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村上春樹『色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年』2015・文春文庫-村上版『悪霊』かな?

2023年11月21日 | 村上春樹を読む

 2015年のブログです

     *  

 村上春樹さんの『色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年』(2015・文春文庫)を読みました。

 単行本が出た2013年4月に一度読んでいますので、久しぶりの再読です。

 記憶力の悪さに加え、老化現象もあって、あらすじはかなり忘れてしまっており、ほとんど新作のように(!)、ハラハラ、ドキドキしながら、読みました。

 そして、とても感動しました(一作で二度、三度と楽しめるところが、じーじの特権です)。

 前回もいいお話だなと思ったことは記憶していたのですが、こんなにすごい話だったことはすっかり忘れていました(?)。

 なかでもラストがすばらしいです。

 決してハッピーエンドではないのですが…(詳しいことは書けません。ぜひご自分で買って読んでみてください)。

 人間の明るさと暗さ、意識と無意識、希望と絶望、苦悩と諦観などが丁寧に描かれています。

 「悪霊」という言葉も出てきました。

 この小説はドストエフスキーならぬ村上春樹版の『悪霊』なのかもしれません。

 また一つ、村上さんの小説が深くなったようにも思います。

 力のある、誠実な小説家と、同じ時代を生き、同じ時代に、一緒に考えながら、行動をしていることに、感謝したいなと思いました。  (2015 記)

     *

 2019年夏の追記です

 4年ぶりに再読をしました。

 このところ、村上さんの小説をずっと読み返しているのですが、いずれの小説も面白しですし、何度読んでも感動します。

 本書も例外ではありませんでした。

 テーマのひとつは、人間のこころの弱さや不可解さ、そして、生きる哀しさでしょうか。

 理不尽な攻撃とその裏に秘められた思惑、事情、願い、などなど。

 年を取って、いろいろな人生を見てきたせいか、特に、人の弱さがこころにしみて、反省をすることも多いです。

 だからこそ、弱い人間、ずるい人間、悪い人間の気持ちも多少は理解できるようになってきたのかもしれません。

 しかし、許せないものは許せません。特に、子どもを守れないおとなは…。

 事情はわかっても、責任は取らざるをえないのでしょう。じーじも含めて…。

 逃げずに、生きてゆきたい、そう思います。 (2019.7 記)

     *

 2020年10月の追記です

 岩宮恵子さんの『増補・思春期をめぐる冒険-心理療法と村上春樹の世界』(2016・創元こころ文庫)に本書についての論文が載っています。

 やはり思春期に焦点を当てて分析をしていて、なかなか刺激的です。 (2020.10 記)

 


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