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軽巡洋艦 USS「リトル・ロック」に乗艦〜バッファローエリー郡海事軍事公園

2024-08-08 | 軍艦

バッファロー海事軍事公園がCOVID-19の閉鎖から復活し、
内部公開を始めたので満を持して見学してきたシリーズです。

まだ中が公開されていなかった「ザ・サリヴァンズ」の甲板を通り、
そこから隣に係留されているUSS「リトル・ロック」にいよいよ乗艦します。


「リトル・ロック」へのラッタルは、「ザ・サリヴァンズ」甲板から
まるまる2階分くらいの高低差を隔ててかけられています。

リトルロック=小岩。

この「クリーブランド」級軽巡の艦名は、
命名基準である、都市名からもたらされたものです。

小岩が東京にあることは知っている人も多いと思いますが、
リトルロックがアーカンソーの都市であると知っている人は
偏見ですが日本人にはあまりいない気がします。

「リトルロックはアーカンソーの小岩」

とか誰うまなことを以前書いた記憶がありますが、都市の立ち位置はともかく
小岩とリトルロックの大きな違いは、治安かもしれません。

リトルロックは現在「全米の危険な都市トップ25」に名前を連ねており、
南部であることから、残念ながらヘイト事件も起こりがちな土地柄。

1957年には有名なヘイト騒動「リトルロック高校事件」が起こり、
それでアメリカ人の間では都市名が認知されています。


リトルロック高校の九人の初代黒人学生のうち一人
後ろの女生徒はその後の人生かなりハードモードだった模様

まあ、それは歴史の一面にすぎませんし、治安問題はともかく、
南部の自然豊かな地域の一都市であると認識すればいいかと思います。

USS「クリーブランド」

ネームシップの「クリーブランド」CL-55は就役1942年。
2番艦以降のUSS「コロンビア」「モントリピア」などと共に、
ガダルカナル、ブーゲンビルの攻略のために投入されました。

「リトル・ロック」は「クリーブランド」級の30番艦(全40隻)でした。


進水こそ1943年でしたが、1945年6月に就役して

慣熟訓練中に終戦になってしまったので、申し訳程度に訓練した後、
1949年には早々と予備役艦隊入りして出番を待っていました。

彼女がミサイル巡洋艦という新しい役目を得て復帰したのは
1957年5月23日のことです。

奇しくもこの5月23日は、リトルロック高校事件の遠因となる
「分離教育撤廃」が宣言された日でもあります。
(これを受けて九人の黒人学生が選ばれ、9月入学の後ヘイト騒動になった)


際就役後、艦番号は、それまでのCL-92から
Guided Missile Light Cruiserを意味するCLG-4に変わりました。


互いの甲板同士を繋ぐ吊り下げ型のラッタル。
この高低差が駆逐艦と軽巡洋艦の艦体の違いを表します。


「ザ・サリヴァンズ」と「リトル・ロック」の間には、
おそらく浮き桟橋ではない構造物がガッツリとかまされております。

「ザ・サリヴァンズ」が着底した事故でもわかるように、
当海事軍事公園では、船は浮いた状態で展示されていますので、
杭には両艦からの舫がかけられています。

「リトル・ロック」と桟橋の間には、接触してもいいように
硬化ゴムのようなクッションが咬ませてあるのがわかります。

事故の時の写真と見比べると、構造物の左側の手すり、
このクッションは「ザ・サリヴァンズ」修復工事の後付け足されたようです。

(アップしてみるとステージ様の部分は素材が新しい)


着底事故の時「ザ・サリヴァンズ」は岸壁に向かって倒れたため、
間の構造物と「リトル・ロック」は無傷ですみました。

余談ですが、この事故の後、公園側は船を救うための寄付を募り、
多くの市民や地元企業が名乗りを上げ、
チャリティイベントなどが行われて資金が調達されたそうです。


後少しで甲板に到達、というところで
いやでも目に入ってくるブルーのミサイル。
そう、これが「リトル・ロック」に後から搭載された重要な装備です。


前回来た時に撮った写真。
こういうのは岸壁からの方が全体像がよくわかります。

ミサイル巡洋艦に換装されて以降、「リトルロック」は、
「ガルベストン」級の2番艦となりました。
同級は

CLG-3「ガルベストン」USS Galveston
CLG-4「リトルロック」USS Little Rock
CLG-5「オクラホマシティ」USS Oklahoma City

の3隻で、いずれも「クリーブランド」級からの改装です。
ガルベストンはテキサス州の都市です。



ここでもう一度「ザ・サリヴァンズ」甲板から
「リトル・ロック」の艦体を見上げてみます。

外付けされているミサイルシステムを確認していきましょう。


「リトルロック」ら「ガルベストン」級に搭載されたのは、

Bendix RIM-8 Talos
ベンディックス タロス長距離艦対空ミサイル

で、これは以前にも散々?紹介しております。

過去ログ:ガルベストン級ミサイル巡洋艦「リトル・ロック」


そしてこの部分、前回は名称が分からずそのまま放置したのですが、
今回はちゃんと調べがつきましたのでご報告。

AN/SPG-49 Target Tracking Radar
ターゲットトラッキングレーダー

つまり誘導レーダーであることが判明しました。



上面 正面 左側面 右側面

上から順に、

外部モーターによる取り付け、デッキ取り付け
ポールマウント、外部モーター付き
外部モーターなし、デッキ取り付け
外部モーターなし、ポール設置


の設置状態です。
画像が小さいので4種類と言っても何が違うのと思われるかもしれませんが、
要は取り付ける場所とかマウントの違いで、本体は同じものです。

写真の2基のSPG-49ミサイル追跡レーダー・アンテナは、
海抜約77フィートと92フィートの後上部構造に取り付けられています。


トラッキングレーダーの左にあるのは、

AN/SPW-2

ミサイル誘導送信トランスミッター(アンテナ)です。
一つは前方に、もう一つがここ後方に設置されています。

これ自体がぐーるぐーると回転するもので、
さらにアンテナディッシュの中心についているコーンそのものは
1分間に30回転してビームを生成していました。

ここからは見えませんが、後部にはアンテナの位置合わせをするための
小型の光学望遠鏡が設置されていて、ディッシュの穴から覗きます。



星形の穴、この後ろに望遠鏡があり、覗きながら位置合わせを行います。



トラッキングレーダーに描かれた「ミサイルにまたがるドワーフ」。
これはミサイルセクションだけのマークで、
「リトルロック」の部隊章とは全く違うものです。



もう一つのレーダー(下側)のマークはミサイルそのまんま。



手前に写っていてお皿が向こうを向いているアンテナは

AN/SPS-30

3-D航空機捜索レーダーです。

このシステムで目標の範囲、方位、高さの情報を検知します。



前回の写真をアンテナ部分だけ切り取ったもの。

楕円形のパラボラ反射鏡の横に長いアーム状のものが見えますが、
先端にあるのが「オルガンパイプ」スキャナアセンブリで、
これを上昇させることで幅広い角度でターゲットを追尾することができます。


AN/SPS-10A

ついでと言ってはなんですが、水上捜索レーダーです。
このメッシュ?の部分を、英語では「スパイダー」というようです。


スパイダーウェブじゃないんだ・・。



レーダーやアンテナの下方、ミサイル飛翔体の後ろには、
8の字のような形のハッチがあります。


これはブラストドア。

ミサイルが内部システムで旅をして、最後に
甲板のランチャーに装填されるわけですが、
この「ブラストドアセクション」がその時開くというわけです。

今回興奮ものだったのは、その内部システムを実際に
中に入って見ることができるという体験でした。

さあ、それでは次回、いよいよその部分に突入します。


続く。






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2 Comments

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タロスミサイル (Unknown)
2024-08-09 07:53:18
タロスミサイルは、模擬弾が発射機に装てんされた状態で展示されてある通り、巨大で、最も初期のミサイルだけに力任せなところがあります。

艦(地)対空ミサイルやロケットは大抵、ロケットモーターの燃焼に空気を必要とせず、空気取り入れ口がありませんが、このタロスはミサイルの先端に空気取り入れ口があるラムジェット推進を第二段に使っています。

ジェットエンジンは、取り込んだ空気をコンプレッサで圧縮して、燃焼室で点火することにより推力を得ますが、ラムジェットは自らの速力で圧縮された空気を燃焼室で点火して推力を得ます。圧縮機がなく、燃焼室だけで、構造が簡単ですが、自らの速力で圧縮された空気で推力を得られる速力(マッハ3)まで加速するブースターが必要になり、そのため、タロスは二段式になっています。

通常のロケットモーターは、空気を取り込まず燃焼するため、燃料の中に酸化剤と呼ばれる酸素が含まれていますが、ラムジェットは酸化剤が不要で、その分、燃料を積めるので、射程が伸ばせます。同時期に開発されたテリア(通常のロケットモーター)と比べると、ミサイル自体の大きさも違いますが、タロスはテリアの5~10倍の射程があります。

ただ、遠くに飛べば飛ぶ程、誘導は難しくなるので、タロスには通常弾頭弾と核弾頭弾がありました。誘導精度が低くなる分、核弾頭の大きな威力で敵のミサイルや航空機を墜とすコンセプトです。力任せなミサイルで、出番があまりなく、早く退役しました。

同時期に開発されたテリアはその後SM-2に、ターターはSM-1に発展して、SM-2に至っては今でも使われています。
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クリーブランド級軽巡 (お節介船屋)
2024-08-09 11:13:01
>「リトル・ロック」は「クリーブランド」級の30番艦(全40隻)でした。
些細なことを訂正してすみませんが参照本によれば
1940年度計画で34隻、41年度2隻、42年度5隻合計41隻の建造が計画され、9隻が空母、3隻が建造中止、2隻が設計を改めた改クリーブランド級のファーゴ級として完成したため結局27隻となりました。
この内、ミサイル巡洋艦に改装されたのは
「ガルヴェストン」(CL‐93で建造中断していたのを1956年2月CLG-93で再開、1958年5月CLG-3で竣工)、「リトリ・ロック」(1945年6月CL-92竣工、1949年6月退役、1960年6月CLG-4として再就役)、「オクラホマ・シティ」(1944年12月CL-91竣工、1947年6月退役、1960年8月CLG-5として再就役)、「プロヴィデンス」(1945年5月CL-82竣工、1949年6月退役、1959年9月CLG-6として再就役)、「スプリングフィールド」(1944年9月CL-66竣工、1950年1月退役、1960年7月CLG-7として再就役)、「トペカ」(1944年12月CL-67竣工、1949年6月退役、1960年3月CLG-8として再就役)で6隻です。
なお「ガルヴェストン」と「トペカ」はマストは大型となり、後部が改装されタロスミサイル搭載MK-7発射機ですが、「プロヴィデンス」「リトリ・ロック」「オクラホマ・シティ」「スプリングフィールド」の4隻は艦橋前の152㎜3連装2番砲も撤去、艦橋構造物も前方に拡大され、発射機もMK-9となっていました。
参照海人社「世界の艦船」No464
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