2020年8月のブログです
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またまた荻原浩さんを読んでしまいました。
短編集『月の上の観覧車』(2014・新潮文庫)。
思わず、うまいな!と思ってしまいます。
座布団三枚!です。
人生を半分くらい過ぎたおとなの小説、という感じ。
決して明るいだけの小説ではないのですが、しかし、かといって、暗いだけでもない。
明るさを見据えて生きようとしながらも、しかし、どうしようもないこともある、といったところ。
あえていえば、やはり、いつものくりかえしになってしまいますが、生きることの哀しみ、ということでしょうか。
人生には楽しいこともたくさんありますが、それと同じくらい哀しいこともある、いや、むしろ、哀しいことのほうが多いかもしれない。
そんな感じでしょうか。
八つの短編からなりますが、いずれもがセピア色の写真のような味わいがあります。
じーじが好きなのは、「レシピ」。
中年女性の回想ですが、ちょっとユーモアが効いて、読んでいて楽しくなります。いい小説です。
離れて暮らす娘との面会交流を描く、「チョコチップミントをダブルで」もいいです。
面会交流で張り切りすぎちゃうお父さんの姿は、家裁の面会交流の時を思い出します。
普通、のままが一番いいのですが…。
いろいろなことを考えさせられる、人生と家族を見つめる小説たちです。 (2020.8 記)