長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

うわさにたがわぬ伝説の一作!! ~映画『未来惑星ザルドス』~

2023年03月05日 14時36分34秒 | ふつうじゃない映画
映画『未来惑星ザルドス』(1974年2月 106分 アメリカ・アイルランド合作)

あらすじ
 2293年の未来。人類は不老不死の特権階級「エターナルズ=永遠人(Eternals)」と、寿命のある「ブルータルズ=獣人(Brutals)」に分かれ、エターナルズは「ボルテックス」という土地に住み、獣人は荒廃した土地でエターナルズのために食料を生産していた。二つの世界は見えないバリアによって隔離され、ザルドス(Zardoz)という名の、獣人達が神と崇める人の頭部を模した空飛ぶ石像のみが往来可能であり、ザルドスは穀物を受け取る代わりにブルータルズの中から選んだ「エクスターミネーターズ=撲滅戦士 (Exterminators) 」という殺し屋集団に武器を渡していた。エクスターミネーターズは、「銃は善なり、ペニスは悪なり」と宣するザルドスの命ずるまま好き放題に同族であるはずのブルータルズを撃ち殺し、その人口を減らしていた。
 あるとき、エクスターミネーターズのリーダー・ゼッドは、貢物の穀物に紛れてザルドスに乗り込み、ボルテックスへ旅立つ。飛行中にゼッドはザルドスを操るエターナルズのアーサー=フレインを撃ち、空中に放り出す。
 ボルテックスに着いたゼッドは、メイというエターナルズの女性に捕獲され、彼女とコンスエラ(Consuella)という女性エターナルズはテレパシーによるゼッドの尋問を行うが、ゼッドは記憶を途中で遮断しており、ボルテックスに来た目的や方法といった肝心な情報は得られなかった。彼女らは観察のためにゼッドを3週間ほど生かしておくことで合意し、ゼッドはエターナルズの男性フレッドに預けられ、肉体労働などの使役を受けることになった。
 フレッドはゼッドに、エターナルズの社会の仕組みを見せる。ボルテックスは「タバナクル(Tabernacle)」という中央コンピューターによって支配され、エターナルズは永遠に若く、争いや生殖もなく、仮に事故などで死んでもすぐに再生される。脳に埋め込まれたチップ「クリスタル」によってテレパシー能力や念力による攻撃能力を持つが、常に思考を監視され、不穏な思考や反逆思考の持ち主には、歳を取らせるという刑罰が与えられるディストピアだった。ボルテックスは当初、科学者の理想郷として建設され人類への貢献が期待されたが、不死不老ゆえの熱意の枯渇によりほとんど成果を出せず、エターナルズは目的を失って無気力状態に陥っている。そんな中でゼッドと接触したエターナルズの中には、ゼッドを不死という名の彼等の牢獄に終焉をもたらす解放者と見なす者が現れるようになった。
 一方メイはゼッドの遺伝子を解析し、ゼッドは普通のブルータルズとは異なり、精神と肉体の能力はエターナルズを凌ぐ可能性があることを見出し、ゼッドの出自と行動にまつわる謎が、次第に明らかになるのであった。


 映画『未来惑星ザルドス(みらいわくせいざるどす Zardoz)』は、アメリカ合衆国・アイルランド合作のSF映画。ブアマン自身による小説版も存在する。製作費157万ドル。
 ジョン=ブアマンは、長年の盟友だったウィリアム=ステアと共に脚本を練り上げ、「未来に突き進む私たちの感情が後退しているという問題を描き出したかった」と語っている。そして、物語の舞台を「現代社会が崩壊した遠い未来」に設定した。
 ブアマンは、「物語を貫く中心的なキャラクターに焦点を当てて作り上げたのです。彼(ゼッド)は不思議にも選ばれ、同時に操られているのです。私は物語をミステリー風味で、手掛かりや謎を解明しながら少しずつ真実が明かされるようにしたかったのです。」と語っており、脚本はオルダス=ハクスリー、ライマン・フランク=ボーム、T・S=エリオット、トールキンの作品やアーサー王物語から影響を受けたという。また、「外的宇宙というよりも内的なものを描いたつもりです。より形而上学的な、優れたSF文学に近いものです。SFというジャンルに悪い印象を与えているのは、ほとんどが宇宙服を着た冒険物語です。」とも語っている。

 ショーン=コネリーの起用についてブアマンは、「彼は007ジェイムズ=ボンド役を降りたばかりで、仕事がなかったんだ。だから私のところに来たんだよ。」と語っている。シャーロット=ランプリングは出演の理由について、「詩的だったからです。脚本には身体を愛し、自然を愛し、そして生まれてきた場所を愛せとはっきりと書いてありました。」と語っている。海岸でエクスターミネーターズに虐殺される獣人たちは、撮影現場周辺にいたジプシーによるエキストラ出演である。また、このシーンでゼッドに最初に殺される獣人はブアマンが演じている。この他、ゼッドがエターナルズから知識を授かるフラッシュバックシーンにはブアマンの3人の娘がカメオ出演しており、当時妻だったクリステル・クルーズ=ブアマンは衣装デザイナーとして参加している。
 製作費は20世紀フォックスが出資し、製作はブアマンが所有するジョン・ブアマン・プロダクションズが手掛けた。主要な撮影は1973年5~8月に行われた。撮影にはスタンリー=キューブリックがテクニカル・アドバイザーとして参加しているが、クレジットはされていない。
 撮影はアイルランド東部のウィックロー県で行われ(ブアマンの自宅から約16km 圏内の場所だった)、ザルドスの石像が飛行するシーンは県内の町ブレイのスタジオの駐車場で撮影され、石像はケーブル操作で動かしていた。撮影中、コネリーはブレイに居住しており、この時に住んでいた邸宅は彼が死去する数か月前に競売に出されている。ブアマンはブレイの景観を気に入っており、『エクスカリバー』(1981年)など複数の作品の撮影を同地で行っている。また、当時はアイルランド共和軍(IRA)の活動が活発だったため銃器の持ち込みができず、ブアマンは撮影地の変更を検討していたが、技術スタッフの一人がIRAメンバーだったことが判明し、彼を通してIRAと交渉した結果、撮影地への銃器の持ち込みが認められたという。ゼッドとコンスエラが老いていくシーンは1日かけて撮影され、ラストシーンで映し出される手形はブアマン自身の手形が使用された。

 ブアマンは使用した楽曲について、イギリスの古楽研究家デイヴィッド=マンロウに作曲を依頼した。物語の舞台は23世紀の未来世界だが、これについてブアマンは、未来的な音楽には旧世界の様々な楽器の音色が含まれていることが相応しいと考えていた。そのため、ブアマンは中世の楽器(鐘や笛など)を使用するようにマンロウに指示している。また、マンロウが作曲した中世楽器の音楽の他にルートヴィヒ=ヴァン=ベートーヴェンの『交響曲第7番 第2楽章』も使用された。

 1974年2月6日からアメリカ合衆国のロサンゼルスとニューヨークで公開されたが、批評家からは酷評された。また、観客からも複雑な世界観は受け入れられず批判の対象となった。スターログは「大半の批評家(そして観客)は、ブアマンのアナロジーや哲学的な主張を理解できなかった。」と批評しており、こうした空気の中で「鑑賞する価値がない映画」と判断され、上映館では空席が目立つようになった。当時の観客の証言によると、「映画を観終わった観客がロビーに戻ってくると、次の上映待ちの人たちに観賞せずに帰るように促していて、その光景が何度も繰り返されていた。」という。チケットの売上も低調で、アメリカ合衆国・カナダの最終的な配給収入は180万ドルに留まっている。
 ブアマン自身は、「非常に耽美で個人的な映画だが、それを実現するためには十分な予算とは言えなかった。」と評価している。

 本作は、時代を経るごとにカルト的人気を集めていることが指摘されている。1992年にロサンゼルス・タイムズに寄稿したジェフ・バルチャーは「熱狂的なSFファンにとって、この映画は知性が人類を圧倒し、人類が不死を実現した時に何が起きるのかを見せてくれるサイケデリック体験だ。」と批評し、ブアマンが自分自身の思い描くヴィジョンの一部を実現した作品と位置付けた。こうした再評価が進む中で、本作は1970年代の映画の中で最も荒々しくて野心的な古典作品と認識されるようになった。


おもなキャスティング
ゼッド   …… ショーン=コネリー(43歳 2020年没)
コンスエラ …… シャーロット=ランプリング(28歳)
メイ    …… セイラ=ケステルマン(30歳)
フレッド  …… ジョン=アルダートン(34歳)
アーサー=フレイン / ザルドス …… ナイオール=バギー(25歳)
囚人ジョージ=サデン …… ボスコ=ホーガン(24歳)
老いた科学者  …… クリストファー=カソン(61歳 1996年没)
タバナクルの声 …… デイヴィッド=デ・キーサー(46歳 2021年没)

おもなスタッフ
監督・脚本・製作 …… ジョン=ブアマン(41歳)
音楽 …… デイヴィッド=マンロウ(31歳 1976年没)
撮影 …… ジェフリー=アンスワース(59歳 1978年没)


≪年度末は忙しい!! 本文マダナノヨ≫
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時をこえる女優・千石規子のものすごさを観よ! ~映画『静かなる決闘』~

2023年02月21日 22時27分00秒 | ふつうじゃない映画
映画『静かなる決闘』(1949年3月13日公開 95分 大映)

 映画『静かなる決闘(しずかなるけっとう)』は、日本映画である。
 原作は菊田一夫の戯曲『堕胎医』で、梅毒に感染した青年医師の苦悩を描いたヒューマンドラマ。東宝争議の影響で東宝を脱退した黒澤が、初めて他社で製作した作品である。第23回キネマ旬報ベスト・テン第8位、第4回毎日映画コンクール男優演技賞(志村喬)を受賞した。
 菊田の戯曲『堕胎医』は、千秋実が主宰する劇団薔薇座によって1947年10月に東京・日劇小劇場で上演されており、演出は千秋の岳父である佐々木孝丸が担当した。黒澤が偶然にその舞台を観劇し感動したことから本作が企画され、これをきっかけに千秋は黒澤映画の常連俳優となる。
 当時、黒澤が所属する東宝は第3次東宝争議(1948年4~10月)によって映画撮影が困難になっていた。黒澤は山本嘉次郎、谷口千吉、本木荘二郎らと「映画芸術協会」を設立して東宝を脱退し、他社での製作を余儀なくされた。その第1作が本作であり、以降『野良犬』『醜聞』『羅生門』『白痴』を他社で制作している。

あらすじ
 太平洋戦争中、野戦病院で軍医として働いていた青年医師の藤崎恭二は、患者の中田進上等兵の手術中に誤って自分の指に怪我をし、中田の梅毒に感染してしまう。復員後、藤崎は父の経営する産婦人科医院で働くことになったが、梅毒の感染を隠し、婚約者の美佐緒と結婚することができずにいる。美佐緒は藤崎が自分に対して距離を置き、いつまでも親しくなれないことに苦悩していた。ある日、藤崎が自分の病気の秘密を父親に告白しているところを、見習い看護師の峰岸るいが立ち聞きする。峰岸は元ダンサーで暗い過去を持ち、藤崎の日頃の誠実な言動に反感を抱いていた。その後も藤崎は己の病と闘いながら、訪れる患者に対しては黙々と治療を続けていく。その一方で秘密を聞いたことで藤崎に対するわだかまりが解けた峰岸は、人間的に少しずつ成長していくのであった。そんな折、藤崎は偶然に元患者の中田と再会し、中田が自分の梅毒を放置したまま結婚し、近々子供が生まれることを知る。

おもなスタッフ(年齢は公開当時のもの)
監督 …… 黒澤 明(39歳)
原作 …… 菊田 一夫(41歳)
脚本 …… 黒澤 明、谷口 千吉(37歳)
音楽 …… 伊福部 昭(34歳)

おもなキャスティング(年齢は公開当時のもの)
藤崎 恭二  …… 三船 敏郎(28歳)
松本 美佐緒 …… 三條 美紀(20歳)
藤崎 孝之輔 …… 志村 喬(44歳)
中田 進   …… 植村 謙二郎(35歳)
野坂巡査   …… 山口 勇(45歳)
峯岸 るい  …… 千石 規子(26歳)
中田 多樹子 …… 中北 千枝子(22歳)
看護婦・今井 …… 町田 博子(24歳)


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詰め襟学生服って、いいよね! ~映画『また逢う日まで』~

2023年01月22日 00時34分53秒 | ふつうじゃない映画
映画『また逢う日まで』(1950年3月公開 111分 東宝)

 『また逢う日まで』は日本映画である。東宝製作・配給。モノクロ、スタンダード。
 東宝争議終結後の自主製作再開第2回作品。主演の岡田英次が映画化を勧めた、フランスの小説家ロマン=ロランの反戦小説『ピエールとリュース』(1920年発表)を水木洋子と八住利雄が翻案・脚色し、フリーになった今井が監督した恋愛映画。戦争によって引き裂かれた恋人の姿を描き、戦争の残酷さを訴えている。主演の岡田と久我美子によるガラス越しのキスシーンが有名である。第24回キネマ旬報ベスト・テン第1位、第5回毎日映画コンクール日本映画大賞、第1回ブルーリボン賞作品賞・監督賞、第4回日本映画技術賞(中尾駿一郎、平田光治)受賞。

あらすじ
 昭和十八(1943)年、戦時空襲下の東京で2人の若い男女が出会った。学生の田島三郎は、空襲警報が鳴り響く地下鉄ホームで美術学校の生徒・小野螢子と出逢う。軍国主義に何の疑問も持たない法務官の父・英作と陸軍中尉である兄・二郎に嫌悪感を抱いていた三郎は、母と2人暮らしながらも明るく希望を抱いて生きる螢子に惹かれ、2人の純真な恋は日ごとに高まる。しかし戦況は悪化の一途をたどり、ついに三郎に召集令状が届き、2人に別れの日が訪れる。そして、さらなる残酷な運命が2人を待っていた。

おもなスタッフ
監督 …… 今井 正(38歳)
脚本 …… 水木 洋子(39歳)、八住 利雄(46歳)
撮影 …… 中尾 駿一郎(31歳)
音楽 …… 大木 正夫(48歳)
録音 …… 下永 尚(37歳)
特殊技術 …… 渡辺 明(41歳)
合成技術 …… 向山 宏(35歳)

おもなキャスティング
田島 三郎 …… 岡田 英次(29歳)
小野 螢子 …… 久我 美子(19歳)
田島 英作 …… 滝沢 修(43歳)
田島 二郎 …… 河野 秋武(38歳)
田島 正子 …… 風見 章子(28歳)
小野 すが …… 杉村 春子(44歳)
すがの友人 …… 戸田 春子(41歳)
学生・会田 …… 林 孝一(28歳)
学生・今村 …… 大泉 滉(25歳)
学生・井本 …… 芥川 也寸志(24歳)
学生    …… 近藤 宏(24歳)
学生    …… 芥川 比呂志(30歳)
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映画って、総合芸術なのねェ。 ~映画『ひみつのなっちゃん。』~

2023年01月15日 20時21分43秒 | ふつうじゃない映画
映画『ひみつのなっちゃん。』(2023年1月13日公開 97分)

 『ひみつのなっちゃん。』は日本映画。主演は、本作が映画初主演となる滝藤賢一。
 「オネエ」だった亡き友人なっちゃんとその遺族の母親のために、3人のドラァグクイーンが「ふつうのおじさん」として、岐阜県郡上市で執り行われるなっちゃんのお葬式に参列するまでを描くハートフルヒューマンコメディ。

おもな登場人物
バージン / 坂下 純 …… 滝藤 賢一(46歳)
 ドラァグクイーン。なっちゃんの友人。
モリリン / 石野 守 …… 渡部 秀(31歳)
 ドラァグクイーン。なっちゃんが営んでいた新宿二丁目の食事処の店子。
ズブ子 / 沼田 治彦 …… 前野 朋哉(37歳)
 ドラァグクイーン。人気オネエ系 TVタレント。
なっちゃん …… カンニング竹山(51歳)
並木 恵子 …… 松原 智恵子(78歳)
 なっちゃんの母。岐阜県郡上市で執り行われる息子の葬儀に参列して欲しいとバージンたちにお願いする。
山田 茂典 …… 豊本 明長(東京03 47歳)
 バージンがかつて踊っていたクラブのママ。バージンの良き相談相手。
坪井 仁 …… 菅原 大吉(62歳)
 岐阜県郡上市の旅館の主人。
仁の妻 …… 生稲 晃子(54歳)
坪井 博子 …… 市ノ瀬 アオ(15歳)
下田 信之介 …… 本田 博太郎(71歳)
 新宿二丁目で伝説となっている謎の人物。なっちゃんの過去を知る。
サービスエリアのトラック運転手 …… 岩永 洋昭(43歳)
岐阜県のスーパーの店員 …… 永田 薫(26歳)

おもなスタッフ
脚本・監督 …… 田中 和次朗(38歳)
ドラァグクイーン監修 …… エスムラルダ(50歳)
ロケ協力 …… 岐阜県郡上市
製作 …… 東映ビデオ、丸壱動画、TOKYO MX、岐阜新聞映画部

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古いと侮るなかれ! 黒澤テイストは初期からマシマシ! ~映画『醉いどれ天使』~

2023年01月01日 19時42分25秒 | ふつうじゃない映画
映画『醉いどれ天使』(1948年4月27日公開 98分 東宝)
 『醉いどれ天使(よいどれてんし)』は、日本映画である。監督は黒澤明。モノクロ、スタンダード。
 闇市を支配する若いやくざと、貧乏な酔いどれ中年医者とのぶつかり合いを通じて、戦後風俗を鮮やかに描き出したヒューマニズム溢れる力作。黒澤・三船コンビによる最初の作品であると同時に、志村が黒澤作品で初主演した。第22回キネマ旬報ベスト・テン第1位、第3回毎日映画コンクール日本映画大賞、撮影賞、音楽賞を受賞した。
 やくざの親分役の清水将夫の腕の刺青メイクは、当時、東宝技術部特殊技術課に所属していた鷺巣富雄(26歳 のちのピー・プロダクション創業者のうしおそうじ)が担当した。

あらすじ
 反骨漢で一途な貧乏医師・真田は、闇市のやくざ・松永の鉄砲傷を手当てしたことがきっかけで、松永が結核に冒されていることを知り、その治療を必死に試みる。しかし若く血気盛んな松永は素直になれず威勢を張るばかりだった。更に、出獄して来た兄貴分の岡田との縄張りや情婦の奈々江を巡る確執の中で、松永は急激に命を縮めていく。弱り果て追い詰められていく松永はついに吐血し真田の診療所に運び込まれ、一旦は養生を試みるが、結局は窮余の末に岡田に殴り込みを仕掛け、返り討ちに遭い死ぬ。真田はそんな松永の死を、毒舌の裏で哀れみ悼む。闇市は松永など最初からいなかったかのように、賑わい活気づいている。真田は結核が治癒したとほほ笑む女学生に再会し、一縷の光を見出した気分で去るのだった。

おもなスタッフ(年齢は公開当時のもの。没年は省略しています)
監督 …… 黒澤 明(38歳)
脚本 …… 植草 圭之助(38歳)、黒澤 明
製作 …… 本木 荘二郎(33歳)
撮影 …… 伊藤 武夫(61歳)
美術 …… 松山 崇(39歳)
特殊効果 …… 東宝特殊技術部
音楽 …… 早坂 文雄(33歳)
ギター演奏 …… 伊藤 翁介(37歳)
挿入歌 …… 笠置 シヅ子『ジャングル・ブギー』(作詞・黒澤明、作曲・服部良一)

おもなキャスティング(年齢は公開当時のもの。没年は省略しています)
真田  …… 志村 喬(43歳)
松永  …… 三船 敏郎(28歳)
岡田  …… 山本 礼三郎(45歳)
奈々江 …… 木暮 実千代(30歳)
美代  …… 中北 千枝子(21歳)
婆や  …… 飯田 蝶子(51歳)
ぎん  …… 千石 規子(26歳)
松永の舎弟 …… 谷 晃(37歳)
松永の舎弟 …… 宇野 晃司(24歳)
ギターのやくざ …… 堺 左千夫(22歳)
やくざの子分 …… 大村 千吉(26歳)
ひさごの親爺 …… 殿山 泰司(32歳)
花屋の少女  …… 木匠 久美子(18歳)
セーラー服の少女 …… 久我 美子(17歳)
やくざの親分 …… 清水 将夫(39歳)
高浜医師   …… 進藤 英太郎(48歳)
ブギーを唄う女 …… 笠置 シヅ子(33歳)
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