおそらく台湾も同じだと思うのですが、
それでもこのような空き地には時々不法投棄された車が転がっています。
これでもかと貼られているポスターは、つまり
「廃車にするなら家に電話してね」
という産廃物処理業者の宣伝広告ですね。

誰に向かって広告を出しているかというと、つまりこの車の持ち主。
おそらくこんな捨て方をする人は、車体番号を削ってわからなくしているのでしょう。
「犯罪行為をするくらいなら、ウチに連絡すれば安く廃棄できるよ」
ということを通りがかりのドライバーに訴えているともいえます。

 ファイル:Japan Stop&Pedestrian Crossing.jpg

交通関係でもう一つ。
横断歩道ありのマークですが、左が台湾のもの、
右が日本の基本的な横断歩道のマーク。
日本で道路標識が制定し始められたのは1920年代のことですから、
この「元ネタ」が、台湾において少しずつ変化していき、左のように
なっていったのではないか、と思われます。
リボンの位置や形、大きさなどがずいぶん大胆に変わっていますね。

それではこの辺で「お店の看板」を。



刃物屋さん。
しかし、包丁やナイフだけでなく、武士刀、つまり日本刀もあると。
誰が武士刀を台湾で買うのだろう。



アウトドアグッズのお店。
「荒野を開拓する者」?
なんとなく感じが出てますね。



映画の宣伝。
このバス広告も台湾の、特に台北ではよく見かけます。
窓のところにまでプリントできるらしいのが今風です。
「驚爆危城」。
四文字熟語ではありませんが、完璧にこれで内容がわかります。
この4文字で、もう映画を観た気にすらなってしまうのは少し問題かもしれません。



春夏秋冬。
台湾にはっきりした春夏秋冬があるかどうかはともかく、これは日本食レストラン。

最近、日本各地で雪が猛烈に降り、また非常に寒い日が続きました。
ほんの数か月前の地獄のような夏の暑さを思うと、
日本の四季は実にはっきりしていると改めて感心した次第です。

この「春夏秋冬」という言葉は四季のはっきりした日本特有のものとして認識されているようです。



お弁当屋さん。
台湾の弁当は「便当」と書きます。
この「べんとう」言葉そのものが日本語由来のものです。
台湾語でこれを読むと「べんとん」になるそうですが、
駅弁を売る人は日本式に「ベント―」と叫ぶのだそうです。
一般に中華圏では冷え切った食品は受け入れられないので、
台湾のお弁当はたいてい保温された状態で売られているそうです。

日本統治時代に日本語が現地に浸透した例はほかにもいろいろあって、
「ダイジョブ」「マゼマゼ」「ユックリネ」「モッタイナイ」「ネエサン、トウサン、オバサン」
「モンダイ」「バカヤロ」「ハナ」「ソツギョー」「ヒリョウ」・・・・
原住民にのみ残る言葉もあるそうですが、この弁当は台湾ではポピュラー。

ちなみに「の」という日本語は、表記そのものが残っているので
看板などによくつかわれているというわけです。
「LIの店」などというお店を台湾ではよく見かけます。
日本語で「&」などと使う感覚でしょうか。
これはしかし台湾人は「の」と読まず「へー」と発音するそうです。



ブティックです。
猫のイラストをロゴと組み合わせたのはお店の人かな。
精品服飾はおそらく「セレクトショップ」という意味。



ちょっとかわいいと思ってしまったシロクマのキャラクター。
耳かきしてます。
なんの看板だかちゃんと写真を撮らなかったのが悔やまれます。
耳かき屋さんかな。



この「日本原宿」というのは美容院のチェーン店で、あちこちにあります。
原宿というのは世界で最先端のお洒落な街、という感覚から来た
このネーミングであると思われます。
確かに、台湾に限らず原宿を行きかう人々のファッションは、世界の
エッジなお洒落をする人々にとって注目の的。

先日乗馬クラブに行ったのですが、新しくコーチに来たスウェーデン人の女の子は、
「日本に行ったら原宿に行きたい!」
と来日前から熱望していて、最初のお休みであったその日、
御殿場から原宿まで、早朝からうきうきと出かけて行ったそうです。

世界のお洒落な女の子の憧れの場所みたいになっているようですね。



これは結婚式に備えていろいろお手入れしましょうね、というサロンの広告。

上から、
「レーザーで(指輪をする)手の甲を美しく」
「3D式の、まつ毛エクステンション(まつ毛をノリで貼って長くする。3Dはわかりません)
「瞼のお手入れ(これはわからない。トリートメント、って感じでしょうか)」
「スリムになるためのバンデージ美容法」(包帯でぐるぐる巻きにして細くなったように錯覚させる美容法)
要するに、ブライダルコースってやつですね。




こんな顔出し広告が、しかも巨大な看板となってあちらこちらにありました。
肥満を解消するためのサロンか薬かわかりませんが、
「使用前」「使用後」に目隠しなしで一般人が写真を出しています。
「あの人、駅前の肥満広告に出てなかった?」
なんてひそひそされても平気なのかな。

痩せた後はともかく、痩せる前のかっこ悪い写真まで一緒にさらされるのは、
わたしならとてもじゃないけど耐えられませんが・・・。



しかし、こんなもので驚いてはいけない。
台北の駅でこんな美容整形外科の広告を見ました。
おおおお、手術前手術後の劇的ビフォーアフターが、名前と年齢入りで。
真ん中の人が「キャンディ」さんですが、どうして中国人や韓国人は、
こういう全く顔にそぐわない自称を平気で出来るのだろう・・・。

それはともかく、これこそ恥ずかしくないのかしら。
よりによって人通りの多い駅のコンコースに・・・、と思ったら、



それでころではなく、同じ人たちのビフォーアフターが台南にも・・・。
全国チェーンなんですね。
これはビルの上の巨大看板でした。
つまり、ここで広告協力(おそらく手術代割引?)に応じた人たちは、
全国レベルで術前術後をさらされているというわけです。


台湾で美容整形というのがそれなりに行われているなあと感じるのは、
テレビに出ているキャスターや女優のお嬢さん方が、明らかに不自然な、
目と目が異様にひっついていたり、眉間から鼻が急に突出していたりといった、
人体構造上とてもありえない不自然な顔をしているのを見るときです。
「あ、この人、やってますね」
というのが一目でわかってしまうのです。

台湾の整形業界には「日式」「韓式」なる流派に分かれているようです。
日式の美容整形外科のテレビのコマーシャルで知ったのですが、
「とっても自然で一目ではめだたない」のが日式、
逆に韓式は「ドラスティックな変化を求めるあなたに」という位置づけになっているようです。

自然を売り物にする「日式」なら、ほとんどしたとわからないくらいの控えめさなので、
「お化粧変えた?」といわれるくらいらしいですが、
逆にじゃあその程度しか変わらないのならそもそも手術なんて必要なのか、という・・。


日本でも整形をする人がいないわけではありませんが、
知り合いの医者が言うところによると、日本人は「整形した」と思われるのを嫌うので、
微妙なところをちょこっといじる方法が好まれるのだそうです。

たとえばある芸能人は、ごく若いときからちょこっと目、ちょこっと皺、って感じで
歳とってからもそういうメンテナンスをしょっちゅう繰り返しているので、
「変わった」「手術した」などと言われることなく今日まで来ているのだとか。
手技としてはこの「微妙な手術」というのは非常に難しいらしく、センスも必要です。
というわけで、もちろん日本にもいい加減な医者はいっぱいいますが、
「職人」というような手先の細かい術技と芸術的センスが要求されるこの分野は、
手先の器用な人が多い日本人医師の独壇場なのだそうです。


ところでこの美容外科の広告、これどう思います?
この「手術後」の女性の顔・・・・。
改造人間臭がすごいです。
写真でこれなんだから、実物はさぞ不自然なことになってしまっているのでは・・。

肥満の広告なら「あら、隣の陳さんじゃないですか」となるけど、
美容整形の方は、キャンディさんだろうがマリリンさんだろうが、
はっきり言ってみな同じ顔になってしまっているではありませんか。
手術前のキャンディさんなら「ああ、この人知ってる」といわれても、
手術後はもうだれかわからないし、覚えてももらえないレベル。

一般的には、そして何より本人には上のキャンディさんの方が美人だと思われるのでしょう。
しかし、いくつかの「改造後」を今回台湾のテレビで見た限り、写真と違って実物は
きれいとかきれいでないという以前に「誰が見ても整形後の人」でしかなくなってたりします。

広告下の「普通の人」に生まれた女性が、上の「お人形さん」になりたいと思う。
いくら不自然だろうが、歳を取ればこの顔がどうなるかということとか、
医者の腕にすべてを任せるリスクは百も承知の上で、元の顔を捨ててでも手術を受けたい、
そんな煩悩はここ台湾でも普通に存在します。

日本人だから言うわけではないですが、どうしてもやりたかったら、
目立たない「日式」くらいでとどめておいた方が無難かもしれません。