2019年のブログです
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武田専さんの『分裂病という名の幻想』(2003・元就出版社)を再読しました。
武田さんは慶応大学医学部出身。
後輩だった小此木啓吾さんの紹介で、日本の精神分析の先達である古沢平作さんから指導を受けました。
今では精神分析の大家である西園昌久さんらと同期で、日本の精神分析を切り開いたかた。
精神分析的な治療を行なう武田病院を創設されています。
本書はその武田さんの回想録ですが、武田さんもかなり「熱い」(!)人です(武田さん、ごめんなさい)。
やはりすごい人というのは、情熱的でなければ、その道を究めることが難しいのかもしれません。
それだけに、読んでいて面白いですし、痛快。
気持ちが晴れ晴れとしてきます。
一方、統合失調症の患者さんや家族に向ける愛情はとても温かく、ていねいです。
統合失調症の患者さんだけでなく、たくさんの症例の患者さんが紹介されますが、いずれの患者さんへの治療もていねいで、こころがこもっています。すごいな、と思います。
「熱い」人は、弱い立場の人には優しいのだ、と思います。
びっくりしたのは、武田さんも、眼はそれを探し求めるもの以外は見ることはできない、という言葉を引いていること。
精神分析や精神療法における大切な点のようです。
もっとも、世の中のこと、すべてに通じる言葉かもしれません。
「熱さ」と冷静さ、武田さんの魅力が爆発しているかのような、楽しくて、感動的な本です。 (2019. 10 記)