皆さま、明けましておめでとうございます。
本年度も淡々と、主に海軍関係のことや見たものについて発信していきます。
よろしければどうかお付き合いください。
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さて、年末に戦時中に制作された日米の国策映画を取り上げましたが、
そこで年が明けてしまったので、掲載順ではなく、
そこで年が明けてしまったので、掲載順ではなく、
なんとなく絵面が正月向きの「聯合艦隊司令長官 山本五十六」
のタイトルイラストで新年をスタートしたいと思います。
のタイトルイラストで新年をスタートしたいと思います。
■ 聯合艦隊司令長官 山本五十六
本作品は、元ページでも説明したように、
東宝映画が毎年終戦記念日と同時に公開する「8/15シリーズ」の一つです。
確かに、夏になると必ず戦争大作がリリースされていた時期がありましたが、
それでは東宝の8/15シリーズとは結局なんだったのかというと、
「日本のいちばん長い日」(1967) 監督:岡本喜八
「連合艦隊指令長官 山本五十六」(1968) 監督:丸山誠治
「日本海大海戦」(日露戦争)(1969) 監督:丸山誠治
「激動の昭和史 軍閥」(1970) 監督:堀川弘通
「激動の昭和史 沖縄決戦」(1971) 監督:岡本喜八
「海軍特別年少兵」(1972) 監督:今井正
「聯合艦隊」(1981) 監督:松林宗恵
「零戦燃ゆ」(1984)監督:舛田利雄
毎年季節の風物詩的に夏にリリースされた作品は6作。
戦後懐古的に語られることの多かった戦争映画も、ある時期から
極端に左傾化していった朝日新聞を筆頭とする言論に叩かれるようになって、
反戦・自虐の思想に配慮するようになるのですが、このシリーズも
「激動の昭和史 軍閥」辺りでその傾向が見えてきて、
(内容は竹槍事件いう言論事件が中心)「沖縄決戦」は言わずもがな、
「海軍特別年少兵」で子供を戦争に駆り出した軍と政府への非難、と、
とにかく日本が悪うございました的な反戦反日一色になっていきます。
こういった反戦思想が悪いというのではありませんが、
誰にとってもこの手の映画は単純にエンタメとして「面白くない」し、
「海軍特別年少兵」で子供を戦争に駆り出した軍と政府への非難、と、
とにかく日本が悪うございました的な反戦反日一色になっていきます。
こういった反戦思想が悪いというのではありませんが、
誰にとってもこの手の映画は単純にエンタメとして「面白くない」し、
映像作品としての完成度も高いとは言えないものがほとんど。
事実、この3作品は、少なくとも「山本五十六」ほどヒットはしていません。
これで懲りたのか、東宝の戦争映画シリーズは一旦途切れたのですが、
1981年、戦争映画の原点に立ち返った作品「聯合艦隊」で息を吹き返します。
これで懲りたのか、東宝の戦争映画シリーズは一旦途切れたのですが、
1981年、戦争映画の原点に立ち返った作品「聯合艦隊」で息を吹き返します。
「聯合艦隊」の制作が決定した直後、製作補の高井英幸は、
資料を探しに立ち寄った本屋で偶然遭遇した当時の東宝社長松岡功に、
「過去の戦争映画で、真珠湾攻撃やミッドウェー海戦、
山本五十六の戦死などドラマチックなエピソードはすべて描かれてしまった。
だからといって、今回、それ以外の秘話や
裏面史を探し出そうなどと考えないように。
秘話は一部の観客しか興味を持たない。
裏面史を探し出そうなどと考えないように。
秘話は一部の観客しか興味を持たない。
既に描かれてきたエピソードが最もドラマチックなんです。
だからこそ映画の素材として早く取り上げられたんです。
それ以上のもの探してもないんです。
今回も、これまで描かれたエピソードを照れずに使って下さい」
だからこそ映画の素材として早く取り上げられたんです。
それ以上のもの探してもないんです。
今回も、これまで描かれたエピソードを照れずに使って下さい」
と言われ、真珠湾攻撃から沖縄特攻までを盛り込んだ作品、
「聯合艦隊」を作り上げ、ヒットにつなげました。
「聯合艦隊」を作り上げ、ヒットにつなげました。
ちなみに松岡社長はあの松岡修造のパパです。
実在人物を扱う映画として、多少なりとも雰囲気が似ていると、
観ていて非常に納得感があるものですが、
1日目の「真珠湾」で一番似ているのは草鹿龍之介の安部徹だと思います。
本文でも縷々述べたように、三船敏郎の山本五十六は、特別枠で、
「造形は似全く似ていないがこの俳優しか考えられない」で賞に決定。
「造形は似全く似ていないがこの俳優しか考えられない」で賞に決定。
「ミッドウェー」
本作は、山本五十六が起案した真珠湾攻撃から、
「海軍甲事件」によって戦死を遂げるまでが描かれますから、
真珠湾の次のステージはミッドウェー海戦となります。
この頃の戦争映画によく顔を出していた加山雄三が出演しています。
ついでに、東宝は8/15シリーズに遡り、
太平洋の鷲・日本聯合艦隊は斯く戦えり(1953)監督・本田猪四郎
ハワイ・ミッドウェイ大海空戦・太平洋の嵐(1960)監督:松林宗恵
太平洋の翼(1963)監督:松林宗恵
「海軍甲事件」によって戦死を遂げるまでが描かれますから、
真珠湾の次のステージはミッドウェー海戦となります。
この頃の戦争映画によく顔を出していた加山雄三が出演しています。
ついでに、東宝は8/15シリーズに遡り、
太平洋の鷲・日本聯合艦隊は斯く戦えり(1953)監督・本田猪四郎
ハワイ・ミッドウェイ大海空戦・太平洋の嵐(1960)監督:松林宗恵
太平洋の翼(1963)監督:松林宗恵
これら「太平洋シリーズ三部作」を制作しています。
このシリーズは、戦後空幕長になった源田實の「海軍航空隊始末記」を元に、
戦闘機部隊の戦いを描く戦争映画シリーズで、これらは間違いなく
当時子供アニメまで波及した「零戦ブーム」を受けています。
加山雄三はこの中の「太平洋の翼」で戦争ものに初出演し、その後、
「青島要塞爆撃命令」「戦場にながれる歌」、そして、
8/15シリーズには「海軍特別年少兵」を除いて前作出演を果たしました。
戦闘機部隊の戦いを描く戦争映画シリーズで、これらは間違いなく
当時子供アニメまで波及した「零戦ブーム」を受けています。
加山雄三はこの中の「太平洋の翼」で戦争ものに初出演し、その後、
「青島要塞爆撃命令」「戦場にながれる歌」、そして、
8/15シリーズには「海軍特別年少兵」を除いて前作出演を果たしました。
本作で加山雄三は、真珠湾攻撃で「赤城」攻撃隊長だった
「爆撃の神様」こと村田重治大佐、そしてミッドウェー海戦における
「飛龍」攻撃隊で「ヨークタウン」の艦橋に激突自爆した、
友永丈一少佐二人をモデルに創作された伊集院大尉を演じています。
「爆撃の神様」こと村田重治大佐、そしてミッドウェー海戦における
「飛龍」攻撃隊で「ヨークタウン」の艦橋に激突自爆した、
友永丈一少佐二人をモデルに創作された伊集院大尉を演じています。
「ガダルカナル」
舞台がガダルカナルに転じると、画面が急にカーキっぽくなり、
設定上陸軍軍人多めになってきます。
特にこの日の扉絵で描いた人々は瓜二つの生き写しとしか言いようのない
佐々木孝丸演じる今村均を除いては、誰も全く似ていませんが、
畑俊六陸軍大臣を演じた今福正雄と、
大本営報道部長だった平出英夫と加東大介
舞台がガダルカナルに転じると、画面が急にカーキっぽくなり、
設定上陸軍軍人多めになってきます。
特にこの日の扉絵で描いた人々は瓜二つの生き写しとしか言いようのない
佐々木孝丸演じる今村均を除いては、誰も全く似ていませんが、
畑俊六陸軍大臣を演じた今福正雄と、
大本営報道部長だった平出英夫と加東大介
この二組は思わず膝を叩いてしまうほど似ていました。
但しわたくし、畑陸軍大臣が出ていた場面は全く思い出せません。
ガダルカナルでは、輸送をめぐる陸海軍の相剋や、
壮烈なネズミ輸送の現場、そして海軍が引き受けた
ヘンダーソン基地艦砲射撃などが描かれます。
但しわたくし、畑陸軍大臣が出ていた場面は全く思い出せません。
ガダルカナルでは、輸送をめぐる陸海軍の相剋や、
壮烈なネズミ輸送の現場、そして海軍が引き受けた
ヘンダーソン基地艦砲射撃などが描かれます。
「ブーゲンビル」
この映画を掲載するにあたって、最終回を「ブーゲンビル」としたのは
そこが山本五十六の終焉の地であったからですが、この最終回では、
聯合艦隊の残照というべき勝利となった南太平洋海戦が、詰まるところ
ガダルカナル陸軍の支援に帰結しなかった、という皮肉な史実が語られます。
この映画を掲載するにあたって、最終回を「ブーゲンビル」としたのは
そこが山本五十六の終焉の地であったからですが、この最終回では、
聯合艦隊の残照というべき勝利となった南太平洋海戦が、詰まるところ
ガダルカナル陸軍の支援に帰結しなかった、という皮肉な史実が語られます。
そして全ての山本五十六を描いた映画のシーンと同じく、
本作も、輸送機の座席に軍刀を脚の間に保ったまま、
泰然として彼岸に向かう聯合艦隊司令長官の最後の姿が描かれます。
■ Uボート基地爆破作戦
THE DAY WILL DAWN
本作も、輸送機の座席に軍刀を脚の間に保ったまま、
泰然として彼岸に向かう聯合艦隊司令長官の最後の姿が描かれます。
■ Uボート基地爆破作戦
THE DAY WILL DAWN
1942年、イギリス映画をご紹介しました。
邦題「Uボート基地爆破作戦」
本題「夜明けの日」、
アメリカ公開時タイトル「ジ・アヴェンジャーズ」
何も知らない人は、この三つのタイトルが
同じ映画のものであるとはまず思わないでしょう。
もちろん、どれが一番本作にふさわしいかというと、本題である
「The Day Will Dawn」
アメリカ公開時タイトル「ジ・アヴェンジャーズ」
何も知らない人は、この三つのタイトルが
同じ映画のものであるとはまず思わないでしょう。
もちろん、どれが一番本作にふさわしいかというと、本題である
「The Day Will Dawn」
です。
日米のそれは、タイトルだけでなんとか客を呼ぼうという、
商業的な媚びが透けて見え、本質からは離れています。
商業的な媚びが透けて見え、本質からは離れています。
このタイトルは、映画の最後で字幕により紹介されるチャーチルの演説、
”今、ナチスのくびきの下にひれ伏している12の有名な古代国家では、
あらゆる階級と信条の人民大衆が解放の時を待っている。
その時は必ず訪れ、その荘厳な鐘の音は、
”今、ナチスのくびきの下にひれ伏している12の有名な古代国家では、
あらゆる階級と信条の人民大衆が解放の時を待っている。
その時は必ず訪れ、その荘厳な鐘の音は、
夜が過ぎ、夜明けが来たことを告げるだろう。
(The night is past and that the dawn has come.)”
から取られていることから、その評価は妥当と考えます。
(The night is past and that the dawn has come.)”
から取られていることから、その評価は妥当と考えます。
当作品の舞台設定はノルウェー侵攻作戦を経て、
連合国のフランス侵攻に対し、ドイツ軍が統治に至ったノルウェーという、
映画作品としては大変レアな設定です。
イギリスからノルウェーのドイツ侵攻について取材するため、
誰でもいいや的に派遣された競馬記事専門のメトカーフという記者が、
連合国のフランス侵攻に対し、ドイツ軍が統治に至ったノルウェーという、
映画作品としては大変レアな設定です。
イギリスからノルウェーのドイツ侵攻について取材するため、
誰でもいいや的に派遣された競馬記事専門のメトカーフという記者が、
ノルウェーで漁船で操業する父と娘に出会い、娘と愛し合ううち、
いつの間にか英国とナチスとの戦いに巻き込まれていきます。
何よりわたしが驚いたのが、残存しているフィルムからは、
いつの間にか英国とナチスとの戦いに巻き込まれていきます。
何よりわたしが驚いたのが、残存しているフィルムからは、
彼がなぜかドイツ軍艦に拉致され、解放され、フランスに行って
シェルブールで英国の撤退作戦に参加する、
という一連のシーンがごっそり欠落していたということです。
なぜこんな重要なシーンがカットされていたのか全く理由がわかりませんが、
映画解説サイトではちゃんとこの部分にも言及しているので、
DVD化するときにフィルムが物理的に欠損していたのかもしれません。
シェルブールで英国の撤退作戦に参加する、
という一連のシーンがごっそり欠落していたということです。
なぜこんな重要なシーンがカットされていたのか全く理由がわかりませんが、
映画解説サイトではちゃんとこの部分にも言及しているので、
DVD化するときにフィルムが物理的に欠損していたのかもしれません。
見どころがあるとすれば、それは第二次世界大戦下のノルウェーという
特にハリウッドではまず取り上げられないシチュエーションであることと、
イギリスの名女優、デボラ・カーの美貌が拝めることくらいでしょうか。
メトカーフはドイツ軍艦に拉致された後、なぜかイギリス海軍諜報部に、
ノルウェーのUボート基地を探し出す作戦の民間人スパイとして
(全く本人の同意なしで)パラシュートで現地に放り込まれます。
彼の働きでイギリス軍はドイツ潜水艦基地を爆破するのに成功しますが、
その後、彼を待っていたのは、容赦ないドイツ軍の報復処刑でした。
作戦に協力したデボラ・カー演じるノルウェー娘や村人と共に、
彼が銃殺刑に処せられようとした寸前で、間一髪イギリス海軍がやってきます。
特にハリウッドではまず取り上げられないシチュエーションであることと、
イギリスの名女優、デボラ・カーの美貌が拝めることくらいでしょうか。
メトカーフはドイツ軍艦に拉致された後、なぜかイギリス海軍諜報部に、
ノルウェーのUボート基地を探し出す作戦の民間人スパイとして
(全く本人の同意なしで)パラシュートで現地に放り込まれます。
彼の働きでイギリス軍はドイツ潜水艦基地を爆破するのに成功しますが、
その後、彼を待っていたのは、容赦ないドイツ軍の報復処刑でした。
作戦に協力したデボラ・カー演じるノルウェー娘や村人と共に、
彼が銃殺刑に処せられようとした寸前で、間一髪イギリス海軍がやってきます。
当作品は戦時中に制作されたイギリスのプロパガンダ映画ですので、
そもそも中立であるべきノルウェーを狙っていたのはドイツだけでなく、
英側だって戦略上侵攻しようとしていた(仏にかまけている間取られた)
という視点はごっそりと(このフィルムのように)抜け落ちています。
年末にお話ししたプロパガンダ映画の要件を紐解くまでもなく、
そこには当然「我が方イギリスの側の正義」しかないわけです。
いずれにしても「プロパガンダ映画に名作なし」の典型みたいな作品でした。
そもそも中立であるべきノルウェーを狙っていたのはドイツだけでなく、
英側だって戦略上侵攻しようとしていた(仏にかまけている間取られた)
という視点はごっそりと(このフィルムのように)抜け落ちています。
年末にお話ししたプロパガンダ映画の要件を紐解くまでもなく、
そこには当然「我が方イギリスの側の正義」しかないわけです。
いずれにしても「プロパガンダ映画に名作なし」の典型みたいな作品でした。
ところで蛇足ながら、この映画の前半の絵は、人間ドックの待ち時間を利用して
iPadで検査の合間を埋めるようにして仕上げたせいで、
これを見るとドックを行った病院と待ち時間の様子を思い出してしまいます。
実は音楽の演奏も同じで、ある箇所をさらっているときに考えたことが、
意識下でプリンティングされてしまい、そこにくると
iPadで検査の合間を埋めるようにして仕上げたせいで、
これを見るとドックを行った病院と待ち時間の様子を思い出してしまいます。
実は音楽の演奏も同じで、ある箇所をさらっているときに考えたことが、
意識下でプリンティングされてしまい、そこにくると
そのプリンティングされた映像や出来事、イメージが、
何回演奏してもふっと浮かんでくる現象があるのですが、
絵を描くという作業にも同じようなことが起こるんだなあと実感しました。
何回演奏してもふっと浮かんでくる現象があるのですが、
絵を描くという作業にも同じようなことが起こるんだなあと実感しました。
ちなみに”プリンティング”される事象は、人の顔だったり、
ブログ制作で取り扱ったシーンだったり、もっと他愛のないことだったり。
自分では内容やプリンティングそのものをコントロールできません。
ブログ制作で取り扱ったシーンだったり、もっと他愛のないことだったり。
自分では内容やプリンティングそのものをコントロールできません。
この現象、楽器をやる人ならおそらく皆わかってくれますよね。
続く。
続く。