【メッセージ文について】
テレビドラマのセリフがきっかけとなって、いま「恩」という言葉が注目されています。
「恩情」という語に表されるように、「恩」とは、恵みや情けのことで、他の人から恵みや情けを受けることをいいますが、仏教では、より深い意味があります。
漢字の「恩」は「因」と「心」からなります。
因を尋ねる心です。私たちが今こうあるのは、突然の出来事ではなく、さまざまな原因が重なり合い、あらゆるものに支えられて、生きている結果です。
このことを心に深く考えることを「恩」といいます。
私という存在は一人で生きていくことはできません。
一滴の水も、一吸いの空気も、すべてはいただきものです。
いのちもそうです。
決して自分だけでつくったものではありません。
そのような、私を支える大いなる恵みに「心」をかけ、感動している姿を、「恩」という一字のなかに味わうことができます。
連綿とつらなるいのちの関係性に想いを馳せ、大きな恵みや支えに対して「有り難いこと」、「お蔭さま」と受けとめていく時、私たちは決して返しきることのできない、深い「ご恩」の世界に気づかせていただくのです。
如来大悲の恩徳は 身を粉にしても報ずべし
師主知識の恩徳も ほねをくだきても謝すべし
(親鸞聖人「恩徳讃」、『浄土真宗聖典(註釈版第二版)』1181頁)
師主知識の恩徳も ほねをくだきても謝すべし
(親鸞聖人「恩徳讃」、『浄土真宗聖典(註釈版第二版)』1181頁)
親鸞聖人は、仏さまの「ご恩」、そしてみ教えをお伝えくださった多くの方の「ご恩」を讃えられるとともに、その「ご恩」に応えていく生き方をすすめられました。
この度のお彼岸は、コロナ禍の中で、不安を感じながら迎えることとなりましたが、それぞれの場で、仏さまの大きな「ご恩」を聞かせていただき、いのちのつながりを知るご縁といたしましょう。
(西本願寺)