ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

小倉清『児童精神科ケース集-小倉清著作集別巻1』2008・岩崎学術出版社-正直さのちからに学ぶ

2024年09月28日 | 子どもの臨床に学ぶ

 たぶん2015年ころのブログです

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 小倉清さんの『児童精神科ケース集-小倉清著作集別巻1』(2008・岩崎学術出版社)を再読しました。

 この本もかなり久しぶりの再読になってしまいました。

 いい本なのにもったいないというか、全くの勉強不足です。

 内容は11の症例報告と1つの公開ケーススーパーヴィジョンなどですが、やはりいずれも相当に「熱い」です。

 症例は多少の失敗も含めて、正直にていねいに検討がなされていて、とても参考になります。

 いい治療者というのは、本当に正直に失敗を含めて報告し、検討をするのだな、と改めて尊敬をさせられます。

 症例全体を読んで感じたのは、家族との関係がうまくいった症例で予後がいいな、ということ。

 症例の病理の深さによって仕方がないことだと思うのですが、家族の抵抗に遭い、治療が困難になるケースが多いようです。

 じーじも家庭裁判所で仕事をしている時に同じ印象を持ちましたが、病理の深い事例では家族との連携が難しく、事案の解決が困難になりやすい傾向があると思います。

 しかし、家族も悩んでいたり、不安に陥っているのも事実であり、そういう家族をも含めた援助が大切になるのだろうなと思います。

 一方、公開ケーススーパーヴィジョンもすばらしい内容です。

 こららは、ケース提供者が小倉さんで、スーパーヴァイザーがなんと小此木啓吾さん。

 1973年の精神分析学会での企画の報告です。

 小此木さんはじーじも調査官研修所でお話を聞いたことがありますし、このブログでも何冊かの本を紹介させていただいていますが、この頃から切れのいいご指導をされていたようで、このスーパーヴィジョンでも、明確化の質問や質問の仕方、タイミングがみごとで参考になります。

 小倉さんも正直な返答を返し、小此木さんと小倉さん、そして周りの方々も含めて、一つのケースがだんだんと解明される様子は読んでいて本当に感動的です。

 正直で、ていねいな臨床家の見本を間近に見るようで、自分も心して臨床に臨んでいきたいなと思いました。       (2015?記)

     *

 2021年秋の追記です

 正直、というのは、臨床家にとってすごく大切だって思います。

 失敗を正直に報告することだけでなく、カウンセリングの中で自分がどんなことを感じているかとか、どういう気持ちになっているのかに正直でないと(それを言葉にするかどうかはまた難しい議論になるのですが)、カウンセリングがうまくいかないように思います。

 奥が深い世界です。     (2021.9 記)

 

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藤原伊織『テロリストのパラソル』1998・講談社文庫ー元東大全共闘のくたびれたアル中中年が小さな女の子のために走りまくる

2024年09月28日 | 小説を読む

 2023年7月のブログです

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 藤原伊織さんの『テロリストのパラソル』(1998・講談社文庫)を久しぶりに読む。

 1995年江戸川乱歩賞受賞作で、1996年の直木賞受賞作。

 東大全共闘で学生運動を闘った主人公が、今はアル中の中年バーテンダー。

 真昼の公園でウィスキーを楽しんでいたところ、偶然、爆弾事件に巻き込まれ、その直前に知り合った小さな女の子のために(?)、真相解明に走りまくる。

 いろんな登場人物が出てくるが、じーじには、主人公がただ小さな女の子のために走るまくる小説と読める。

 この小説については、特に、あらすじを書くのは「犯罪行為」(?)だと思うので、いつも以上に気をつけたい。

 描かれるのは、学生運動と個人、学生運動と恋愛、学生運動と暴力、暴力と警察・国家権力、やくざと警察、組織と個人、お金の魔力、人間の弱さ、などなど。

 それらが、主人公の飾らない生き方とともに、対比的にあぶりだされる。

 決してスマートではなく失敗だらけの中年男子。

 ただ、一本筋が通っているというか、頑固なところが魅力的だ。

 じーじの大好きな男性像。

 いい小説だ。

 途中から仲間になる、警察をくびになったやくざ屋さんの中年男子とともに、真相解明に走りまくる姿はまったくのハードボイルド小説だ。

 ハラハラ、ドキドキの連続で、小心者のじーじには少し心臓に悪い。

 しかし、とても良質で、後味のよい小説を楽しませてもらった。      (2023.7 記)

 

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