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今ここにある水陸両用車〜平成29年富士総合火力演習

2017-09-02 | 自衛隊

戦車火力の展示が終わり、10式戦車が退場すると、変わって
富士総火演では初めて動的展示を行う装備が入場してきました。

新しく開発された装輪装甲車、16式機動戦闘車、通称MCVです。
本年度以降新編される偵察部隊、即応機動部隊に配備されます。

このタイヤの駆動を見ていただければわかるように、
機動性に優れているので迅速に展開することが可能です。
最大速度は100キロですから、高速道路にも乗ることが(多分)できます。

「下半身装甲車、上半身戦車」というイメージでしょ?
それもそのはず、装甲車の機動性に、戦車火砲と同等の攻撃力を積んだ、
まさしく島嶼防衛に投入することを念頭に置いて開発された装備だからです。

火力は74式戦車と同等口径の105ミリ施線砲(ライフル砲、
砲腔『ほうこう』に腔線を設けた砲身を有する火砲)を採用していますし、
10式戦車と同等の射撃統制装置も搭載している・・・・・ということは、

装甲車のスピード

74式戦車の火力

10式のインテリジェンス(情報共有能力)

と、いいとこ取りをした夢の装備ということになります。

車体が軽いことも大きなメリットとなります。
船舶並びに航空機(C2など)による輸送が容易になり、諸島部にも展開しやすいのです。
車体自体の小ささで敵から発見されにくく攻撃の命中率も低くなります。

いいとこ取りと先ほど書きましたが、現行の89式装甲戦闘車は路上機動性が悪く、
また74式戦車は空輸することができません。

かといって87式偵察警戒車や軽装甲機動車などの装輪装甲車では火力不足で、
目標発見後速やかに射撃することができないため、普通科部隊への火力支援が困難。

さらにアメリカの戦闘車両は、

「小型であること」

「今使っている弾薬が適合すること」

などの条件から外れるため、導入をやめて開発が決定されました。

時代は

より小さく、より速く、より強く、より賢く

を武器により一層求めるようになってきたということですね。

そして、もう一つのお披露目装備は、水陸両用車AAVです。

今年の6月ごろ、米海兵隊から陸自がAAV7を大量購入したというので、

「なぜこんな水上で遅い時代遅れの骨董品を買わにゃならんのだ!
日本技術の発展にも米海兵隊にもデメリットをもたらす!」

とある戦争平和学者(って何)が騒いでいましたが、
(ただし後半は会員制記事だったため読んでません)
これって新しく陸自に設立された水陸両用部隊の訓練と錬成のために
とりあえず旧型を購入し、新型開発を待つってことなんでしょ?

ろくに現状を知りもせずに、このような視野の狭い所見で
偉そうにデメリット云々と騒いだ戦争と平和学者(だっけ)は、
新型水陸両用車の開発を知り、恥ずかしさのあまり夜枕を抱え、
あああ〜と叫んだことでしょう。

(まだだったらぜひそうしてください)

アメリカからは教導用と研究用を供与してもらったそうですが、
次世代配備には10年はかかるだろうという話もあります。

パンフの紹介では「AAV」となっていますが、
今ここにあるのはアメリカから購入したAAV7のはず、
ただし陸自用に化粧直し済みということのようです。

水中で外を覗く一人用のドームみたいなのが全部で3つ見えますね。
ちなみに乗員は4名ですが、二個分隊の人員を乗せることができます。

この日の展示では随分と高速走行しているように見えましたが、陸上速度は72キロ。
そして問題の水上速度は時速13キロとなっています。

これは、もういっそLCACに乗っけて運んだ方がよくない?
という速さではありますが、開発中の新型は速度向上を重視しているとか。

時速13キロはウォータージェット2基で水上走行を行うときの速さで、
万が一ウォータージェットがやられたら、その時はとりあえず
水中でキャタピラをぐるぐる回せば、ちょっとは前に進むんだそうです。

相手からは逃げられそうにはありませんが。

それからこの映像を見て思ったんですが、日本の海岸部ってテトラポットだらけで
んな風に上陸できる場所って海水浴場しかないんじゃあ・・・。

今まで日本が保持したことがない水陸両用車なので、0から開発するのではなく、
既存の技術をたたき台にするということはわかりましたが、
日本の技術陣は小型化軽量化魔改造が得意なので、新型水陸両用車は
あっと驚くような切り口の装備になっていることを期待してます。

さて、続いては空挺団の降下が行われました。
雨が降ると中止になりますが、今回は木曜、日曜ともに決行されました。
まず会場右端で、目印となる白いスモークが焚かれます。

降下する隊員は、これを見て風の強さや向きを判断するのです。

高度1200mの高さを飛行しているチヌークから飛び出した空挺隊員は
およそ12秒間の間自由降下を行い、それからパラシュートを開きます。
パラシュートを開く高度は約900m上空です。

自由降下の間の落下速度は時速200キロ、新幹線と同じ速さで、
5名の空挺隊員たちは凄まじい風圧にその間晒されることになります。

自由降下は資格を持った隊員だけが行うことのできる技術です。

会場の奥では、飛び出し後4秒でパラシュートが開く自動索降下が行われ、
6名の空挺隊員がチヌークから飛び出しました。

観客席から遠いのと、自由降下の隊員ばかりが目立ち、
こちらの降下はいつもあまり注目されないのが気の毒です。

自由降下のパラシュートは、スパイラルを描きながら降りてきますが、
これは速度を調整(高度を急激に落とす、つまり早く降りる)ための技術です。

自動索降下の着地は、このような調整ができないので地面に転がるのが普通ですが、
自由落下の空挺隊員たちは軽々と地面に二本足で降り立ちます。

その度に観客からは拍手が送られますが、今まで転んだ人を見たことがありません。
万が一皆の前で転ぶようなことがあれば末代までの恥、と考えていそうです。

スモークにつつまれるように降り立った人。
同じところに降りないように示し合わせているのかもしれません。
ここに降りると退場口が近いので楽です。

両足綺麗に揃える派。

尻餅をつきそうですが、この後二本足で立ちました。
空挺隊員の仕事は降りることではなく、その先の活動などにあります。

メナドでもパレンバンでもそうでしたね。

あの頃は武器と一緒に降下して突撃、というのが空挺隊員の仕事でしたが、
現代では主に情報活動や遠距離火力の誘導による戦闘支援が主任務です。

地面に降り立った空挺隊員は次の瞬間索を引いて・・・

傘の中の空気を抜き、持って運べる大きさにたたみます。

この日の自由降下に選ばれる5名というのは第一空挺団の中でも
レジェンド級の精鋭隊員なんだろうなと思ったり。

顔の写っている人はとりあえずアップしてみましたが、
皆もう凄みがあるのを通り越して、ただものじゃない感じ。
(個人的感想です)

本番の時、隣の人が

「今日は観覧席前で挨拶するかもしれませんね」

というので期待していたのですが、何もせずに走って退場していきました。

ここで前段演習は終了です。
フィールドで整備が行われますが、何しろ20分しかないので、
わたしの周りは誰も動きません。

どうしてもトイレに行きたい人とか、前段演習だけで帰る人が移動していました。

わたしはこの日初めての食事をしましたが、買ってきたお弁当は
おかずが唐揚げ、肉団子、形成したエビのフライ、申し訳程度の青菜、
やたら辛い味付けのきんぴらというもので、値段は1,000円。

「これ千円って高すぎませんかね」

「ここでは仕方ないっすよ」

ぼやきながらこの時間を利用して腹ごしらえをしました。

そして、後段演習が始まりました。
オーロラビジョンには「状況開始」のお知らせが。

「ドッドドドッド ミッミミミッミ ドッドドソッソソ ドミドソド〜」(移動ド)

とラッパも鳴り響きます。

ところで後段演習は、統合運用における各種作戦の様子を展示するものです。
統合運用の「統合」とは、陸海空自衛隊のことで、特的の目的、つまり
日本に仇なす敵を(笑)やっつけるための作戦が「運用」となります。

で、この演習のシナリオとしては、ここ旗岡地区を「島」と仮定して、まず
海上から侵攻してくる敵部隊を統合部隊が撃破するところから始まるので、
本来ならば海上自衛隊の哨戒機であるP-3CやP-1が飛んでくるはずなのですが、
今回はP3C、演習に全く姿を見せませんでした。

何年か前飛んできたことがあったのですが、雲が厚かったので全く姿が見えず、
せっかく遠くからわざわざP3Cを飛ばしても、
ここ富士山近隣の変わりやすい天気では無駄になる確率が高いということになり、
ご時勢もあって(北朝鮮とかね)中止になったのだと思われます。

というわけで状況はいきなり中距離多目的誘導弾が、畑岡沖から
上陸しようとする敵舟艇を迎撃するところから始まることになりました。

装備紹介では3発連続でしたが、今回は相手が船なので1発です。

「目的管理番号、マルマルヒト、1発、撃てっ!」

で飛んでいくミサイルは・・・・・、

舟艇型のちょうど艦橋のど真ん中に大きな穴をあけました。
おそらくこの1発で艦橋にいた人たちは全員二階級特進したはずです。

しかし、敵もさるもの、こちらの攻撃をかいくぐり内陸部に進入してきたのです。
ってかチュウタの1発だけで防げるほど敵は甘くないってことですわ。

こののち、上陸してきた敵部隊を迎え撃つ我が自衛隊統合部隊でした。

続く。