ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングやメールカウンセリングなどをやっています

沢木耕太郎『旅する力-深夜特急ノート』2008・新潮社-『深夜特急』の魅力

2024年12月23日 | 沢木耕太郎さんを読む

 2018年のブログです

     *   

 沢木耕太郎さんの『旅する力-深夜特急ノート』(2008・新潮社)を再読しました。

 2008年の本ですから、ちょうど10年ぶりです(いい本なのに、沢木さん、ごめんなさい)。

 このところ、沢木さんの『深夜特急』を読んできたのですが、先日、本棚を眺めていると、下のほうの段にこの本を見つけてしまいました。

 こういう偶然があるから読書はやめられません(といっても、単に整理整頓が苦手なだけなのですが…。今も沢木さんの本はあちこちの本棚に潜んでいて(?)、時々探している始末です)。

 本書は、沢木さんの旅の記憶や体験、文章を書くことの経験やそれについて考えること、そして、『深夜特急』に繋がる旅とその文章化について、などなどが述べられていて、とても刺激的で、面白く読めます。

 テレビの大沢たかおさん主演の『深夜特急』についても書かれていて、興味深いものもあります。

 ひとつ、発見をしたのは、『深夜特急』において、沢木さんが写真を載せていない点。

 沢木さんは、写真でなく、文章で勝負をしたかった、と書きます。

 ここは、じーじのブログと全く同じです(?)(じーじの場合は、単にカメラがないというだけなのですが…)。

 表現力に大きな差がありますが、文章の力を信じている点だけは同じなのかもしれません(ちょっとおおげさですかね?)。

 しかし、じーじが、『深夜特急』以外にも、沢木さんのエッセイを好んで読んでいる理由は、この辺にもあるのかもしれません。

 学ぶことも多くあります。

 あまり意識はしていませんでしたが、家裁調査官時代にも実はこっそり文章を真似していたかもしれません(?)。

 その割に、お粗末な文章ばかり書いていますが…。

 これからも、沢木さんを見習って、じーじのひとり旅や孫娘シリーズをせっせと書いていきたい(?)と思っています。               (2018. 12 記)

 

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沢木耕太郎『深夜特急1-香港・マカオ』1994・新潮文庫-ひとり旅を読む

2024年12月21日 | 沢木耕太郎さんを読む

 2018年のブログです

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 沢木耕太郎さんの『深夜特急1-香港・マカオ』(1994・新潮文庫)を再読しました。

 ようやく全6巻読破です。パチパチパチ(?)。

 それも年末の大掃除前にできてしまいました。エッヘン(!)。

 行方不明の第1巻を大掃除の時に見つけようという計画(?)だったのですが、なぜか、先日、本屋さんで文庫本の棚を眺めていたところ、奇跡的に『深夜特急』の第1巻を見つけてしまったのです。

 値段も比較的安かったので(なんと490円です)、清水の舞台から飛び降りる覚悟で(ちょっと大げさですか)、大掃除の前に買ってしまいました(これはうちの奥さんには内緒です)。

 さっそく読んでみると、後の巻に比べて、文章がなんとなく初々しく、旅の出発にふさわしい印象を受けました。

 紀行文というのは、書いているうちに、少しずつ文章が変わってくるのかもしれません(おそらく、書き手の人間も変わっていくのでしょうね)。

 沢木さんの場合は、旅をした年齢のせいもあって、なんとなく大人になっていく青年を見ているような感じになります。

 しかも第1巻、最初はインドのデリーから書き始められています。

 デリーのお話から、そして、香港とマカオでのお話になるという展開で、旅のお話というのは、必ずしも時系列的でなくてもいいのかもしれません(これはじーじのでたらめな読み方の弁解をしているだけかもしれませんが…)。

 旅の思い出は螺旋的に出てきたり、その間にいろいろなお話が挟まったり、昔の思い出が語られたりして、重層的に豊かに語られるほどいいのかもしれません。

 じーじが買った第1巻は2018年8月20日発行の61刷。

 今でも読まれているのですね。

 沢木さんの『深夜特急』は、若者の自由な貧乏旅ですが、若い人たちにはもちろん、中年や老年のようなこころの旅が必要な人たちにも大切な本ではないかと思います。

 年末年始にゆっくりと味わうことをおすすめします。        (2018. 12 記)
 
     *

 2024年12月の追記です

 6年前の感想文です。

 沢木さんは今も素敵で、ダンディーですね。

 何が違うんだろう?

 うらやましいです!         (2024.12 記)

 

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沢木耕太郎『イルカと墜落』2009・文春文庫-沢木さんのアマゾン河奥地紀行を読む

2024年12月11日 | 沢木耕太郎さんを読む

 2018年のブログです

     *   

 先日、テレビを見ていたら、なんと沢木さんが出てきました。

 アマゾン河の奥地に住む未接触人種の調査に行くというドキュメンタリーの再放送でしたが、テレビで見る沢木さんもなかなかかっこよかったです。

 そんな折、たまたま本棚を眺めていたところ、本書を見つけてしまいました(こういうことがあるので、じーじはユングさんが好きです)。

 墜落?、と思って、背表紙を読んでみると、沢木さんの乗った飛行機がアマゾン河奥地で墜落をしたらしいのです(再読なのに、その記憶が全然戻ってこないのが、我ながら、すごい!(?)と思ってしまいましたが…)。

 というような次第で、沢木さんのアマゾン河大冒険を読みました。

 イルカ、はアマゾン河で出合います。

 それも、ピンクのイルカで、沢木さんには相当印象深かったようです。

 船旅での現地の人々との交流に描かれる沢木さんは、『深夜特急』の時と同じで、自然体でユーモラスで、読んでいて心地よいです。

 そして、いよいよ飛行機に搭乗。

 おんぼろセスナ機に乗って、窓の外を眺めていると、なんと燃料が漏れ出し、だんだんと高度が下がり、機長が、荷物を捨てろ、と叫びます。

 沢木さんは偉そうにしていた機長のカバンを真っ先に外に投げて、沢木さんらしい(?)ところを見せます。

 と、なぜか、ここでじーじの記憶が戻ってきて、確かに、この部分だけは、読んだ記憶が…。

 記憶って不思議だな、と思いました。

 飛行機は結局、農地に墜落をするのですが、乗っていた人はみなさん、多少の怪我だけで済むという奇跡。

 機長が沢木さんに、俺のカバンを知らないか、と聞きますが、沢木さんは知らないふり。

 沢木さんらしさが爆発です(ここもなぜか記憶に残っていて、じーじはこういうお話が大好きなのかもしれません)。

 墜落の様子を沢木さんは克明にリポートして、さすがは名ルポライターと感心させられます。

 解説によれば、翌年、さらに調査を続行し、その時の未接触人種との遭遇がテレビ番組のメインになったようで、それをじーじは見たようです。

 未接触人種の二人が、最初は警戒しながらも、最後に沢木さんを招くシーンは印象的でした。

 いいテレビ番組といい本に出合えたことに感謝したいと思います。        (2018. 12 記)

 

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沢木耕太郎『246』2014・新潮文庫-2歳の娘さんへのお話とおとなへのお話たち

2024年12月09日 | 沢木耕太郎さんを読む

 2018年のブログです

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 沢木耕太郎さんの『246』(2014・新潮文庫)を再読しました。

 以前読んだ時に、いい本だな、と思った記憶があったのですが、今回、読んでみると、すごく面白くて、そして、いい本でした。

 すごく面白い理由の一つは、沢木さんが当時2歳の娘さんが寝る前にしてあげるお話のせい。

 読んでいて、とてもほのぼのします。

 ここでは沢木さんは童話作家(?)。

 ノンフィクション作家としてより才能があるかもしれません(冗談です。沢木さん、ごめんなさい)。

 本書は、1986年1月から9月までの沢木さんの日記風エッセイ。

 1986年というのは、沢木さんの『深夜特急』が出た年で、そのことがまず書かれています。

 ちなみに、246、とは国道246号線のことで、当時、沢木さんの仕事場があった場所だそうです。

 沢木さんが、自宅から仕事場に行こうとすると、娘さんが、いかないで、と言って、沢木さんが仕事を休んでしまうシーンもあり、微笑ましいです。

 とっても面白いお話、興味深いお話、真面目に考えさせられるお話と、結構厚めの文庫本は中身が充実していますが、じーじが個人的に面白かったのは、みつばち農家を取材したお話。

 福音館書店の『たくさんのふしぎ』という本に『ハチヤさんの旅』(のちに1987年5月号として掲載)というお話を書く仕事の取材で、みつばち農家に同行するのですが、ある時、小さな女の子がいる農家さんのご希望で沢木さんの2歳の娘さんも一緒に行くというできごとがあり、案の定、とんでもないドタバタ劇になってしまいます。

 しかし、それもある程度想定をしての父子での取材旅(?)は、とっても楽しいお話でした。

 そして、そこで取材がかち合ったテレビ局クルーの過剰演出をさらりと批判する沢木さんもなかなか素敵です。

 いろんなことを考えさせられ、また、楽しくなれる、いい本です。        (2018. 12記)

 

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沢木耕太郎『深夜特急2-マレー半島・シンガポール』1994・新潮文庫-ひとり旅を読む

2024年12月07日 | 沢木耕太郎さんを読む

 2018年のブログです

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 沢木耕太郎さんの『深夜特急2-マレー半島・シンガポール』(1994・新潮文庫)を再読しました。

 これまでに書いてきたようないきさつで、なぜかジグザグに出発点に遡るような形で読んでいますが、じーじの場合、これもまたいいのでしょう(?)。

 この巻では、海外へのひとり旅に出ることになったいきさつやその前の大企業に就職が決まっていたのに一日でやめてしまったエピソードなどが語られ、沢木さんの破天荒ぶりにびっくりしますし、なるほどそういうことだったのか、と改めて了解ができるようなことが書かれてます。

 旅の仕方も後の巻に比べるとまだまだ初々しいですし(?)、ニュージーランドから来た同じような若者たちを先輩づらをする沢木さんも初々しく感じます。

 意識してそう書いているわけではないのでしょうが、そういうことがわかるって、文章の面白いところでしょうし、人生にも通じることなのかもしれません。

 そして、沢木さんの魅力は、へんな偏見がないところでしょうか。

 娼婦のいるホテルに長逗留をして、娼婦だけでなく、そのヒモさんたちとも友達になったり、食べ物は現地の人たちが食べるものが一番おいしいと言ったり、構えずに庶民的です。

 なかなかできることではありませんが、理想です。

 なお、今回の巻末対談のゲストは、なんと、高倉健さん。

 沢木さんがモハメド・アリの試合のチケットを高倉さんから譲ってもらい、そのレポートを高倉健さんに手紙で書いて送って以来の仲だそうですが、健さんが本当に信頼して、気を許している様子が窺えて、ほほえましいです。

 そして、お二人がお好きな国がポルトガル。

 やはり、ポルトガルはいい国のようです。

 じいじいのじーじでも、チャンスがあれば行ってみたくなりました。

 さて、残るは第1巻。

 年末の大掃除で見つかるといいのですが…。

 かなりの恥ずかしがり屋さんのようで(?)、上手にかくれんぼうをしていますので、どうなりますやら…。         (2018. 11 記)

 

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沢木耕太郎『深夜特急3-インド・ネパール』1994・新潮文庫-ひとり旅を読む

2024年12月02日 | 沢木耕太郎さんを読む

 2018年のブログです

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 沢木耕太郎さんの『深夜特急3-インド・ネパール』(1994・新潮文庫)を再読しました。

 先日、ロンドンに着いた第6巻を読んだ後、次はどこに行こうか(?)どっちを読もうか、と迷いましたが、結局、第3巻の本書を読むことにしました。

 沢木さんのインドの旅は、忘れっぽいじーじでも、なんか悲惨な印象が薄っすらと残っていて、やや敬遠していたのですが、ネパールの旅に興味があって読んでしまいました。

 読んでみると、やっぱりインドの旅はかなり悲惨で、しかし、それを冷静に描写する沢木さんのすごさを感じました。

 インドの悲惨さの中で、唯一、希望が感じられたのが、アシュラムという孤児院の存在。

 日本からボランティアで来ていた大学生らとのインドの子どもたち相手の生活は、その地の自然の美しさとともに印象深いものでした。

 希望を失い、無感動になっている子どもたちが、だんだんと子どもらしくなる姿は感動的です。

 特に、小さな女の子が、小さな髪飾りを見て、生き生きとして感情を取り戻していくさまは素晴らしいものがありました。

 おとなが逆に子どもに、大切なものを教えられるところがすごいですし、それを文章にできる沢木さんの感受性がすばらしいと思いました。

 一方、ネパールは予想どおり、日本に似て、インドに比べると温和な土地のようですが、あまり大きなできごとはなく、通過します。

 そして、再度のインド、やはり強烈です。

 しかし、病気で倒れ、宿がなく、やむなく安宿の女性用の部屋で寝ていた時のできごとは美しいです。

 沢木さんを心配したフランス女性が静かに眠るために向こうのベッドで洋服を脱ぐ場面は、映画を観るように美しい描写で、じーじでもその想像の美しさに息をのんでしまいました。

 旅はやはりハプニングがあるから面白いですよね(もっとも、じーじのひとり旅では、財布を落とすような事件はあっても、美しい女性との思い出などはまったく起こりませんが…)。

 また、旅に出たくなりました。

 その前に、第2巻を読まねばなりません。

 そして、行方不明の第1巻を探さねばなりません。

 年を取っても、結構忙しいじーじの毎日です。        (2018.11 記)

 

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沢木耕太郎『深夜特急6-南ヨーロッパ・ロンドン』1994・新潮文庫-ひとり旅を読む

2024年11月23日 | 沢木耕太郎さんを読む

 2018年のブログです

     *    

 沢木耕太郎さんの『深夜特急6-南ヨーロッパ・ロンドン』(1994・新潮文庫)を再読しました。

 とうとうゴール!といいたいところですが、なぜか、5、4、6巻と読んでしまいました。

 次は3巻を読むか、2巻を読むか、まだ決まっていませんし、1巻に至っては本棚の中で行方不明になっていて、お正月までに見つかるかどうかもわからない始末です。

 なんででしょう?

 昔から、おかずはおいしいものを最後に食べるタイプなんですが、本は面白そうなものからつい読んでしまうタイプなのです、エヘン(?)。

 もっとも、じーじのひとり旅も最近はそんな感じで、計画性も何もなく、行きたいところから行く、という感じになっていますね、ハイ。

 ということで、沢木さんの南ヨーロッパ、イタリア、スペイン、ポルトガルとロンドンの旅。

 だんだん都会が多くなって、自然が大好きなじーじには少し物足りないのですが、ポルトガルはすごく面白いです。

 人々に人情味がありますし、風景や食べ物も日本に近い印象を受けます。

 このことは、先日読んだ司馬遼太郎さんの『街道をゆく-南蛮のみち』でも同じような印象を受けました。

 ユーラシア大陸の東端と西端、何か関係があるのかもしれません。

 さて、ゴールはロンドン、と思いきや、沢木さんはさらにバスチケットを買います。

 どこを目指すかは、読んでからのお楽しみ。

 なお、巻末のゲスト対談は、なんと井上陽水さん。

 ひとり旅が好きだという井上さんとすごく面白い対談が展開します。

 こちらも一冊の本にできるくらいの分量で、読み応えがあります。

 できれば、年末年始にみかんを食べながら読みたかった、というのが、贅沢な反省です。

 明日からは、2巻のマレーシアでしょうか、3巻のインド・ネパールでしょうか。

 それは明日になってみないとじーじにもわかりません。         (2018.11 記)

 

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沢木耕太郎『深夜特急4-シルクロード』1994・新潮文庫-ひとり旅を読む

2024年11月20日 | 沢木耕太郎さんを読む

 2018年のブログです

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 沢木耕太郎さんの『深夜特急4-シルクロード』(1994・新潮文庫)を再読しました。

 予定では年末年始にかけて、ゆっくりと読むつもりだったのですが、なんせ老人なので、年末まで待てず、せっかちに、また読んでしまいました。

 若い時は、年を取ったら、のんびり、ゆったりと生きたい、と思っていたのですが、なぜかどんどんせっかちになってきて、困っています。 

 しかも、今回は『深夜特急4-シルクロード』。

 なぜか、じーじの旅は遡っていきます(?)。

 まあ、これも、老人のなせるわざ。

 老人は順番なんかにこだわらずに(?)、自由自在に面白そうなものから手をつけてしまうのです(先が短いですからね)。

 というのは半分冗談で、実は、次にどれを読もうかな、と本棚の『深夜特急』を眺めていたら、シルクロード、という文字に魅かれてしまい、読むことにしました。

 シルクロードという言葉は魅力的ですし、じーじの頭の中には、なぜかイスラムの美人ちゃんが踊りを踊っている光景(!)が浮かんでしまったのです。

 ということで、本書、沢木さんのパキスタン、アフガニスタン、イランの旅です。

 一番驚いたのは、当時(1970年代)のアフガニスタンの豊かさ。

 今、ニュースで見るアフガニスタンからは想像もできないくらい国土も人々も豊かです。

 戦争がいかに国土を荒廃させ、人々を苦しめるか、一目瞭然です。

 戦争は絶対によくありません。

 沢木さんは豊かな当時のアフガニスタンを堪能しています。

 また、イランでの時計商人との値段の駆け引きもとても面白く読めます。

 そして、じーじが一番印象的だったのは、イランの安宿で病気で伏しているイギリス人青年。

 最初は沢木さんの差し出すブドウを拒否しますが、徐々に打ち解けます。

 そして、沢木さんが出発をする日、イギリス人青年も、一緒に行こうかな、とまで言いますが、沢木さんは聞こえなかったふりをして出発します。

 それがひとり旅のルールだったにせよ、沢木さんの心中は複雑です。

 そして、つぶやきます。

 どうせ置き去りにするなら、初めから何もしてやらなければいい、と。

 ここは文学だと思いました。

 カウンセリングでも、最後まで付き合えないのなら、最初から引き受けるな、というルールがあります。     

 親切は、そして、人生は、本当に厳しいものだと思います。         (2018.11 記)

 

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沢木耕太郎『深夜特急5-トルコ・ギリシャ・地中海』1994・新潮文庫-ひとり旅を読む

2024年11月16日 | 沢木耕太郎さんを読む

 2018年のブログです

     *     

 またまた本棚の隅に懐かしい本を見つけました。 

 沢木耕太郎『深夜特急』。

 本の帯に、大沢たかおさん主演のテレビ版『深夜特急97』の宣伝文がありますので、読んだのは1997年のようです。

 ようです、というのは、例のごとく、ほとんど記憶がないわけなのです。

 それでも、1~4巻の部分はところどころ、かすかに記憶があったり、読んでみると思い出すところもあったりしたのですが、この5巻のトルコとギリシャのところは全くといっていいほど記憶がなく、まるで新刊本を読むような感じで読んでしまいました。

 1997年、じーじが40代前半の頃、たしかに体調が悪くて、やや人生の危機的状況ではあったのですが、こんなに記憶がなくなるものなのでしょうかね?

 そういえば、同じ頃に読んだ吉本ばななさんの『キッチン』もほとんど記憶が飛んでいましたので、この頃は本当に大変だったのかもしれません。

 さて、本書、沢木さんらしく、ユーモアとガッツでかなりタフな旅をを進めています。

 トルコについては、以前、村上春樹さんの『雨天炎天』を読んでいて、なんとなく怖い国というイメージがありました。

 もっとも、村上さんの場合はトルコの兵隊さんとのやりとりが多かったせいかもしれず、一方、沢木さんはトルコの普通の人々との交流が多く、人懐っこいトルコの人々の姿が描かれています。

 ものごとというのはやはり一方向から見るだけでは不十分なようで、全体像を把握するためには多方向から見てみることが大切なんだな、と改めて考えさせられます。

 トルコもギリシャも、現地の人々と沢木さんの交流は素敵なお話が多く、楽しく読めます。

 沢木さんの風景描写や美術の描写も本書の魅力のひとつで、その文章力にはほれぼれします。

 あっという間に読み終わってしまいました。

 いい読後感で、続きを読みたくなりましたし、さらには、4巻のシルクロード編もじっくりと読み直してみたくなりました。

 年末年始は沢木さんの『深夜特急』シリーズを読んで過ごすことになるかもしれません。       (2018. 11 記)

 

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沢木耕太郎『勉強はそれからだ-象が空をⅢ』2000・文春文庫-知らないということを知っていること

2024年06月28日 | 沢木耕太郎さんを読む

 2019年のブログです

     *

 このところ、沢木耕太郎さんにはまっていて、本棚を眺めていたら、『勉強はそれからだ-象が空をⅢ』(2000・文春文庫)が目につきましたので、再読しました。

 最近は、作家さんの執筆の順番などは無視して、見つけた順に読んでしまうことが多いのですが、一応、再読なので(といっても、記憶がなくなっているのですが)、それで勘弁してもらっています。

 しかし、それはそれで、また面白味があって、今の興味と年齢と経験が混然一体となって(?)、なかなかスリリングな読書ができる気もしています。

 さて、本書、例によって、今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、知らないことを知っていることの大切さ。

 なんだか、ソクラテスの言葉みたいですが、沢木さんはこのことを何度も強調しています。

 へんに知っているつもりになると、知ることへの意欲が減じてしまい、仕事や生きることが中途半端になることを心配されます。

 そして、知らないということを知っていると、語ることに慎重になる、といいます。

 テレビなどで、薄っぺらな言葉が氾濫している現状を見ると、貴重な意見だと思います。

 さらに、知ることで、驚き、喜び、打ちのめされ、感動する、というこころの柔らかさを持っていることが大事、といいます。

 知ることが生きる喜びや生きる充実感になることが理想なのだろうと思います。

 二つめは、ガルシア・マルケスの言葉を引用しているところ。

 「たとえば、象が空を飛んでいるといっても、ひとは信じてくれないだろう。しかし、4257頭の象が空を飛んでいるといえば、信じてもらえるかもしれない」

 言葉の重みをこう述べます。

 意味深長ですが、我流の解釈では、文章は漠然としたものではなく、ていねいでこまやかな文章が人を動かす、ということかな、と思ったりします。

 いい本を再読できたと思います。     (2019.9 記)

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 2023年秋の追記です

 知らないことを知っていることの大切さ、という言葉は、わからないことに耐えることの大切さ、に通じるような気がしますね。

 そのあとの、知らないということを知っていると、語ることに慎重になる、という言葉もすごいです。

 白か黒か、右か左か、と、短絡的、ヒステリー的に決めつけないで、ずっと考え続けることの重要性を教えてくれるようです。     (2023.9 記)

 

 

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沢木耕太郎『バーボン・ストリート』1989・新潮文庫-今も色あせない素敵なエッセイたち

2024年06月19日 | 沢木耕太郎さんを読む

 2019年のブログです

     *

 本棚を眺めていたら、懐かしい本を見つけました。

 沢木耕太郎『バーボン・ストリート』(1989・新潮文庫)。

 じーじが30代の頃、沢木さんも若い時の本です。

 講談社エッセイ賞受賞とあります。

 どのエッセイも面白いのですが、今回、特に印象に残ったエッセイを一つ、二つ。

 一つは、北海道日高のコテージで高倉健さんらと語らうエッセイ。

 モハメド・アリさんの貴重な試合のチケットを健さんが沢木さんに譲ったというエピソードなど、健さんの男気のある行動が明かされます。

 健さんがアイヌの人から教えてもらったという、木を見て、方角を知る方法も興味深いです。

 もう一つは、沢木さんが若い時にお世話になっていたという古本屋さんのお話。

 お金のない沢木さんが欲しい本を取りのけておいてもらったというエピソードは、人のよい古本屋さんの人柄を表します。

 もっともっとご主人とお話をしていればよかった、という沢木さんのお気持ちが伝わってきます。

 なお、解説は山口瞳さん。

 じーじは学生時代から山口さんの小説が大好きでしたが、山口さんの描く沢木さんのエピソードは面白くて、かつ、温かくて、後輩想いの山口さんの面目躍如です。

 いい本を久しぶりに読めて幸せでした。      (2019.9 記)

 

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沢木耕太郎『旅のつばくろ』2020・新潮社-沢木さんが日本を旅する

2024年05月13日 | 沢木耕太郎さんを読む

 2020年5月のブログです

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 沢木耕太郎さんの『旅のつばくろ』(2020・新潮社)を読みました。

 沢木さんの新刊です(えっへん!すごいでしょ)。

 本書はJR東日本の車内誌「トランヴェール」に連載されたエッセイをまとめたもの。

 おもしろいです。

 老人になった(?)沢木さん(沢木さん、ごめんなさい。でも、沢木さんはじーじより7歳年上なのです)の、しかし、気持ちの若々しさがうらやましいです(何がちがうんだろ?)。

 旅は、沢木さんの高校時代の東北貧乏旅の思い出から始まって、東北、北陸の旅や思い出話などが綴られますが、沢木ファンには懐かしいお話も出てきます。

 例えば、エッセイ集『246』(たぶん?)に出てきたハチヤさん(養蜂家)のお話や、別のエッセイでの高倉健さんのお話、『深夜特急』でのお話などなど。

 また、作家吉村昭さんとの仙台でのお話もこころ温まります。

 そうそう、青森の三内丸山遺跡の話も出てきます。

 入場料が無料と書かれていて、あれ?じーじが行った時はたしか340円(?)だっだよな、と思って読んでいくと、最後に、念のために調べてみると、入場料は2019年4月以降、有料になっていました、残念、とあって、沢木さんの几帳面さがここでもうかがえます。

 やはり、まじめな方なんだなと、改めて感心させられました(このへんがじーじとはだいぶちがいます)。

 本書を読んでいると、ゆっくりと時が流れる感じにひたれます。

 いい本を読めて、幸せです。     (2020.5 記)

 

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