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重力ピエロ

2009-05-23 | 劇場映画れびゅー
「春が二階から落ちてきた」
以前から意味深な予告編が気になっていた『重力ピエロ』を観てきました。
★★★★

賢い兄貴と、クールで正義感の強い弟、そして妻に先立たれた父の家族ドラマかと思って観ていたら、とんでもなく重い運命の鎖に縛られた家族が、鎖を断ち切ろうと懸命に笑って生きる姿を描いていた。

予告編も意味深ではあったけど内容については触れていなかったし、この家族の秘密が何なのか、問題の存在すら無いように途中までずっとぼかして描かれていたので、序盤の何気ない伏線の数々が後半になって悲しい秘密にひっくり返された衝撃が印象に残りました。

テーマが重いのに、加瀬亮と小日向文世の人間味溢れる自然体の演技が温かな空気を産んでいて心地良いのと、問題に対する苛立ちの両方が同時にやってくる。
いろんな事が起きてもまるで自分の家族の問題と錯覚してしまう感覚。
なので、余計に弟を思う兄の気持ちや、兄を慕う弟の気持ち、全部を包み込む父の気持ちがズシーンと来た。

岡田将生のオトコマエっぷりと、渡部篤郎の素が鬼畜な表情も印象的。

ネタバレ
放火犯が誰なのかなんて推理については、この映画では二の次。
きっと兄貴も「もしかして」なんて心のどこかでは思っていたはずで、その辺をはっきりと描いていないところが凄くイイ。

血が繋がっている親を本当の親と感じるか、育ての親をそう思うか。
ましてや連続レイブ犯の血引いていると知った春の悩みなんて、それが原因で家族も自分も周囲からおかしな目で見られていたと知った彼の気持ちなんて、映画を観ていて想像したのでは程度が知れてるよね。
彼の悩みに気づいて何とかしうと画策していた兄の思いすらも超えた弟の気持ちを思うと、最後に父の前で出した結論を否定する事は出来ないよなぁ…。

頼らなくても何でも出来そうだけどいつも兄に頼ってる弟や、頼りがいが無いようでいつも弟を守る兄貴の構図が良いね。
あんな事が有った後、最後にまた兄の下へ飛び降りる瞬間で締めたのがグッときた。

正義って何なんだろうとか、自分を悪だと思っていない悪人は誰がどうやって裁くべきなんだろうとか、深く考えずにはいられない映画でした。



重力ピエロ (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社

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6 コメント

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TBありがとうございました (くまんちゅう)
2009-05-23 17:37:49
コチラから送れないのでコメントします

家族を傷つけた悪に対して、闇雲に復讐するのではなく
許すための機会を作っていたというのが深いですね
底なしの悪を裁く難しさも提示してたのかと思います
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こんにちは (まりっぺ)
2009-05-25 01:16:09
重さの中に、家族の絆の強さが現れていましたよね。
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お早うございます (象のロケット)
2009-05-25 08:25:18
TB有り難うございます。

生憎当方よりgooユーザー様へのTBは通りませんが、記事は大切に反映させて頂きます。
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>くまんちゅうさん (そーれ)
2009-05-26 20:08:31
どうもです!
深いですねぇ。
>許すための機会を
そういう発想自体が底なしの悪人とは考え方も生き方も全く違うと余計に感じさせて、益々考えさせられる映画でしたねぇ。
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>まりっぺさん (そーれ)
2009-05-26 20:12:38
どうもです!
>家族の絆の強さが
ですねぇ。
血の呪縛に悩む弟君をサポートするのに、ナチュラルな役者さんを兄貴&親父に配置したところがこの映画の成功してるところだと思いました。
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>象のロケットさん (そーれ)
2009-05-26 20:13:11
どうもです!
ありがとうございます!
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