たぶん2015年ころのブログです
*
小倉清さんの『児童精神科ケース集-小倉清著作集別巻1』(2008・岩崎学術出版社)を再読しました。
この本もかなり久しぶりの再読になってしまいました。
いい本なのにもったいないというか、全くの勉強不足です。
内容は11の症例報告と1つの公開ケーススーパーヴィジョンなどですが、やはりいずれも相当に「熱い」です。
症例は多少の失敗も含めて、正直にていねいに検討がなされていて、とても参考になります。
いい治療者というのは、本当に正直に失敗を含めて報告し、検討をするのだな、と改めて尊敬をさせられます。
症例全体を読んで感じたのは、家族との関係がうまくいった症例で予後がいいな、ということ。
症例の病理の深さによって仕方がないことだと思うのですが、家族の抵抗に遭い、治療が困難になるケースが多いようです。
じーじも家庭裁判所で仕事をしている時に同じ印象を持ちましたが、病理の深い事例では家族との連携が難しく、事案の解決が困難になりやすい傾向があると思います。
しかし、家族も悩んでいたり、不安に陥っているのも事実であり、そういう家族をも含めた援助が大切になるのだろうなと思います。
一方、公開ケーススーパーヴィジョンもすばらしい内容です。
こららは、ケース提供者が小倉さんで、スーパーヴァイザーがなんと小此木啓吾さん。
1973年の精神分析学会での企画の報告です。
小此木さんはじーじも調査官研修所でお話を聞いたことがありますし、このブログでも何冊かの本を紹介させていただいていますが、この頃から切れのいいご指導をされていたようで、このスーパーヴィジョンでも、明確化の質問や質問の仕方、タイミングがみごとで参考になります。
小倉さんも正直な返答を返し、小此木さんと小倉さん、そして周りの方々も含めて、一つのケースがだんだんと解明される様子は読んでいて本当に感動的です。
正直で、ていねいな臨床家の見本を間近に見るようで、自分も心して臨床に臨んでいきたいなと思いました。 (2015?記)
*
2021年秋の追記です
正直、というのは、臨床家にとってすごく大切だって思います。
失敗を正直に報告することだけでなく、カウンセリングの中で自分がどんなことを感じているかとか、どういう気持ちになっているのかに正直でないと(それを言葉にするかどうかはまた難しい議論になるのですが)、カウンセリングがうまくいかないように思います。
奥が深い世界です。 (2021.9 記)