ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

アフターエンジンルーム〜潜水艦「レクィン」

2024-03-24 | 軍艦

前回、潜水艦「レクィン」がレーダーピケット潜水艦として、
戦闘艦たる任務に就いた、というところまでお話しし、
その後は艦内ツァーでフォワードエンジンルームまでをご紹介しました。


これはサンフランシスコの「パンパニート」の解説ですが、
エンジンの#1と#2、#3と#4の配置、
それが動力にどうつながっているか可視化できるので載せておきます。

今日は、#3と#4のあるアフターエンジンルームからです。

■ アフターエンジンルーム


フォワードとアフターエンジンルームの間には扉があります。
ところで、この扉の横に見えるもの、これはなんでしょうか。


後部エンジンルームにも同じものがあり、そこには
Lube Oil とペイントされていました。
おそらく、エンジンのための潤滑油を供給する機器だと思われます。

各メインエンジンには、潤滑用の圧油システムが装備されていて、
タンクから潤滑油圧送ポンプが逆止弁を通してオイルを吸い上げ、
オイル・ストレーナーとクーラーを通してオイルを圧送します。
その後潤滑油はエンジンに入ります

エンジン入口の接続部から流れたオイルは、
主軸受、ピストン軸受、コネクティングロッド軸受、
カムシャフトドライブギヤと軸受、バルブアセンブリに分配されます。

分岐によって分けられたオイルは、ブロアギア、
ベアリング、ローターに供給されます。


後部エンジンルームに移ったところ、前を歩いていた人が
ちょうどコンパートメントを出ていくところでした。

やばいどんどん離されている。

通路の両側にはエンジン#3と#4があり、こちらから見て
左が#3、右が#4となります。
今見ているエンジンは、通路の下の階に設置された本体の上部分です。

   ちなみに左舷の2基のエンジンは左回転用、右舷の2基は右回転用です。


こちらは右側の#4エンジン。
体を支えるためのバーが設置されています。
ベンチはおそらく物入れも兼ねているのでしょう。



#3エンジンの上にはここにも洗濯物が干してあります。
気温が高くなるのであっという間に乾いてしまいそうですね。



#4エンジンは一部カバーが切り取られ、中身を見ることができます。

各エンジン用の燃料は、燃料オイルポンプによってタンクから汲み上げられ、
フィルターを通して強制的にインジェクターに送られます。

エンジンは真水冷却システムで冷却されます。
エンジンルームに淡水化装置があるのもこれが理由です。
淡水は、遠心式の淡水ポンプによって循環させるしくみであり、
エンジンのブロワー・エンドに取り付けられています。



第2エンジンルームはここまでです。
コンパートメント扉の下には板が貼ってありますが、
これは配線を傷つけないように現役時代からあったものと思われます。


■ 「ミグレーンII」改装後の「レクィン」

さて、戦後初めてのレーダーピケット潜水艦として
無理くり改装を施された「レクィン」ですが、何しろ初めてのことで
いろいろ不具合が生じたため、アメリカ海軍は
「ミグレーン」(頭痛)プログラムで改良を試みました。

そしてミグレーンII型に改装された「レクィン」は、
レーダーピケットとして11年間運用され、その際、改装後に設置された
艦内の航空管制センター(air control center)は、
大型艦のCIC(戦闘情報センター)と同様に運営されました。

レーダーピケット艦として就役中のほとんどの期間、
「レクィン」は大西洋沿岸で活動していました。

北極で氷に対するレーダーの反応をテストすることがあれば、
まったく逆に地中海への巡航も多かったといいます。

よくあるオペレーションの展開時、
「レクィン」は管制センターに4人の有資格監視員が配置されます。

Aircraft controller(航空管制係)
Height finder operator(高度計オペレーター)
Plotter to plot all contacts reported(プロッター)
Phone-talker to the bridge(艦橋との電話連絡係)

「ハイト ファインダー」というのは直訳すると高度計で、
地上に設置された航空機の高度を測定する装置です。

第二次世界大戦の頃、ハイトファインダーは航空機の高度(実際には、
コンピュータで視角と組み合わされて高度を生成する配置からの傾斜距離)
を決定するために使用された光学測距儀であり、
高射砲を指示するために使用されていました。

ハイトファインダー・レーダーは、目標の高度を測定するレーダーです。
現代の3Dレーダー・セットは方位角と仰角の両方が探知できます。

プロッターは、報告された全てのコンタクトをプロットする任務です。

レーダーピケット艦としての「レクィン」は、
もう一隻のレーダー・ピケット潜水艦と組んで、
「脅威軸に沿って」“along the threat axis “
行動するのがその任務でした。

2隻の潜水艦が組むのは、メインのピケットが潜航しなければならない場合に
もう一隻の潜水艦がカバーできるようにという意図があります。


■ 忌避されがちだった「レクィン」

同じアメリカ海軍の潜水艦なのに、「レクィン」は他の潜水艦より
味方から信頼されないというか、不信感を持たれていたとい噂があります。

もしかしたら、大西洋で氷の下に行ったり地中海に行ったりする任務で
他の潜水艦よりも海上で過ごす時間が長く、
その分存在が非常に不透明に思われたからかもしれません。

地中海でのあるピケット・ミッションでは、
戦闘航空哨戒機(CAP)の司令官が当初、
「レクィン」のコントロールを拒否したというショックな話もあります。

いくら隠密行動が身上の潜水艦でも、同じ海軍の艦にそれはないだろう、
という気がしますが、もちろんこれは最終的な拒否ではありませんでした。

最終的にCAP司令官は「レクィン」参加を受け入れていますので、

「えー『レクィン』?何それ?怪しいからあまり一緒にやりたくねー」

程度の拒否に尾鰭がついた可能性もあります。
いずれにせよ、ミッションは滞りなく続行されたみたいですし。



その後も「レクィン」は、レーダーピケット艦として、
貴重なレーダー・ピケットのサービスを提供し続けました。

海軍はその後、水上および水中ベースのピケットそのものを
段階的に廃止しはじめたのですが、それらの動きの中、
最後のレーダーピケット潜水艦として彼女は粛々と任務を継続し続けました。

最終的にミグレーン・プログラムが終了し、
レーダー・ピケット潜水艦が正式に廃止にかかったのは1959年のことです。

続く。