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スター・トレック イントゥ・ダークネス

2013-08-21 | 劇場映画れびゅー
謎だらけの予告で待ちに待った続編、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』の先行上映を観てきました。
★★★★★

先行上映ではIMAX版が無かったのでフツーので我慢、本上映が始まったらIMAX3Dでもう一回観なおすつもりでしたが、観終わってもその気持がさらに増す程面白かった。

はじめに念の為書いておくと、前作より始まった新たな『スター・トレック』映画シリーズはシリーズオリジナルの『宇宙大作戦』よりも以前、カークが生まれる直前まで時間を過去へ巻き戻し、未来からタイムトラベルして来たロミュラン艦によってカークの父親の乗った宇宙艦が破壊されてしまったことで派生した別の時間軸を描いています。
平行して存在していた本来の時間軸と多少差異はあるものの、今のところその時代に存在していた人物達はほぼこの時間軸にも存在していて、しかし、過去が変わってしまったことで確実に歴史そのものは元の時間軸からかけはなれたものになっていっている。

スター・トレックマニアが作り手である事から推測すると、初めて観る人にも新たにファンになってもらえるような単品での面白さを全面に押し出しながら、真っ白のところから新たな物語を生み出すのでは無くて、ある程度パラレルワールドならではの設定を引き継ぎながら全く新しい見せ方をする事で、コアなファンも作ってる本人達も納得して楽しめる映画作り。
歴史を新たに紡ぎ直してパラレルワールドのスター・トレックを作る、これはスター・トレックマニアな作り手冥利に尽きる仕事だろう、羨ましい。

特に今回は前作の大ヒットを受けての二作目。
前作でもエンタープライズ号の乗組員がいかに元の時間軸のように全員揃うかだとか、家庭事情が激変してより破天荒になったカークや、初対面の印象が悪すぎたスポックがこの時間軸でも我々の知っている関係になれるのだろうかといった部分での楽しみ方が観ている最中に感じられたし、あの後どうなったのだろうかといった期待が残った。
他にも細かいところで言えば、未来ロミュラン人の急襲を切掛にエンタープライズの建造と出航が数年遅くなった代わりに搭載されている技術の水準が極めて高かったり、コバヤシマルの試験のエピソードが元の時間軸での武勇伝とは全く違うとられ方をしてカークが窮地に追い込まれていたりといった違いが有り、未来のスポックがこの時間軸で今後どのような影響を及ぼすのだろうかといった、続編への布石ともなりそうな部分から来る期待で、待ってた人たちはこの数年沸々としていたんじゃないでしょうか。

本作の蓋を開けてみると、これがもう期待以上。
元の話を知らなかった方でも絶対に楽しめる緻密なストーリー展開をベースに、マニアならもっと楽しめる小ネタに彩られた、時間軸やクオリティーは違えど、これぞ紛うこと無く『スター・トレック』。
前作で「無かったことにして仕切りなおす」なんて最近流行ってる事をしないでくれてありがとう!
『スター・トレック』シリーズは、こうしてこれからもクオリティーを上げながら歴史を紡ぎ続けていくのです。

元ネタを知っている人は何も知らずに観た方が絶対に楽しめますので、詳しくはネタバレ以降に書きますが、これだけは言えるのは、元ネタを知らなくても今回も楽しめます。
何故なら、この時間軸に居るカーク達にとってもこの物語は初めての体験で、初めて直面する危機だから。
前作でもパラレルワールドならではの小ネタを散りばめながら、いちいち元ネタのまどろっこしい解説なんて一切無いし特に必要は無い、今後もきっと不要。
元の時間軸の『宇宙大作戦』なんて観る必要はないし、今からあの長編ドラマを全部観るとなると、しかも何十年も前のテレビドラマで長年キワモノ扱いされていたクオリティーは新映画シリーズから入った人が改めて観るには辛いと思う。
(一応最近Huluなどでダウンロード視聴出来る宇宙大作戦こと元祖スター・トレックはHD放送用にCGエフェクトとノイズ修正を加えたバージョンです)
でも、何度も重ねて書きますが、やっぱ知ってたら余計に面白い。後で重要なエピソードだけを観ても楽しめるかもね。

ネタバレ
 ※激しくネタバレです

見どころは…、どこから書いたらいいのか、全部です。

まず、今回のキーマンとなる英国の至宝ベネディクト・カンバーバッチ演じるジョン・ハリソンの正体が、想像していた通りやっぱりカーンだったってところ。
元のカーンがラテン系の役者だったところをわざわざロンドンから物語を始め、誰もが知るイギリス人スター俳優に演じさせ、かく乱させておいて「やっぱりカーンだった」ってところの反則的上手さ。
ベネディクト・カンバーバッチの芝居なら、シャーロック・ホームズを彷彿とさせる頭脳明晰な部分を全面に押し出して、あとは無敵とも思える強靭さを演出すれば、肌の色が多少違っても誰も文句言えないでしょう(多少じゃないけど)。
むしろベネディクト・カンバーバッチで嬉しい、大歓迎。

カーン自身の設定に関して言えば、優生戦争だったり過去の悪行だったりと言ったキャラクターに肉付けをする部分が今回の映画の中の台詞には盛り込まれませんでしたが、あまりに短時間のスピーディーな展開の中でこれはカーク達が調べる間も無かったろうし不要だったとも言える(と言う事にしておこう)。

元のカーンとは違い、今回はカーク達に恨みを持っていないし上手く話が進むのか?と思わせておいて、そこはやっぱりカーン。
凶暴性を露わにするであろう直前に、今回はもう登場しないだろうと思っていた未来人のスポックが助言に現れ、彼の一言は一行を窮地を救う鍵となる。
うーん、これも反則なんだけど、レナード・ニモイが出てきてくれただけで許さざるを得ない。

そして、カーンと言えば旧映画版第二作『スター・トレックII カーンの逆襲』。
あれは歴史の流れからいくと本作よりも数十年後のエピソードですが、本作と同じく映画版第二作という看板を背負う事もあり、カーンの登場を含めこの二作は類似点と相違点が面白い、対を成す作りになっています。
前作でのコバヤシマルの試験エピソードや洗脳ヌメヌメ生物も、そもそもこの『スター・トレックII カーンの逆襲』から来ているので、覚えてない方や未見の方には是非本作を観る前に観ておくか、後で観る事を是非ともお勧めします。
(ついでに『宇宙大作戦』シーズン1第22話のカーン登場編も)
ちなみに本作よりエンタープライズの乗組員となったキャロル・マーカスと言えば、『カーンの逆襲』のキーマンとして登場したカークにとって重要な存在となり得る人物の名前で、作中で彼女の本名を聞いた時の驚きと言ったらもう。
物語の終盤でカークとスポックの位置づけが『カーンの逆襲』とは真逆になっている辺りもグッと来る。

この物語を経て、ようやく大勢の乗組員を率いるエンタープライズの艦長らしい自覚や、乗組員たちの信頼、特にスポックとの真の友情が築け、前作で微妙に軽かった関係から大幅に前進。
カーンとの試練を早々に経て、ようやくこれからあの“5年間の探索ミッション”へと出発するわけですから、『宇宙大作戦』の時と同じく長期間地球を離れて探索をする、しかし新しいエンタープライズとより結束力の強い乗組員一行を描く事になるであろう次回作以降が楽しみで仕方がない。

細かいところに目を向けると、様々なパートでシリーズを通して人気の小動物“トリブル”が直接物語に絡んで来ているところが嬉しい反面、シリーズを重ねるごとに特殊メイクが大幅に変化して迷走しているクリンゴン人の顔がまた大幅にデザイン変更の冒険をし過ぎていて「おいおい」と思わせたりと、ファンならではの感想がいろいろ有ると思います。

序盤、マーカス提督の部屋に『新スター・トレック』のD型エンタープライズ(ギャラクシー級)を角ばらせたようなデザインの模型が有ったので、これは荒削りなコンセプト模型なのか?と思っていたら、極秘で作らせていた大型戦艦だったと言うオチ。
極秘なのに模型置いてて良いのかどうかという議論は別として、D型エンタープライズのように胴体部分が楕円に膨らんでいるものがこの時代に建造されたという事は、現行のエンタープライズに搭載されている技術が前の時間軸の同時期とは比べられない程に進んでいる事も含め、未来ロミュラン船の襲来の影響により様々な技術革新がパラレルワールドよりも加速度的に進んでいるという事でしょうか。
D型エンタープライズと違い、円盤部分の中が抜けているようなデザインもシリーズのどこかで見かけたような気がするし(何だっけか?)、せっかく本作の最後に大補修を終えたエンタープライズも次回作で爆破されて早々に全く新しいA型に刷新されるかも?!

ということで、今週末はIMAX3D版で観直し!
二回目のレビューはこちら



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