ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

統合失調症のひろば編集部編『こころの科学・中井久夫の臨床作法』2015・日本評論社

2024年11月23日 | 中井久夫さんを読む

 2016年のブログです

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 なぜか読みそびれていた雑誌「こころの科学」の特集号『中井久夫の臨床作法』を読みました。

 精神科デイケアでボランティアをしながら読んでいたのですが、久しぶりに、雑誌を読みながら、笑いそうになったり、涙ぐみそうになったりして、困りました。

 いい本です。

 それほど厚い雑誌ではないですし、値段もそれほど高くはないですが(ちなみに値段は1,800円です)、中身がすごいです。

 中井さんと一緒に仕事をしていた精神科医のみなさん(それぞれのかたがたが今では一流の先生たちです)が中井さんを囲んで行なった座談会と、中井さんの仕事ぶりをよく知る臨床家の先生がたの思い出話、それと中井さんの主要論文の三本立てですが、いずれも読みごたえがあります。

 特に、じーじは、村瀬嘉代子さんと青木省三さんの思い出話を読んだ時には涙が出そうになりました。

 座談会でも貴重なお話がたくさん出てきて、ひとつひとつが勉強になります。

 一貫しているのは、中井さんの、患者さんの側に立つ、患者さんを尊敬する、という姿勢。

 すごいです。

 本当の意味で(同じ人間どうしとして)患者さんと対等なんだなと思います。

 じーじも精神科デイケアではメンバーさんのすごさや純粋さを実感する毎日ですが、さらに、みなさんといっしょに深く学び、経験を積み重ねたいと思います。             (2016 記)

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 2024年11月の追記です

 中井さんは、『ハムレット』の、世の中には人間の力ではわからないものがある、という言葉を引いて、わからないことに耐えることの大切さを述べます。

 人間の限界と、それに耐えて考え続けることや生き続けることの大切さを教えられています。

 そして、その上で、祈ることの大切さにも触れます。

 すごい人だな、と本当に思います。        (2024.11 記)

 

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村澤真保呂・村澤和多里『中井久夫との対話-生命、こころ、世界』2018・河出書房新社

2024年10月30日 | 中井久夫さんを読む

 2019年のブログです

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 村澤真保呂さんと村澤和多里さんの『中井久夫との対話-生命、こころ、世界』(2018・河出書房新社)を読みました。

 お二人のお父さんが中井さんと大の親友で、お二人は子どもの頃から中井さんのことを、ナカイのおじさん、と慕っていた間柄とのことで、そういうこともあってこの本が書かれたようです。

 すごく面白かったです。そして、刺激的でした。

 第一部は、中井さんとの対話。

 中井さんの本音トークが久しぶりに聞けますが、その丁寧な語りは貴重です。

 治療とは患者さんの内なる自然を回復すること、とか、治療には遊びが大切、などなど、意味深い発言がなされています。

 中井さんの発言から、深い思索が導かれるようで、なんとなく襟を正して読むような感じになりました。

 第二部は、中井さんの思想を村澤さんたちが解説を試みています。

 中井さんの、寛解過程論、を中心に中井さんの世界が解読されます。

 中井さんが翻訳をされたサリヴァンさん、その世界に近い量子力学のボーアさん、免疫学の多田富雄さん、生物学のユクスキュルさん、小児科医の松田道夫さん、などなどの思想が紹介されます。

 いずれも、じーじも以前から興味のある方々で、その偶然に驚きながら、本棚を改めてチェックしました。

 じーじが中井さんに魅かれるのも、このあたりに理由があったのかもしれません。

 無理のない、患者さんに優しく、患者さんを信頼しているその姿勢には、本当に頭が下がります。

 今後も折にふれて読んでいきたいな、と思いました。          (2019.1 記)

 

 

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中井久夫『最終講義-分裂病私見』1998・みすず書房-精神科臨床の深い理論と実践に学ぶ

2024年10月11日 | 中井久夫さんを読む

 たぶん2014年ころのブログです

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 精神科医の中井久夫さんの『最終講義-分裂病私見』(1998・みすず書房)を久しぶりに読みました(統合失調症と名称変更がされる前に書かれた本です)。

 購入したのが2003年で、その後、何回かは読んでいるはずですが、それにしても久しぶりです。

 ところどころにアンダーラインがあるのですが、やはりかなり新鮮な感じで(?)読んでしまいました。

 精神科デイケアのボランティアでの経験をふまえて読むと、うなずけるところが多々あり、勉強になりました。

 エヴィデンスとケーススタディの関係、妄想のプラス面、妄想へのつきあい方、患者さんの提案を3週間待ってみること、などなど、ていねいで細やかな配慮が参考になります。

 中でも、今回、もっとも、勉強になったこと、それは、現実の姿を大切にすることの重要性、ということです。

 中井さんは、事象を区別したり、分類をせずに、事象そのものを素朴に見ることの大切さを説きます。

 その理由は、事象を区別したり、分類をすると、事象は概念に近づくから、と言います。

 エヴィデンス重視の中で、概念化が盛んで、それがあたかも科学的と誤解をされますが、臨床にあっては、概念より事象そのもの、現実そのものが重要だ、ということになるのではないかと思います。 

 いま、ここでの現象を、いかにありのままとらえ、感じ、考えていくのかが、より重要、ということではないかと思います。

 信ずるに足る先輩がいることに感謝をして、さらに勉強を続けていきたいと思います。       (2014?記)

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 2022年12月の追記です

 今月のEテレ「100分 de 名著」は中井久夫さんの特集。

 第一回目はこの『最終講義』でした。

 講師は精神科医の斎藤環さん。中井さんのすごさをていねいに解説されています。

 じーじも初心にかえって勉強させてもらっています。       (2022.12 記)

 

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中井久夫『「伝える」ことと「伝わる」こと』2012・ちくま学芸文庫-ていねいな精神科治療に学ぶ

2024年07月01日 | 中井久夫さんを読む

 たぶん2018年ころのブログです

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 中井久夫さんの『「伝える」ことと「伝わる」こと』(2012・ちくま学芸文庫)を再読しました。

 おそらく3~4回目、単行本の時も含めると、数回は読んでいると思うのですが、なぜか今回も新しい発見が数多くあって(?)、新鮮な驚き(?)をたくさん経験できました。

 記憶力がだんだんあやしくなってきているお年寄りの特権(?)です。

 本の内容は中井さんのご専門の統合失調症や神経症の治療論が中心ですが、いずれもあくまでも中井さんご自身の体験に基づいた丁寧な治療のあり方を述べられていて、心理臨床に携わる者にもたいへん参考になります。

 中でもじーじが今回、参考になったのが「意地」の問題。

 ここのところ、「うらみ」や「意地」のことについて考えているので、いろいろと参考になりました。

 特に、「意地」を張っていることをそっと汲んであげると「うらみ」になりにくい、というご指摘はすごいと思いました。

 他にも、初期のロールシャッハテストには枠があった、とか、びっくりするような話題ものっています。

 博学で、しかも、地に足の着いた中井さんの治療と文章は、本当に素敵ですし、貴重だと思います。

 今後もさらに学びつづけていきたいと思います。      (2018? 記)

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 2021年4月の追記です

 心理療法における「枠」の重要性や不思議さということを考えます。

 中井さんの考案した風景構成法という心理テストでは、治療者がまず紙に外枠を描きます。

 そうすることで統合失調症の患者さんでも心理的に安全に絵を描くことができます。

 風景構成法のもとになった箱庭療法でも、統合失調症の患者さん用の箱庭は、木の枠が通常より少し高くなっていて、患者さんを心理的に護るようです。

 不思議ですが、「枠」が大切なポイントになっているようです。

 さらに、心理療法では、「枠」としての時間の重要性も挙げられます。

 決まった時間だからこそ、治療者も患者さんも護られるようです。

 もっともっと、勉強を深めたいと思います。     (2021.4 記)

 

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中井久夫『隣の病い』2010・ちくま学芸文庫-ていねいで温かな精神科医に学ぶ

2024年06月18日 | 中井久夫さんを読む

 2019年のブログです

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 中井久夫さんの『隣の病い』(2010・ちくま学芸文庫)を再読しました。

 これもかなり久しぶりの再読。

 付箋とアンダーラインがすごいことになっているので、少し整理をしながら、しかし、またたくさんの印をつけながら、読みました。

 例によって、今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、統合失調症の患者さんの幻覚妄想について。

 患者さんにとって、幻覚妄想はたいへんな症状ですが、しかし、発病時の表現しがたいような恐怖体験に比べれば、幻覚妄想は言語化と視覚化がなされているので、まだ耐えられやすいかもしれない、という理解をされます。卓見だと思います。

 二つめは、以下の文章。

 「いかにデータとして欲しくても、患者さんにとって意味のないことはしない」

 すごいです。当たり前のことなのですが、大学教授の言葉として、すごいと思います。

 三つめは、河合隼雄さんとの出会いの思い出。

 1969年11月の芸術療法研究会(今の芸術療法学会)に中井さんが顔を出したところ、河合隼雄さんが、当時はまだ知られていなかった箱庭療法の症例について発表をされていて、そこで意気投合をされたということで、なかなか感動的です。

 中井さんは、これは使える、と考えて、さっそく病院で手作りの箱庭を作って、試してみられたそうで、その熱意と研究心がすごいです。

 さらに、そこから中井さんの有名な風景構成法にも発展をしたといいますから、お二人の出会いは本当にすばらしいものだったと思いますし、お二人の熱意と探求心はすごいと思います。

 読んでいて、なんだかこちらにまで勇気をもらえるような、そんな気がしました。

 いい本を再読できてよかったなと思います。       (2019. 11 記)

 

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中井久夫『精神科医がものを書くとき』2009・ちくま学芸文庫-患者さんへの祈りを大切にする精神科医

2024年06月15日 | 中井久夫さんを読む

 2019年のブログです

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 中井久夫さんの『精神科医がものを書くとき』(2009・ちくま学芸文庫)を再読しました。

 もう何回目になるでしょうか。

 本は付箋とアンダーラインで大変な状態。少しだけ整理をしながら読みました。

 中井さんが精神科医になった前後のお話や大学病院での実践などが語られます。

 全編を貫くのは中井さんの患者さんへのやさしい祈り。

 以前にも書きましたが、中井さんは患者さんの薬を手渡すときに、効きますように、と祈りの言葉をそえる、といいます。

 他にも、わたしも病棟の一部になったら、患者と出会えるだろうと思った、とか、精神医学の目指す健康とは、苦しみや脅えなしに、ゆとりをもって生活を営めること、などと書きます。

 さらには、症例報告を書いた後の治療は、しばらくうまくいかない、などと、耳の痛い言葉もあります。

 いずれも患者さん第一の中井さんならではの言葉だと思います。

 そして、同じような姿勢は患者さんの家族にも貫かれます。

 すごいな、と本当に感心させられます。

 解説の斎藤環さんが、中井さんは精神医学を体系化しなかった、とその現場第一主義を評していますが、本当に患者さんのことだけを考えて働いてきたのだな、と感心させられます。

 今からでも見習っていこうとつくづく思いました。     (2019. 10 記)

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 2023年秋の追記です

 中井さんからはたくさんのことを教えていただいていますが、そのうちのひとつが、わからないことに耐えることの大切さ。

 中井さんがハムレットで見つけられた「ホレイショの原則」という、この言葉を患者さんにお話するそうです。

 中井さんから、先のことはわからなくても、そんなに心配いらないよ、とやさしく言われたら、誰でも安心できそうですね。     (2023.9 記)

 

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中井久夫・山口直彦『看護のための精神医学・第2版』2004・医学書院-名著と呼ばれる精神科臨床の教科書を読む

2024年06月03日 | 中井久夫さんを読む

 2019年初夏のブログです

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 中井久夫さんと山口直彦さんの『看護のための精神医学・第2版』(2004・医学書院)を読みました。

 精神医学の教科書で名著といわれている本です。

 ようやく読めました。

 看護のための、という名のとおり、精神科の看護師さんやその他のスタッフが理解しやすいようにわかりやすく書かれています。

 とはいっても、内容はかなり本格的で、初めて読むような細やかなことも書かれていて、たいへん参考になります。

 例によって、今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、夢の働きについて。

 夢が昼間やり残したこと、こころ残りのことを処理する、と解説されていて、感心しました。

 夢の仕事について、こんなにわかりやすく書かれているのを初めて読みました。

 二つめは、うつ病になりやすい人は、能率が下がった時に、努力を倍加させることで切り抜けようとして破綻する、という説明。

 すごくわかりやすいです。

 さらには、健康人と神経症、人格障害、精神病の比較についてもとてもわかりやすい。

 また、境界性人格障害の人への治療に役に立つかもしれない多少の助言など、日ごろの行動を再確認をするための記載も数多くあって、勉強になりました。

 なんども開いて、読み返していきたい、いい本だと思いました。     (2019.6 記)

 

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中井久夫『統合失調症の有為転変』2013・みすず書房-その2・こまやかな精神科治療に学ぶ

2024年05月23日 | 中井久夫さんを読む

 2017年のブログです

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 中井久夫さんの『統合失調症の有為転変』(2013・みすず書房)を再読しました。

 前に読んだのは2013年秋ですから4年ぶりです(当時のブログもありますので、拙いものですが、よかったら読んでみてください)。

 いい本なので早めに再読をしようと思っていましたが、4年たってしまいました(中井さん、ごめんなさい)。

 しかし、やはりいい本です。

 中井さんの統合失調症の患者さんへの優しさが本からあふれてくるような感じで、読んでいてこちらまで優しくなれるような気がします。

 4年で自分がどれだけ成長できたのかは心もとないのですが、こういういい本を見つけて読むのも、一応、才能かもしれません。

 本の中身は、やはり中井さんの精神科診療のさまざまな工夫、丁寧な考察、そして、優しい祈りでしょうか。

 そうなんです。中井さんは患者さんに薬を出す時に、どうか効きますように、と祈るらしいです。

 すごいお医者さんです。

 あとは前回も書きましたが、絵画療法についての報告と考察。細やかでいい論文が並んでいます。

 この4年の間に、中井さんの『精神科医がものを書くとき』(2009)、『隣の病い』(2010)、『世に棲む患者』(2011、いずれも、ちくま学芸文庫)などなどを読ませていただきました(そのうちのいくつかはブログにご紹介させていただきました)。

 そんなわけで、中井さんのご本からはずいぶんと勉強をさせてもらっています。

 中井さんはいつもそうですが、実践第一で、ご自身が経験したことを丁寧に細やかに書いてくださるので、本当にとても参考になりますし、そこからまた自分の考えを深めていくことができるような気がします。

 そういう本が本当にいい本なのだろうと思います。

 今後、さらに経験を積み重ねて、考えと実践を深めたいと思います。    (2017 記)

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 2022年5月の追記です

 じーじも、カウンセリングが、効きますように、効きますように、ってお祈りしようっと。          (2022.5 記)

 

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中井久夫『統合失調症の有為転変』2013・みすず書房-その1・ていねいな精神科臨床に学ぶ

2024年05月22日 | 中井久夫さんを読む

 2013年のブログです

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 6月~8月にかけて放送大学大学院臨床心理プログラムの病院実習で精神科病院におじゃましました。

 統合失調症の患者さんと接するなかで,いろいろなことを考え,学ばせていただきました。

 実習中は本を読む余裕がなかったのですが,実習が終わってから中井久夫さんの『精神科医がものを書くとき』(2009),『隣の病い』(2010),『世に棲む患者』(2011,いずれも,ちくま学芸文庫)などを読んで,実習中のじーじの疑問などがすでに中井さんによって丁寧に説明されていることがわかりました。

 実習前に読んでおけばよかったと後悔の毎日です。

 そんな中井さんの『統合失調症の有為転変』を読みました。

 中井さんのご本はいつもそうですが,この本も実践第一の本です。

 絵画療法など,じーじにとってもとても興味深い文章も載っています。

 中でも圧巻なのは中井さんと土居健郎さん,神田橋條治さんの鼎談です。

 何と豪華な顔合わせと思いましたが,読んでみると本当にすばらしい内容でした。

 1990年の文章ですが,今でも全く古くありません。

 雑誌『みすず』に載った文章らしいのですが,それをこれまで全く知らなかった自分が何と迂闊なことかと反省をしました。

 でも,今,読むことができて幸せでした。

 明日からまた少し元気に頑張れそうです。     (2013.11 記)

 

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中井久夫『世に棲む患者』2011・ちくま学芸文庫-ていねいな精神科治療に学ぶ

2024年05月20日 | 中井久夫さんを読む

 たぶん2014年ころのブログです

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 中井久夫さんの『世に棲む患者』(2011・ちくま学芸文庫)を再読しました。

 中井さんはじーじがもっとも尊敬と信頼をする精神科医のお一人。

 一度だけ研究会で講演をお聞きしたことがありますが、流行のパワーポイントを使わずに、黒板に板書をしてお話をされたのが、新鮮な記憶として残っています。

 本書を読むのは、単行本だった『病者と社会-中井久夫著作集第5巻』(1991・岩崎学術出版社)の時も含めると4~5回目だと思うのですが、今回も勉強になりました。

 中井さんは統合失調症の治療で有名で、また、風景構成法などでは世界的に高名な精神科医ですが、その文章はまったく偉ぶったところがなく、やさしい語り口で、しかし、その内容は深く、広く、目配りの行き届いた文章です。

 中井さんの精神科治療もおそらくは同じようにやさしくて、配慮の行き届いた治療なのだろうと想像させられます。

 今回は、統合失調症だけでなく、境界例や強迫症などにも言及をされていて、とても勉強になりました。

 特に、あらためて驚いたのは、二人の家裁調査官の先輩の研究に言及されているところ。

 一人は(名前は明記されていませんが、内容から想像をすると)以前にも紹介をしたことのある山野保さん。

(おそらくは)山野さんの『「未練」の心理-男女の別れと日本的心性』(1987・創元社)などを中心に未練や境界性人格障害について触れています。

 そういえば、じーじが裁判所に入った時に、配属された家事事件の部屋で、山野さんを中心としたメンバーが未練や嫉妬について勉強をされていて、よくそんな話題が部屋の中で話されていたことを思い出します。

 もうお一人は佐竹洋人さん。

 佐竹さんとも一緒に仕事をさせていただいたことがありますが、佐竹さんと中井さんは佐竹・中井共編『意地の心理』(1987・創元社)というとてもいい本を出されていて、この本を読むと、未練と意地の関係について考えさせられるところが多いです。

 しかし、当時、まだまだ若造にすぎなかったじーじは、まだあまりこれらの研究のすごさが実感できない新米で、ずいぶんもったいないことをしたなと反省をしています。

 その後、仕事の中で、うらみの重要性や困難さなどを経験して、いかにこのような研究が重要であったかを、今頃になって実感しています。

 今からでも、もっともっと勉強をしていかなければなりません。     (2014?記)

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 2021年12月の追記です

 中井さんらが指摘をされた、甘え、うらみ、未練、意地、などの言葉は、その後、土居健郎さんの本などをさらに読みこむことで、じーじの臨床でも大切な言葉になっています。

 奥が深い世界なので、さらに勉強をしていこうと思います。     (2021.12 記)

 

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中井久夫『精神科治療の覚書』1982・日本評論社-中井さんの名著に細やかさやていねいさを学ぶ

2024年04月03日 | 中井久夫さんを読む

 2024年4月のブログです

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 中井久夫さんの『精神科治療の覚書』(1982・日本評論社)をかなり久しぶりに読む。

 中井さんの名著なのに、再読がすっかり遅くなった。反省。

 中井さんが日々の精神科治療で経験されたことをすごく細やかに、ていねいに記されていて、勉強になる。

 真摯な精神科医はこんなにもいろいろなことを考えて治療をされているのか、と本当に感心させられる。

 それでいて、そこから患者さん中心の精神医学が立ち上がってくるさまが見えてくるようですごい。

 例は違うかもしれないが、松田道夫さんの『育児の百科』を思い出す。

 松田さんも、子どもの症状をていねいに細やかに記して、そこから親ごさんが安心できるような情報を導き出すが、そこがそっくりな印象を受ける。

 患者さんや家族を大切にする大家は分野が違っても、同じような作業をされているのかもしれないなあ、と思ったりする。

 もう一つびっくりしたのが(一回読んでいて、今ごろ、びっくりした、もないが…)、この本で中井さんがすでに「ハムレットの原理」に触れている点。

 患者さんの話を「聴く」ということは、その訴えに関して、中立的な「開かれた」態度を維持すること、「開かれた」ということはハムレットがホレイショにいうせりふ「天と地の間には…どんなことでもありうる」という態度、と述べられていて、19世紀のある治療者(誰かな?)が「ハムレットの原理」と名づけている、と紹介されている。

 この「ハムレットの原理」を中井さんは患者さんに「ホレイショの原則」と呼んでいたらしいし、じーじの考えではこれはわからないことにすぐに結論を出さずに耐えて考え続けることでもあると思う。

 今頃、中井さんの先見の明に触れられて、お粗末なじーじだが、勉強の楽しさを十分に味わえた1か月であった。      (2024.4 記)

 

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