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原子力空母「エンタープライズ」100分の1模型〜スミソニアン航空宇宙博物館

2021-03-15 | 博物館・資料館・テーマパーク

スミソニアン博物館の空母ハンガーデッキを模した
CVS「スミソニアン」の一隅には、巨大なシップモデルが展示されています。

 

どんな状態かというとこんな感じ。
レシプロ戦闘機ワイルドキャットの下に備えられた
ライト内蔵の巨大なケースの中にそれはあります。

空母の100分の1スケールの模型というのは圧巻です。
模型ファンならずともこの迫力には皆等しく目を見張る迫力でした。

模型ケースの端に展示されているこの盾には

この展示のメンテナンスの一部は、
USS ENTERPRISE CVN-65ASSOCIATION
によって資金提供されています。

「We are Legend」(1961-2017)

と記されています。

本家のエンタープライズアソシエーションと関係がある、
と誇らしく表明しているわけですね。

エンタープライズが就役していたのは1961年から2012年。
その名前を受け継ぐ艦は8隻目ではありますが、
原子力空母としては世界初となります。


バウデッキ左舷側にはブライドル・レトリーバーが二本突き出しています。
このブライダル・レトリーバーについては「ミッドウェイ」のログで
詳しくお話ししたことがあります。

”MAN OVERBOARD!"(人が落ちた!)〜空母「ミッドウェイ」博物館

この甲板左舷部分に駐機してある艦載機はおそらくA-7コルセアIIでしょう。
ということは模型で再現されているのはベトナム戦争時代と見ていいかと思います。

この頃はカタパルトによる射出の際、シャトルと航空機の主翼基部や胴体とを連結する
「ブライドル」「ブライドル・ワイヤー」を使っていましたが、
「エンタープライズ」の長い歴史上、特に最後の方では
このシステムは不要となり、この部分も必要が無くなったはずなのですが、
どんな時代の写真にもこれが付いているんですね。

甲板を改装することでもあれば無くしてしまったのかもしれませんが、
ブライドル射出式の名残りとして機能しなくなったあとも
あえてシンボルのように残しておいたのかもしれません。

それに、実際にあそこに立ったことのある人間として言わせてもらうと、
なかなか開放感があって他では味わえない眺めなんですよね。

軍艦は「ミッドウェイ」のように柵を立てないので尚更でしょう。

どうやら今から
偵察機Northrop Grumman E-2「ホークアイ」 Hawkeye
が発艦するところのようです。


よく見ると人の動きも非常に細部まで表現されており、
走っている緑シャツ、向こうのクルセイダーの横の赤シャツが
この場面に躍動感を与えています。

ここだけ見ていると、カタパルトがもう立ち上がっているので、
ホークアイのプロペラが回っているように思えてきます。

ブリッジの後方デッキにも航空機が満載です。 
ちなみにこの甲板の航空機の現在地を統括する係が
飛行機の形のマグネットを貼り付けていくボードのことを
西洋版コックリさんを意味する「ウィジャボードOui-ja board」
という、という話は一度書いたことがあります。

最後尾に並べられているのはヘリコプター。
シースプライト、という名称が思い浮かびましたが、
自信がないので思い浮かべただけにしておきます。

艦載機エレベーターに1翼を畳んで乗っているのは、
可変翼機といえばこれしかない、グラマンのF-14トムキャットに違いありません。

そして左はRA-5ビジランティ・・・・かな?

ところで、ハンガーデッキにも何やら機影が見えるではないですか。

ほおおおおお〜〜〜〜〜!

さすがスミソニアン、こんなところにも決して手を抜かないね。
この写真はスミソニアンHPから許可される使用条件でダウンロードしたものです。

こちらで運んでいるのはA-6イントルーダー、それともプラウラー?

ハンガーデッキの中のイントルーダーさん。

この展示コーナーで最初に目撃したインテリパパの二人の息子も
この模型を前に気色満面というやつです。
男の子の模型(あるいは飛行機、船)好きってもうこの頃にはすっかり萌芽しているのね。

絶賛ポリコレ文化革命中のアメリカでは、おもちゃ売り場での
「男の子用おもちゃ」「女の子用おもちゃ」のコーナーをなくせとか
アホなことを言い出しているそうですが、自分たちの小さい時とか、
あるいは自分の子供たちが、誰もそのように仕込まないのに、
彼あるいは彼女が、赤ちゃんの時から男の子は乗り物、女の子は
ぬいぐるみや人形に手を伸ばすのをどう思っているんでしょうか。

って全く関係なかったですね。<(_ _)>

画面手前後ろ向きに駐機されているのもビジランティではないかと思われます。

甲板の上にいるヘリはCH-46ーキング、そしてその後ろは
ボーイングのバートルV-107ではないかと思われます。

どちらも「ミッドウェイ」博物館で実物を見ることができました。

この辺(甲板後部)はトムキャットの巣になっております。

ハンガーデッキにもトムキャットが。

翼を立てた状態なのでこれはクルセイダーでしょうか。

こうやって航空機を紹介していくと、この艦載模型が
ベトナム戦争当時のステイタスに基づいているのがよくわかります。

スミソニアンのHPで答え合わせしたところ、この模型は
1975年当時の艦と艦載機の構成を再現しているということでした。

模型製作者はステファン・ヘニンガーStephen Henninger 氏。
アメリカでも有名なシップモデラーだそうです。

2016年になって従来のライトをLEDに取り換える作業が行われました。

ヘニンガー氏が
ハンガーデッキの内部にアクセスしやすくするため、
後部右舷の艦載機エレベーターを取り外す作業をしているところです。

完成した頃はお若かったはずのヘニンガー氏も、今や立派なおじいちゃん。
しかし、作業中のこの気色満面の様子を見よ。

 

ヘニンガー氏は、数学の学士号を取得しており、最近、大手航空宇宙企業の
技術スペシャリストとしてのキャリアを退職したという人です。

つまり元々模型製作は本職ではなく「趣味」であったということになりますが、
引退してからは個人や企業向けのヨットやクルーズ船の模型制作をしているそうです。

彼は兼ねてから空母に興味を持ち、機会があれば模型を作ってみたいと
切望していたこともあり、スミソニアン博物館の、

USS「エンタープライズ」の1:100スケールモデルを制作する
12年間にわたるプロジェクトを引き受けたということです。

85機の航空機を搭載したこの11フィートのモデルは、1982年に完成しています。

ということは、計画が起こったのは1960年代。
「エンタープライズ」就役間もない頃だったということになります。


計画が立ち上がった頃には最新式の空母だったのが、
模型を作っている間にそうではなくなっていたということですね。

素材はプラスチックのボード、アルミニウムのシート、ポリエチレン、
真鍮とアルミニウムのチューブ、木(バルサ)、ソフトワイヤ、ベニヤ合板など。

接着のために飯田、スーパーグルー、エポキシ、そしてプラスティックセメントが使われています。

A-7コルセアII、A-6イントルーダー、SH-3シーキング、CHー46シーナイト、
A-4スカイホーク(あれ?どこにいたんだろ)F-14トムキャット

などが艦載機として制作されました。

E-2ホークアイとRAー5ビジランティスクラッチビルドといって、
プラモデルのように組み立てキットで作るのではなく、各種材料を用いて
ゼロから制作、つまり文字通り素材から削り出して作られています。

一方、EA-6B プラウラー(うろうろする人の意味)はイントルーダーのキットを
大幅に変更して制作されました。

これら航空機の製作には全部で4000時間費やされたそうです。
航空機だけに1日10時間かけたとして・・・のべ400日!

うーん・・・気が遠くなりそうです。

完成までの模型製作の歴史

● 1970年11月、ヴァーモント州のナサ・ワロップス島で模型考案

●  1971年1月〜7月ペルーにて断面図制作

●  1972年−1975年、南アフリカのヨハネスブルグにて、ハル構造の図面化

●  マサチューセッツ州アーリントンで(わたし昔住んでましたここに艦体と航空機の製作

●  1976年コロラド州に完成したプロジェクトがUホールで運搬される

●  1982年5月26日、プロジェクト開始から11年後、艦載航空機82機が全て完成

●  1980年、二つのパーツに分けて制作された艦体が接続される

●  1982年、ハンガーデッキが接続され細部の調整と仕上げを行う

●  プロジェクト完成 1982年8月

 

 

続く。


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6 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
素晴らしい! (Unknown)
2021-03-15 06:05:28
素晴らしいです!

艦橋上のレーダーが就役時の形状で、模型の完成時には変わっていたと思います。設計、組み立てしている間に実艦は改修されてしまったんですね。

飛行機の1/100模型はフルスクラッチしたもの以外は日本のタミヤ製だと思います。1機作るのに、5、6時間はかかるので、あれだけの数を作るのは大変です。
返信する
CVAN/CVN-65 (お節介船屋)
2021-03-15 10:35:47
1975年6月30日艦種がCVANからCVNに変更されたので銘板に標記されています。
キティ・ホーク級とほぼ同じで推進機関を原子力とした空母でした。
ほぼ無限と言われる航続力を得られるだけでなく、吸排気が考慮しなくても良いのでそのスペースが必要ないだけでなく、気流も乱さないため空母の航空機運用に極めて望ましいこととなりました。
また自艦用燃料が要らないため航空機燃料用のスペースも拡大出来、艦内容積の自由度も増しました。
ただ時間はかかり、1950年から設計は始められ、53年で潜水艦用原子炉計画推進のためい一旦中止し、54年再開され58年度計画で具現化されたものでした。
機関からの排気がないためアイランドは電子機器の装備に理想的な形状とされました。1961年竣工
ただパネル状のアイランド周囲に張り付けてあるSPS-32,-33レーダーはなかなか考えられていた性能が発揮出来ず1979年からの改造で撤去されました。
要目
基準排水量75,700t、全長341.3m、幅最大78.3m、水線幅38.5m、吃水10.8m、原子力、タービン、4軸、280,000馬力、速力36kt、搭載機80~96機、乗員4,900名

1965年12月から半年ベトナム戦争に従事、1966年12月から半年2度目のベトナム戦争に従事、3度目の1968年1月佐世保に寄港した時大規模反対デモがありました。その時プエブロ事件が発生、急遽日本海へ出動、1か月、その後ベトナムへ、ただ北爆停止で限定された従軍でした。
1969年1月4度目のベトナムに向かう前、ハワイ沖で訓練中、F-4戦闘機搭載ロケット弾に電源車の排気が掛かり爆発、搭載機15機損耗、甲板2か所破孔を生じました。ハワイで6週間で復旧しました。
その後ベトナム戦争従事や原子炉炉心交換等実施しました。
1975年ベトナム情勢急変で在留米人撤退作戦に従事しましたがこの年艦種変更もあり、SH-3やS-3を搭載したのもこの頃です。電子戦機EA‐6Bは1976年7月以降の搭載でした。

艦橋上の円錐構造物はECMアンテナを装備するための本艦特異なものでした。これも1979年からの改造で撤去されました。
建造当初はテリアミサイルを装備する予定でしたが装備せず、1967年頃シー・スパロー発射機を装備し、1979年から82年の改造でそれをMk25から29に換装し、CIWSも装備されました。
この改造では装甲重量等も増加し、満載重量では工事前の86,600tから93,970tに増加しました。

ブライドル・レトリーバーですが艦首前端に2本、斜め甲板前端に1本装備されていましたが、1967年斜め甲板前端の1本は撤去されました。模型の写真では隔年出来ませんが。

2012年12月1日非活動化、退役を宣言され、2017年正式に除籍、記念艦となることも考えられましたが原子力機関の撤去の事もあり、2025年ころまでの解体されるようです。

参照海人社「世界の艦船」No291、685,773
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何度も済みません (Unknown)
2021-03-15 12:38:00
ここ数日、Goo側の不具合なのか、コメント書き込みが出来たり、出来なかったりしています。先日11日は東日本大震災から十年の節目。歌手のMisiaさんが被災した航空自衛隊松島基地で歌いました。

「自分には何ができるのか。今はもしかしたら歌を聴けるような気持ちではない人もいるかもしれないけど「いつか立ち上がってみよう」という時に変わらない歌があったらいいなって。だから私は変わらずに明日へ明日へと歌っていこうと、それがみなさんの明日への力になったら。自衛隊の皆さんに感謝の気持ちと東北の皆さんに明日への力が湧くように心を込めて歌いたいと思います」

https://www.youtube.com/watch?v=fQNbjTpYTy8

歌い終わった瞬間に航過するブルーインパルス。素晴らしかったです。泣けました。航空自衛隊いつもいいところを持って行きますね(笑)
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海自幹部候補生学校卒業式 (お節介船屋)
2021-03-15 17:44:38
話題とは違いますが
3月13日一般幹部候補生と飛行幹部候補生の卒業式が実施されました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/853dd3140ff9110dc3f6428f2e886dff6a45a21c

晴れの旅立ちですがコロナ対策で2年続けて家族の出席も出来ない事となったようです。残念ですね。
一般は「かしま」「うらが」「てんりゅう」、飛行は「あけぼの」での旅立ちとなりましたが津久茂の瀬戸を抜ける時、YouTubeに動画をあげておられる方がいますが「うらが」から見送りに対してお礼の放送が実施されているのがわかります。本当に珍しい光景ですが2年続けての国内巡航参加で頑張るとも言っていました。
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ブライドル・レトリーバー (お節介船屋)
2021-03-16 09:35:20
1990年代他の空母は撤去が実施されましたがエンタープライズのみ撤去せず、最後まで装備したままとなっていました。
海軍年鑑等で「これを使用する艦載機がないのに、エンタープライズのみ装備するのは謎」と言われました。
邪推では就役以来エンタープライズが保持している米海軍での全長が最大の空母の座を維持するためではないかとも言われました。
「ジェラルドR・フォード」級3番艦として2027年エンタープライズは復活しますが全長は332.8mであり約8m余りも短く先代に叶いません。
参照海人社「世界の艦船」No773,873
返信する
掃海艦「えたじま」竣工 (お節介船屋)
2021-03-16 20:36:24
また話題が違いますが
本3月16日掃海艦「えたじま」がJMU鶴見で竣工しました。
https://news.yahoo.co.jp/byline/takahashikosuke/20210316-00227619/
690t型GFRP掃海艦3番艦です。
全長67.0m、幅11.0m、深さ5.2m、吃水2.7m、ディーゼル機関2基、2,200馬力、2軸、速力14kt、20㎜機関砲1基、掃海装置1式、乗員約60名
掃海艇「ひらしま」型、「えのしま」型(570t)より一回り大きいですが艦と呼ばれる船としては最小です。過去には輸送艦「ゆら」「のと」が590tで最小の艦でしたが除籍されています。

本令和2年度は、今後
護衛艦「はぐろ」が3月19日。JMU磯子で竣工予定、潜水艦「とうりゅう」が3月下旬川重神戸で竣工予定。
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