どもども、みなさんこんばんは! そうだいでございますよっとぉ。
いや~、やっと! やっと暖かくなってきましたね~、こちら山形も。日が暮れるとやっぱり極寒ではあるのですが、日中のぽかぽか感がぜんぜん違いますね! この1週間で劇的に雪が解けていきました。今この時期ばっかりは、雨がありがたいありがたい。あ、でもすぐに花粉の季節もやって来ちゃうから、雨さんにはもうちょっと長く降ってほしいかしら。
ホントね、この冬は雪にさんざん振り回されたと言いますか、2015年に千葉からこちら山形に帰ってきて以来、いちばんの降雪量だったと思いますね。職場での雪かきもほぼ毎日だったしなぁ。今週まで残ってる雪なんか、もう密度ギッチギチの氷塊になっちゃってますからね! 駐車場の雪なんか、車の重みでさらに圧縮されてるからなおさらよ……連日の氷くだきで肩の関節がもうガッタガタです。
次の冬はぜひとも雪少な目でお願いしたいのですが、日本海側のドカ雪は地球温暖化の一傾向らしいんでねぇ。なるべくお手柔らかにしていただきたい!
さてさて、今回も今回とて、先月に一挙放送された池松金田一シリーズの第3シーズン全3話の感想をつづる企画なのですが、ついに最後のお話となりました。なので、最後の方では余力が残っていたら第3シーズン全体の印象にも触れておしまいにしたいと思います。今回も、制作スタッフのみなさまはお疲れさまでした!
というわけでありまして、最後のエピソードは、放送順でいいますとトップバッターだった、この作品。
ドラマ『女の決闘』(2022年2月26日放送 NHK BS プレミアム『シリーズ・横溝正史短編集Ⅲ 金田一耕助、戸惑う』 30分)
33代目・金田一耕助 …… 池松 壮亮(31歳)
『女の決闘』は、横溝正史の短編推理小説。「金田一耕助シリーズ」の一作。月刊『婦人公論』の昭和三十二(1957)年1~3月号に『憑かれた女』という表題で連載された。
あらすじ
昭和三十一(1956)年の秋に入るころ。東京世田谷区・緑ヶ丘のアメリカ人バイヤー宅で、急に帰国することになったロビンソン夫妻のさよならパーティが開かれていた。その席上、隣人の流行作家・藤本哲也の現在の妻である多美子と、藤本の前妻である河崎泰子が並んでソフトクリームを食べていると、多美子が毒に中って倒れる。ソフトクリームは哲也が多美子に頼まれて持ってきたもので、そのあと哲也は中井夫人に誘われて踊っていた。招待されていた金田一耕助は、哲也が泰子に毒を盛ろうとして誤って多美子が食べた可能性を指摘するが、泰子はそれを強く否定する。多美子は命に別状無く快復し、ロビンソン夫妻は予定通り1週間後に出国する。
主なキャスティング
河崎 泰子 …… 菊池 亜希子(39歳)
藤本 多美子 …… 板谷 由夏(46歳)
藤本 哲也 …… 首藤 康之(50歳)
木戸 郁子 …… 山本 容子(69歳)
中井夫人 …… YOU(57歳)
ジャック安永 …… 岩下 尚史(60歳)
木下医師 …… 中村 靖日(49歳)
島田警部補 …… みのすけ(56歳)
ジェームス=ロビンソン …… ジョン=カビラ(63歳)
マーガレット=ロビンソン …… ヤンニ=オルソン(36歳)
朗読 …… 土岐 麻子(45歳)
主なスタッフ
演出 …… 宇野 丈良(?歳)
はいっ、そんな感じで、放送順は最初なんですが、金田一耕助の解決した事件としては、他2作よりも後に起きたものになります。まだまだ1950年代の事件ではあるのですが、金田一も含めて登場人物の生活に戦争の影はほぼ無くなってきており、安定した平和な日常の中で謎の毒殺未遂事件が発生するという流れになっております。第一、イギリス人であるロビンソン夫妻をあたたかく見送る東京都世田谷区緑ヶ丘の面々には、「もはや戦後ではない」という、1956年度の我が国の『経済白書』の序文に書かれた一節がしっくりくる穏やかな空気に満ちていますね。
しかし、そういう安穏とした生活の中にも、「犯罪」の温床が醸し出す腐臭は漂ってくるようで、今回の事件に関していえば、主要登場人物が生活のつてにしているある職業にまつわる「プロ意識」と「人間としてのプライド」が激しくせめぎ合った末に起こってしまったわけなのです。つまり国こそ違えども、アガサ=クリスティが得意とした「平和な日常の裏に隠された憎しみ合いの構図」を自家薬籠中の物にした、横溝正史先生の後期の特色を色濃く投影した傑作短編となっているのが、この『女の決闘』なのです。
とはいうものの……この作品は、まぁ『女怪』もそうなんですが、タイトルの時点でだいたい犯人は彼女と彼女のどっちかかな?という感じになっており、物語の面白さは「意外な犯人」とか「意外なトリック」にはなく、「どうして事件が起きた?」に絞られていると言って間違いないでしょう。
そんでま、物語は片方のヒロイン河崎泰子に濃厚な疑いがかかりまくるというサスペンス劇場あるあるな流れなんですから、まぁ犯人は明々白々と言ったところでしょうか。でも、横溝先生はそこらへんを見越してもう一ひねりした別作品を残したりもしているのですが。
ですので、この『女の決闘』を映像化するのならば、たった30分の内容なのだとしても、登場人物の「表と裏の顔」のどっちも思いっきり魅力的に描いて、可能なのならば、事件の核心に関わる三角関係が目立たなくなるくらいに、周囲の脇役たちの人間関係もふくらませてカモフラージュさせる必要があると思うのです。そうしないと、事件の謎だけでは視聴者の興味を引っ張っていけないもんねぇ。この「事件の謎がうす味なんだったら、人間ドラマを濃厚にすればよろしいのでなくって?」という調理テクニックは、さすがミステリーの女王クリスティ……というか、スーシェポワロシリーズの常套手段ですよね!
ところがよォ……この『女の決闘』2022エディションときたら、どうだいあんた。
いや、いやいや、その役とかその役とか、あろうことか事件の核となる三角関係の一角である藤本哲也の役までプロの俳優さんじゃない人に演じさせて、ンどぉ~おすんの!?
俳優としての話ですよ? あくまでも演技を専門技能、なりわいとする俳優としてどうなのか?という話なので、決して演じられた方々のそれまでの各分野でのキャリアをどうのこうの言うつもりは全くないのですが、ほとんどの出演キャスト、演技上手じゃねぇだろ~!! ロビンソン夫妻のお別れパーティなんか、お遊戯会って言うのもお遊戯会に失礼なくらい、地獄の惨状になってませんでした!?
ひどい、ひどい&ひどい!! いや、人間が裏の顔を隠して作り笑いをしている仮面舞踏会パーティって、そういうニュアンスじゃねぇから! 見え見えのウソなんかウソになんないから!! ヘタックソな順番棒読みのやりとり見せられても、こっちは面白くもなんともないのよ~。お話への興味がゴリゴリ減ってく一方なのよ~。
この『女の決闘』2022エディションの罪が深いのは、これが池松金田一第3シーズンのトップバッターだってことなんですよ。私ものすご~く嫌な予感がするのですが、3本あわせて1時間30分のドラマが始まったと思ってチャンネルを合わせた貴重な視聴者さんのうち、最初のこの作品のド頭5分くらいを観た時点で、「え、こんなコントみたいなのがずっと続くの……?」と辟易して視聴をやめた人も少なからずいたのではないのだろうか。
もともと、あんまり知名度の高くない作品を映像化するシリーズなのですから(『犬神家の一族』を除く)、視聴者というか横溝ワールドに何となく興味のあるライト層にとって入り込みやすいドラマの内容にするべきだし、多少どぎつい彩色になってもインパクトのある画作りに徹するべきなのではないでしょうか。まぁ、そこら辺のバランス調整の難しさは、かの古谷一行金田一シリーズの後期~末期の苦難の道行きが雄弁に証明していることでもあるのですが。
それなのに、今回の『女の決闘』は、そもそもどこをどう観たら面白く受けとめられるのかが、さぁっぱりわからない。私自身、放送された日から本日にいたるまで、録画したこの作品を2週間ほど繰り返し観ているのですが、単に原作小説を縮小コピーしているだけにしか見えず、作品を面白くしようとする演出意図が……私には一向に見えてこないのです。
まるで、
「いや、原作にほぼ忠実に映像化していることに徹してますんで、面白いかどうかは私の責任じゃないです。」
と言わんばかりの、非常に淡々とした映像と棒読みの羅列が続くのです。画面は、まぁ容姿のきれいな方が多いので一見すれば品質が高いかのように見えるのですが、全体の色調をややセピアっぽくしたりカメラのピントをわざと甘くしている演出がひたすら最後まで延々と続くので、飽きること飽きること。
キッツいなぁ~。あれ、宇野さんの演出って、こんなにひどかったんだっけ?
これまでの池松金田一シリーズにおける宇野演出作品をおさらいしてみますと、『黒蘭姫』は戦後間もなくの百貨店の宝石陳列コーナーや、空襲爆撃の跡も生々しい東京の大地にぬぼーっと建つ三角ビルといった、21世紀に住む我々からすると時代劇やファンタジーの世界に近いような場が事件の舞台であるために、セピアの色調やスタジオセット感、ミニチュア感、CG感を隠さない宇野演出は、ミステリー作品の「えそらごと」な雰囲気を象徴していて非常に面白かったと思います。あと、レイザーラモンHG さんや鳥居みゆきさんの演技も達者で良かったのですが、これは全く演者のそれまでの半生が培ってきた努力のたまものであって、演出のなせる業ではないと思います。
そんで演出2作目の『貸しボート十三号』については、スタジオ撮影でこそなくなったものの、まず死体の損壊状況が凄惨な謎に満ちていることと、事件の舞台がボート置きガレージと大学ボート部の合宿寮ということで映像インパクトが大だったこと。そして、若いながらも一途に演技をする若手俳優陣のフレッシュさも良い印象を与えていたのではないかと思います。ただ、これも演出の腕で俳優陣が引き立って見えたのかというと、それはちょっと……だって、今をときめく演技派女優の蒔田あじゅさんが見事なまでに目立たなかったもんね。あじゅさんの無駄遣いよこれ! 映画『朝が来る』でのあじゅさんの入魂の演技を観ろって話ですよ。でも、少ない出番ながらも、最後に嶋田久作さんが出てきて作品を引き締めていたのは実によかったですね。
なるほど。「作品のえそらごと感にフィットした画面作り」、「芸達者な演者」、「珍しい事件舞台」、「フレッシュな演技」。そういった今までの宇野作品の良い点を占めていた要素の数々が、今回はものの見事に無かったわけだ。『女の決闘』は完全にリアル志向の人間群像劇ですもんね。純粋ミステリーの空想性はないかな。
手駒が悪すぎた運を呪うべきなのか、そのチョイスで良しとした責任を断じるべきなのか。難しい問題なのですが、少なくともはっきり言えるのは、今回の初映像化が『女の決闘』と視聴者にとって非常に不幸な結果しか残さなかった、ということなのではないでしょうか。
原作小説、それなりに面白いんですけどね……少なくとも、今回映像で観られたよりは魅力的なキャラクターなんですよ、木戸郁子さんとか中井夫人とか島田警部補って! それをど~してああしちゃうのかなぁ!? 横溝正史先生の筆の評判を落とすためにやってるとしか思えないキャスティングなんですよ。あんなつまんない棒人間、先生が描くわけないでしょ!!
いや本当に、イヤミとかじゃなくて純粋に聞いてみたいんですが、宇野さんは今回どこにモチベーションを持って『女の決闘』を映像化したんですかね!?
「原作に忠実に映像化すること」じゃないですよね。だって、キャラクターは軒並み原作よりも没個性になってるし、原作では犯人の動機にも関わりのあるけっこう重要人物だった作曲家の井出清一とか、作品の読後感にとってかなり大切な存在である元軍人の椙本三郎とかを思いっきりカットしちゃってるんだもんねぇ。これ、原作に愛のある人ならできない判断だと思いますよ。これでのうのうと「原作にほぼ忠実」とか、よく言えたもんだよ! こんな致命的なカット、『女怪』でも『蝙蝠と蛞蝓』でもやってませんよ。
この、「足すのはダメだけどカットはいいよ。」みたいなシリーズ暗黙のルールもよくわかんないです。それで面白くなるんならまだいいけど、構造がスッカスカになってつまんなくなるだけでしたね、『女の決闘』に関しては。
まぁこんな感じで、口を開けば愚痴しか出てこないんですよ、『女の決闘』2022エディションに関しては。なんでこ~なるの!?
せめて、なんかひとつだけ! ひとっつだけでいいから、『黒蘭姫』とか『貸しボート十三号』と比べて、成長して面白くなっていたポイントって、ありませんでしたかね!? どなたか、教えてブリーズ!
今回の敗因はただ一つ、「キャラクター造形の浅さ」。これに尽きると思います。これが演出のせいなのか演者の実力のせいなのかは……どっちでも関係無いか、ダメだったんだから。でもとにかく、なにがなんでも藤本哲也だけは、しっかりした演技のできる俳優さんに演じていただきたかった! 最低限ここさえ押さえておけば、なんとかなったはずなんです。だって、事件の諸悪の根源はこの人の浅はかな生き方と、それを一向に改めようとしない筋金入りのだめんず気質にあるんですもんね。そんなムチャクチャな人物、ただ見た目が良いだけの人にやれって言ってできるわけがないんですよ。これはオファーされた首藤さんもかわいそうではあるのですが、そんな誘いは絶対に断って、ついでにそんな無茶ぶりをしてくる制作スタッフに、世界レベルのクラシックバレエ仕込みの竜巻旋風脚でもお見舞いしてやるべきだったのではないのでしょうか。演技をなめるな、横溝ワールドをなめるなって話ですよ。
もう、いつまでこのへんの話をぐだぐだやっても仕方がないので、そろそろ話題を今回の池松金田一シリーズ第3弾ぜんたいに振り向けていきたいのですが、はっきり言いまして、今回の第3弾は、かなりシビアな課題を残すものになったと感じました。池松金田一シリーズ、いろいろと行き詰まってきているのではなかろうかと。
思うに、今後もし池松金田一シリーズが更新されていくとしても、演出はこれまでの宇野・渋江・佐藤のお3方じゃなくてもいいのではないのでしょうか。というか、むしろ変わった方がいい!
つい言い方がキツくなってしまうのですが、要するにあくまでも個人的な感想ではあるのですが、今回の第3シーズン、程度に差はありますがお3方とも、過去シーズンよりも面白くなったと感じる部分があんまり見受けられなかったんですね。それどころか、過去作よりも見づらくなっている、はっきり言えば面白くなくなっているのではないかと。私から観れば、もともと横溝正史先生のファンな人でない限り、よその人に「これ観てみてよ!」と勧められる作品は無かったです。断然、原作の文庫本を貸してあげた方がよっぽどいいと判断しますね。今回の3作品の中でいちばん面白いと感じたのは『女怪』だったのですが、これも原作を読んだほうが、金田一耕助の悲喜こもごもの表情がちゃんと伝わってきていいです。
佐藤演出の『女怪』は、テイストがかなりおセンチな方向に入ったので、あえて面白さ控え目にしましたという言い訳が立ちそうなのですが、それでも前回の『華やかな野獣』を観た人間としてはちょっぴり期待値よりも下だった印象は残るし、宇野演出の『女の決闘』と渋江演出の『蛞蝓と蝙蝠』にいたっては、これまでちゃんとやっていたはずのことができなくなっている! 『女の決闘』はドラマを面白くすること、『蝙蝠と蛞蝓』は原作の面白さをちゃんと伝えること。これがすっぽり欠落しちゃってるんですから、致命的ですよね。
とにもかくにも、一時に比べて再び横溝ワールドの映像化に関する状況がだいぶ落ち着いてしまい、そんな中で唯一の「現存シリーズ」がどうやらこの池松金田一シリーズらしいぞという現状において、どうしてもこのシリーズは、なんとかして続いてほしいんですよね。そして、まぁ吉川ゆりりんシリーズのファインプレーのおかげもありましたが、現在、昭和以来のファンが涙を流して喜んでいる角川文庫レーベルの復刊ラッシュは、ひとえにこの池松金田一シリーズの孤軍奮闘によるものが大きいわけなのです。私とて、この大恩を忘れるほど無節操ではないつもりのですが、であるからこそ! 池松金田一シリーズには、なんとしても第1・2シーズンのクオリティをしっかり維持した上で存続していただきたいと切望するのです。たのむよホントに!
ちなみに、私の中での演出3人衆それぞれのベスト作品は、宇野演出が『黒蘭姫』、佐藤演出が『華やかな野獣』、渋江演出が『百日紅の下にて』になります。その中でもベスト・オブベストは『百日紅の下にて』になるでしょうか。やっぱ嶋田久作さんは最高だ!!
つまるところ私が申したいのは、なにもこの3人のレギュラー体制にこだわる必要はない、演出のコンペティション形式になってもいいから、いちばん大切なのは「横溝正史作品の面白さ、すばらしさを伝えること」なんじゃないのか?ということなのです。「原作にほぼ忠実に映像化」って、そういうことでしょう?
そして、『犬神家の一族』という例外もありましたが、映像化するのは是非とも、横溝ワールドの中の「埋もれた名作」であってほしいのです。そしてそして!そうである以上、「原作小説よりも先に映像化された作品を観る人が多い可能性が高い」ということのハードルの高さを今一度、確認していただきたいのです。映像化の先例がある『女怪』のようなパターンもあるでしょうが、そこはそれ、1976年版『犬神家の一族』や1977年版『八つ墓村』ほどの認知度はないでしょう。なのならば、我々こそが、原作小説の面白さを先陣切ってこの令和の御代に満天下に知らしめるパイオニアなのだ!という自負と責任を忘れないでいただきたいと思うんだなぁ!!
だからこそ、現行の演出のお3方は、横溝先生の原作小説の映像化という大偉業を決して作業ルーチンにせずに、「これ、どうしても面白く映像化できねぇな……」とちょっとでも感じたのならば、演出の席を後進に譲ってとっとと自分のやりたいお仕事に邁進していただきたいのです。もっともっとおもしろく映像化できる才能のある方は、きっと必ずおられるでしょうから。
あと、あんまり、俳優として他の方の演出作品にチラッと出演みたいなファッキンど~でもいい遊びなんかチャラチャラやってないで、ご自分の演出に専念していただきたい、とも思います。ぜんぜん面白くないし。
この池松金田一シリーズって、再放送する時に池松さんと演出3人衆とかプロデューサーさんとかが集まって、制作時の裏話をするおまけがつきますよね? 今回の第3シーズンのアフタートークが楽しみですね~。どんな言い訳がとび出すのでしょうか。お通夜みたいになってないといいんだけど。
なんか、つづっていくに従ってこわい方向にボルテージが上がっているような気がするので、キーキー言うのはここまでにしておきたいのですが、要は、ちょっぴり動脈硬化と血のドロドロ化におちいりつつある池松金田一シリーズに思い切った変革をお願いしたいというのが、私の第3シーズンを観た正直な感想なのです。
リアルタイムでこの第3シーズンのオンエアを観た直後、はっきり言って少なからず落ち込んじゃいましたからね……3作別々に感想を記事にしたいことは観る前から心に決めてワックワクしていたのですが、ちょっとこれど~するよオイ!?みたいな。ガックシときちゃいましたよ。それだけ期待値が上がっちゃってたんですね。
ホントね、この直後のNHK BSプレミアムの『プレミアムシネマ』で放送された映画が、あの伝説のカルトアニメ『ファンタスティック・プラネット』だったからなんとか回復できたものの、そうとうの精神的ダメージを受けちゃいましたよ。『ファンタスティック・プラネット』サイコー!!
実はこうまでいろいろと言ってきたのは、本心を白状しますと、そろそろ池松金田一の「正統長編」が観た~い!というファン心理もムクムクと首をもたげてくるからなんですよね。短編を30分サイズでこつこつ映像化させていくのもいいのですが(『金田一耕助の冒険』の全作映像化もいいよね!)、せっかく1時間30分の放送枠があるのならば、『幽霊男』とか『夜の黒豹』の1本ロング映像化なんかも非常にステキだと思うんですよね~!! そして、行き着く究極の夢は、横溝先生の金田一もの長編小説の中で最も不遇の状況にある、あの『白と黒』の初映像化(ラジオドラマ化はあったらしいけど)よ~!! ウヒョ~、私の存命中に、是非ともこの目で観てみたいぃ~。
BS プレミアムでの長谷川金田一や吉岡金田一の生存確認がとれない今、池松金田一で短編と長編を一本化してもいいじゃないか! ひょっとすると、『八つ墓村』の直後の事件である『女怪』というチョイスは、吉岡金田一から池松金田一への「継承」という意味合いが込められていたのでは!? なるほどねェ~。ところで、吉岡金田一版『八つ墓村』のエピローグで匂わされていた『悪魔の手毬唄』のほうは、いつになるんですかね……? まぁ、加藤シゲアキ版で観たから、別にいいけど。吉岡金田一、とにかく目が怖かったから好きだったんだけどなぁ~。
んまぁともかく、ぐだぐだとイヤミったらしいことも申しましたが、池松金田一シリーズさまには、どういった形であれ、今後も何としても継続していただきたいと思います。池松さんも、『シン・仮面ライダー』主演もあることですし、今後めきめきと他のお仕事殺到で忙しくなるでしょうが、飽きずに是非ともご愛顧いただきたいと思います。
がんばれけっぱれ、池松金田一シリーズ!!
≪特別ふろく まだまだストックぞっくぞく!! 角川文庫でまだ復刊されていない横溝正史作品リスト≫
※エッセイ集、映画のシナリオは除く
『幽霊座』(金田一もの)、『仮面劇場』(由利麟太郎もの)、『吸血蛾』(金田一もの)、『女が見ていた』、『夜光虫』(由利麟太郎もの)、『悪魔の設計図』(由利麟太郎もの)、『毒の矢』(金田一もの)、『金田一耕助の冒険』(金田一もの)、『花園の悪魔』(金田一もの)、『幻の女』(由利麟太郎もの)、『呪いの搭』、『恐ろしき四月馬鹿』、『刺青された男』、『双仮面』(由利麟太郎もの)、『ペルシャ猫を抱く女』、『塙侯爵一家』、『誘蛾燈』、『悪魔の家』(由利麟太郎もの)、『芙蓉屋敷の秘密』、『殺人暦』、『青い外套を着た女』(由利麟太郎もの)、『空蝉処女』(由利麟太郎もの)、『死仮面』(金田一もの)、その他『迷宮の扉』や『怪獣男爵』などのジュブナイル16タイトル
いや~、やっと! やっと暖かくなってきましたね~、こちら山形も。日が暮れるとやっぱり極寒ではあるのですが、日中のぽかぽか感がぜんぜん違いますね! この1週間で劇的に雪が解けていきました。今この時期ばっかりは、雨がありがたいありがたい。あ、でもすぐに花粉の季節もやって来ちゃうから、雨さんにはもうちょっと長く降ってほしいかしら。
ホントね、この冬は雪にさんざん振り回されたと言いますか、2015年に千葉からこちら山形に帰ってきて以来、いちばんの降雪量だったと思いますね。職場での雪かきもほぼ毎日だったしなぁ。今週まで残ってる雪なんか、もう密度ギッチギチの氷塊になっちゃってますからね! 駐車場の雪なんか、車の重みでさらに圧縮されてるからなおさらよ……連日の氷くだきで肩の関節がもうガッタガタです。
次の冬はぜひとも雪少な目でお願いしたいのですが、日本海側のドカ雪は地球温暖化の一傾向らしいんでねぇ。なるべくお手柔らかにしていただきたい!
さてさて、今回も今回とて、先月に一挙放送された池松金田一シリーズの第3シーズン全3話の感想をつづる企画なのですが、ついに最後のお話となりました。なので、最後の方では余力が残っていたら第3シーズン全体の印象にも触れておしまいにしたいと思います。今回も、制作スタッフのみなさまはお疲れさまでした!
というわけでありまして、最後のエピソードは、放送順でいいますとトップバッターだった、この作品。
ドラマ『女の決闘』(2022年2月26日放送 NHK BS プレミアム『シリーズ・横溝正史短編集Ⅲ 金田一耕助、戸惑う』 30分)
33代目・金田一耕助 …… 池松 壮亮(31歳)
『女の決闘』は、横溝正史の短編推理小説。「金田一耕助シリーズ」の一作。月刊『婦人公論』の昭和三十二(1957)年1~3月号に『憑かれた女』という表題で連載された。
あらすじ
昭和三十一(1956)年の秋に入るころ。東京世田谷区・緑ヶ丘のアメリカ人バイヤー宅で、急に帰国することになったロビンソン夫妻のさよならパーティが開かれていた。その席上、隣人の流行作家・藤本哲也の現在の妻である多美子と、藤本の前妻である河崎泰子が並んでソフトクリームを食べていると、多美子が毒に中って倒れる。ソフトクリームは哲也が多美子に頼まれて持ってきたもので、そのあと哲也は中井夫人に誘われて踊っていた。招待されていた金田一耕助は、哲也が泰子に毒を盛ろうとして誤って多美子が食べた可能性を指摘するが、泰子はそれを強く否定する。多美子は命に別状無く快復し、ロビンソン夫妻は予定通り1週間後に出国する。
主なキャスティング
河崎 泰子 …… 菊池 亜希子(39歳)
藤本 多美子 …… 板谷 由夏(46歳)
藤本 哲也 …… 首藤 康之(50歳)
木戸 郁子 …… 山本 容子(69歳)
中井夫人 …… YOU(57歳)
ジャック安永 …… 岩下 尚史(60歳)
木下医師 …… 中村 靖日(49歳)
島田警部補 …… みのすけ(56歳)
ジェームス=ロビンソン …… ジョン=カビラ(63歳)
マーガレット=ロビンソン …… ヤンニ=オルソン(36歳)
朗読 …… 土岐 麻子(45歳)
主なスタッフ
演出 …… 宇野 丈良(?歳)
はいっ、そんな感じで、放送順は最初なんですが、金田一耕助の解決した事件としては、他2作よりも後に起きたものになります。まだまだ1950年代の事件ではあるのですが、金田一も含めて登場人物の生活に戦争の影はほぼ無くなってきており、安定した平和な日常の中で謎の毒殺未遂事件が発生するという流れになっております。第一、イギリス人であるロビンソン夫妻をあたたかく見送る東京都世田谷区緑ヶ丘の面々には、「もはや戦後ではない」という、1956年度の我が国の『経済白書』の序文に書かれた一節がしっくりくる穏やかな空気に満ちていますね。
しかし、そういう安穏とした生活の中にも、「犯罪」の温床が醸し出す腐臭は漂ってくるようで、今回の事件に関していえば、主要登場人物が生活のつてにしているある職業にまつわる「プロ意識」と「人間としてのプライド」が激しくせめぎ合った末に起こってしまったわけなのです。つまり国こそ違えども、アガサ=クリスティが得意とした「平和な日常の裏に隠された憎しみ合いの構図」を自家薬籠中の物にした、横溝正史先生の後期の特色を色濃く投影した傑作短編となっているのが、この『女の決闘』なのです。
とはいうものの……この作品は、まぁ『女怪』もそうなんですが、タイトルの時点でだいたい犯人は彼女と彼女のどっちかかな?という感じになっており、物語の面白さは「意外な犯人」とか「意外なトリック」にはなく、「どうして事件が起きた?」に絞られていると言って間違いないでしょう。
そんでま、物語は片方のヒロイン河崎泰子に濃厚な疑いがかかりまくるというサスペンス劇場あるあるな流れなんですから、まぁ犯人は明々白々と言ったところでしょうか。でも、横溝先生はそこらへんを見越してもう一ひねりした別作品を残したりもしているのですが。
ですので、この『女の決闘』を映像化するのならば、たった30分の内容なのだとしても、登場人物の「表と裏の顔」のどっちも思いっきり魅力的に描いて、可能なのならば、事件の核心に関わる三角関係が目立たなくなるくらいに、周囲の脇役たちの人間関係もふくらませてカモフラージュさせる必要があると思うのです。そうしないと、事件の謎だけでは視聴者の興味を引っ張っていけないもんねぇ。この「事件の謎がうす味なんだったら、人間ドラマを濃厚にすればよろしいのでなくって?」という調理テクニックは、さすがミステリーの女王クリスティ……というか、スーシェポワロシリーズの常套手段ですよね!
ところがよォ……この『女の決闘』2022エディションときたら、どうだいあんた。
いや、いやいや、その役とかその役とか、あろうことか事件の核となる三角関係の一角である藤本哲也の役までプロの俳優さんじゃない人に演じさせて、ンどぉ~おすんの!?
俳優としての話ですよ? あくまでも演技を専門技能、なりわいとする俳優としてどうなのか?という話なので、決して演じられた方々のそれまでの各分野でのキャリアをどうのこうの言うつもりは全くないのですが、ほとんどの出演キャスト、演技上手じゃねぇだろ~!! ロビンソン夫妻のお別れパーティなんか、お遊戯会って言うのもお遊戯会に失礼なくらい、地獄の惨状になってませんでした!?
ひどい、ひどい&ひどい!! いや、人間が裏の顔を隠して作り笑いをしている仮面舞踏会パーティって、そういうニュアンスじゃねぇから! 見え見えのウソなんかウソになんないから!! ヘタックソな順番棒読みのやりとり見せられても、こっちは面白くもなんともないのよ~。お話への興味がゴリゴリ減ってく一方なのよ~。
この『女の決闘』2022エディションの罪が深いのは、これが池松金田一第3シーズンのトップバッターだってことなんですよ。私ものすご~く嫌な予感がするのですが、3本あわせて1時間30分のドラマが始まったと思ってチャンネルを合わせた貴重な視聴者さんのうち、最初のこの作品のド頭5分くらいを観た時点で、「え、こんなコントみたいなのがずっと続くの……?」と辟易して視聴をやめた人も少なからずいたのではないのだろうか。
もともと、あんまり知名度の高くない作品を映像化するシリーズなのですから(『犬神家の一族』を除く)、視聴者というか横溝ワールドに何となく興味のあるライト層にとって入り込みやすいドラマの内容にするべきだし、多少どぎつい彩色になってもインパクトのある画作りに徹するべきなのではないでしょうか。まぁ、そこら辺のバランス調整の難しさは、かの古谷一行金田一シリーズの後期~末期の苦難の道行きが雄弁に証明していることでもあるのですが。
それなのに、今回の『女の決闘』は、そもそもどこをどう観たら面白く受けとめられるのかが、さぁっぱりわからない。私自身、放送された日から本日にいたるまで、録画したこの作品を2週間ほど繰り返し観ているのですが、単に原作小説を縮小コピーしているだけにしか見えず、作品を面白くしようとする演出意図が……私には一向に見えてこないのです。
まるで、
「いや、原作にほぼ忠実に映像化していることに徹してますんで、面白いかどうかは私の責任じゃないです。」
と言わんばかりの、非常に淡々とした映像と棒読みの羅列が続くのです。画面は、まぁ容姿のきれいな方が多いので一見すれば品質が高いかのように見えるのですが、全体の色調をややセピアっぽくしたりカメラのピントをわざと甘くしている演出がひたすら最後まで延々と続くので、飽きること飽きること。
キッツいなぁ~。あれ、宇野さんの演出って、こんなにひどかったんだっけ?
これまでの池松金田一シリーズにおける宇野演出作品をおさらいしてみますと、『黒蘭姫』は戦後間もなくの百貨店の宝石陳列コーナーや、空襲爆撃の跡も生々しい東京の大地にぬぼーっと建つ三角ビルといった、21世紀に住む我々からすると時代劇やファンタジーの世界に近いような場が事件の舞台であるために、セピアの色調やスタジオセット感、ミニチュア感、CG感を隠さない宇野演出は、ミステリー作品の「えそらごと」な雰囲気を象徴していて非常に面白かったと思います。あと、レイザーラモンHG さんや鳥居みゆきさんの演技も達者で良かったのですが、これは全く演者のそれまでの半生が培ってきた努力のたまものであって、演出のなせる業ではないと思います。
そんで演出2作目の『貸しボート十三号』については、スタジオ撮影でこそなくなったものの、まず死体の損壊状況が凄惨な謎に満ちていることと、事件の舞台がボート置きガレージと大学ボート部の合宿寮ということで映像インパクトが大だったこと。そして、若いながらも一途に演技をする若手俳優陣のフレッシュさも良い印象を与えていたのではないかと思います。ただ、これも演出の腕で俳優陣が引き立って見えたのかというと、それはちょっと……だって、今をときめく演技派女優の蒔田あじゅさんが見事なまでに目立たなかったもんね。あじゅさんの無駄遣いよこれ! 映画『朝が来る』でのあじゅさんの入魂の演技を観ろって話ですよ。でも、少ない出番ながらも、最後に嶋田久作さんが出てきて作品を引き締めていたのは実によかったですね。
なるほど。「作品のえそらごと感にフィットした画面作り」、「芸達者な演者」、「珍しい事件舞台」、「フレッシュな演技」。そういった今までの宇野作品の良い点を占めていた要素の数々が、今回はものの見事に無かったわけだ。『女の決闘』は完全にリアル志向の人間群像劇ですもんね。純粋ミステリーの空想性はないかな。
手駒が悪すぎた運を呪うべきなのか、そのチョイスで良しとした責任を断じるべきなのか。難しい問題なのですが、少なくともはっきり言えるのは、今回の初映像化が『女の決闘』と視聴者にとって非常に不幸な結果しか残さなかった、ということなのではないでしょうか。
原作小説、それなりに面白いんですけどね……少なくとも、今回映像で観られたよりは魅力的なキャラクターなんですよ、木戸郁子さんとか中井夫人とか島田警部補って! それをど~してああしちゃうのかなぁ!? 横溝正史先生の筆の評判を落とすためにやってるとしか思えないキャスティングなんですよ。あんなつまんない棒人間、先生が描くわけないでしょ!!
いや本当に、イヤミとかじゃなくて純粋に聞いてみたいんですが、宇野さんは今回どこにモチベーションを持って『女の決闘』を映像化したんですかね!?
「原作に忠実に映像化すること」じゃないですよね。だって、キャラクターは軒並み原作よりも没個性になってるし、原作では犯人の動機にも関わりのあるけっこう重要人物だった作曲家の井出清一とか、作品の読後感にとってかなり大切な存在である元軍人の椙本三郎とかを思いっきりカットしちゃってるんだもんねぇ。これ、原作に愛のある人ならできない判断だと思いますよ。これでのうのうと「原作にほぼ忠実」とか、よく言えたもんだよ! こんな致命的なカット、『女怪』でも『蝙蝠と蛞蝓』でもやってませんよ。
この、「足すのはダメだけどカットはいいよ。」みたいなシリーズ暗黙のルールもよくわかんないです。それで面白くなるんならまだいいけど、構造がスッカスカになってつまんなくなるだけでしたね、『女の決闘』に関しては。
まぁこんな感じで、口を開けば愚痴しか出てこないんですよ、『女の決闘』2022エディションに関しては。なんでこ~なるの!?
せめて、なんかひとつだけ! ひとっつだけでいいから、『黒蘭姫』とか『貸しボート十三号』と比べて、成長して面白くなっていたポイントって、ありませんでしたかね!? どなたか、教えてブリーズ!
今回の敗因はただ一つ、「キャラクター造形の浅さ」。これに尽きると思います。これが演出のせいなのか演者の実力のせいなのかは……どっちでも関係無いか、ダメだったんだから。でもとにかく、なにがなんでも藤本哲也だけは、しっかりした演技のできる俳優さんに演じていただきたかった! 最低限ここさえ押さえておけば、なんとかなったはずなんです。だって、事件の諸悪の根源はこの人の浅はかな生き方と、それを一向に改めようとしない筋金入りのだめんず気質にあるんですもんね。そんなムチャクチャな人物、ただ見た目が良いだけの人にやれって言ってできるわけがないんですよ。これはオファーされた首藤さんもかわいそうではあるのですが、そんな誘いは絶対に断って、ついでにそんな無茶ぶりをしてくる制作スタッフに、世界レベルのクラシックバレエ仕込みの竜巻旋風脚でもお見舞いしてやるべきだったのではないのでしょうか。演技をなめるな、横溝ワールドをなめるなって話ですよ。
もう、いつまでこのへんの話をぐだぐだやっても仕方がないので、そろそろ話題を今回の池松金田一シリーズ第3弾ぜんたいに振り向けていきたいのですが、はっきり言いまして、今回の第3弾は、かなりシビアな課題を残すものになったと感じました。池松金田一シリーズ、いろいろと行き詰まってきているのではなかろうかと。
思うに、今後もし池松金田一シリーズが更新されていくとしても、演出はこれまでの宇野・渋江・佐藤のお3方じゃなくてもいいのではないのでしょうか。というか、むしろ変わった方がいい!
つい言い方がキツくなってしまうのですが、要するにあくまでも個人的な感想ではあるのですが、今回の第3シーズン、程度に差はありますがお3方とも、過去シーズンよりも面白くなったと感じる部分があんまり見受けられなかったんですね。それどころか、過去作よりも見づらくなっている、はっきり言えば面白くなくなっているのではないかと。私から観れば、もともと横溝正史先生のファンな人でない限り、よその人に「これ観てみてよ!」と勧められる作品は無かったです。断然、原作の文庫本を貸してあげた方がよっぽどいいと判断しますね。今回の3作品の中でいちばん面白いと感じたのは『女怪』だったのですが、これも原作を読んだほうが、金田一耕助の悲喜こもごもの表情がちゃんと伝わってきていいです。
佐藤演出の『女怪』は、テイストがかなりおセンチな方向に入ったので、あえて面白さ控え目にしましたという言い訳が立ちそうなのですが、それでも前回の『華やかな野獣』を観た人間としてはちょっぴり期待値よりも下だった印象は残るし、宇野演出の『女の決闘』と渋江演出の『蛞蝓と蝙蝠』にいたっては、これまでちゃんとやっていたはずのことができなくなっている! 『女の決闘』はドラマを面白くすること、『蝙蝠と蛞蝓』は原作の面白さをちゃんと伝えること。これがすっぽり欠落しちゃってるんですから、致命的ですよね。
とにもかくにも、一時に比べて再び横溝ワールドの映像化に関する状況がだいぶ落ち着いてしまい、そんな中で唯一の「現存シリーズ」がどうやらこの池松金田一シリーズらしいぞという現状において、どうしてもこのシリーズは、なんとかして続いてほしいんですよね。そして、まぁ吉川ゆりりんシリーズのファインプレーのおかげもありましたが、現在、昭和以来のファンが涙を流して喜んでいる角川文庫レーベルの復刊ラッシュは、ひとえにこの池松金田一シリーズの孤軍奮闘によるものが大きいわけなのです。私とて、この大恩を忘れるほど無節操ではないつもりのですが、であるからこそ! 池松金田一シリーズには、なんとしても第1・2シーズンのクオリティをしっかり維持した上で存続していただきたいと切望するのです。たのむよホントに!
ちなみに、私の中での演出3人衆それぞれのベスト作品は、宇野演出が『黒蘭姫』、佐藤演出が『華やかな野獣』、渋江演出が『百日紅の下にて』になります。その中でもベスト・オブベストは『百日紅の下にて』になるでしょうか。やっぱ嶋田久作さんは最高だ!!
つまるところ私が申したいのは、なにもこの3人のレギュラー体制にこだわる必要はない、演出のコンペティション形式になってもいいから、いちばん大切なのは「横溝正史作品の面白さ、すばらしさを伝えること」なんじゃないのか?ということなのです。「原作にほぼ忠実に映像化」って、そういうことでしょう?
そして、『犬神家の一族』という例外もありましたが、映像化するのは是非とも、横溝ワールドの中の「埋もれた名作」であってほしいのです。そしてそして!そうである以上、「原作小説よりも先に映像化された作品を観る人が多い可能性が高い」ということのハードルの高さを今一度、確認していただきたいのです。映像化の先例がある『女怪』のようなパターンもあるでしょうが、そこはそれ、1976年版『犬神家の一族』や1977年版『八つ墓村』ほどの認知度はないでしょう。なのならば、我々こそが、原作小説の面白さを先陣切ってこの令和の御代に満天下に知らしめるパイオニアなのだ!という自負と責任を忘れないでいただきたいと思うんだなぁ!!
だからこそ、現行の演出のお3方は、横溝先生の原作小説の映像化という大偉業を決して作業ルーチンにせずに、「これ、どうしても面白く映像化できねぇな……」とちょっとでも感じたのならば、演出の席を後進に譲ってとっとと自分のやりたいお仕事に邁進していただきたいのです。もっともっとおもしろく映像化できる才能のある方は、きっと必ずおられるでしょうから。
あと、あんまり、俳優として他の方の演出作品にチラッと出演みたいなファッキンど~でもいい遊びなんかチャラチャラやってないで、ご自分の演出に専念していただきたい、とも思います。ぜんぜん面白くないし。
この池松金田一シリーズって、再放送する時に池松さんと演出3人衆とかプロデューサーさんとかが集まって、制作時の裏話をするおまけがつきますよね? 今回の第3シーズンのアフタートークが楽しみですね~。どんな言い訳がとび出すのでしょうか。お通夜みたいになってないといいんだけど。
なんか、つづっていくに従ってこわい方向にボルテージが上がっているような気がするので、キーキー言うのはここまでにしておきたいのですが、要は、ちょっぴり動脈硬化と血のドロドロ化におちいりつつある池松金田一シリーズに思い切った変革をお願いしたいというのが、私の第3シーズンを観た正直な感想なのです。
リアルタイムでこの第3シーズンのオンエアを観た直後、はっきり言って少なからず落ち込んじゃいましたからね……3作別々に感想を記事にしたいことは観る前から心に決めてワックワクしていたのですが、ちょっとこれど~するよオイ!?みたいな。ガックシときちゃいましたよ。それだけ期待値が上がっちゃってたんですね。
ホントね、この直後のNHK BSプレミアムの『プレミアムシネマ』で放送された映画が、あの伝説のカルトアニメ『ファンタスティック・プラネット』だったからなんとか回復できたものの、そうとうの精神的ダメージを受けちゃいましたよ。『ファンタスティック・プラネット』サイコー!!
実はこうまでいろいろと言ってきたのは、本心を白状しますと、そろそろ池松金田一の「正統長編」が観た~い!というファン心理もムクムクと首をもたげてくるからなんですよね。短編を30分サイズでこつこつ映像化させていくのもいいのですが(『金田一耕助の冒険』の全作映像化もいいよね!)、せっかく1時間30分の放送枠があるのならば、『幽霊男』とか『夜の黒豹』の1本ロング映像化なんかも非常にステキだと思うんですよね~!! そして、行き着く究極の夢は、横溝先生の金田一もの長編小説の中で最も不遇の状況にある、あの『白と黒』の初映像化(ラジオドラマ化はあったらしいけど)よ~!! ウヒョ~、私の存命中に、是非ともこの目で観てみたいぃ~。
BS プレミアムでの長谷川金田一や吉岡金田一の生存確認がとれない今、池松金田一で短編と長編を一本化してもいいじゃないか! ひょっとすると、『八つ墓村』の直後の事件である『女怪』というチョイスは、吉岡金田一から池松金田一への「継承」という意味合いが込められていたのでは!? なるほどねェ~。ところで、吉岡金田一版『八つ墓村』のエピローグで匂わされていた『悪魔の手毬唄』のほうは、いつになるんですかね……? まぁ、加藤シゲアキ版で観たから、別にいいけど。吉岡金田一、とにかく目が怖かったから好きだったんだけどなぁ~。
んまぁともかく、ぐだぐだとイヤミったらしいことも申しましたが、池松金田一シリーズさまには、どういった形であれ、今後も何としても継続していただきたいと思います。池松さんも、『シン・仮面ライダー』主演もあることですし、今後めきめきと他のお仕事殺到で忙しくなるでしょうが、飽きずに是非ともご愛顧いただきたいと思います。
がんばれけっぱれ、池松金田一シリーズ!!
≪特別ふろく まだまだストックぞっくぞく!! 角川文庫でまだ復刊されていない横溝正史作品リスト≫
※エッセイ集、映画のシナリオは除く
『幽霊座』(金田一もの)、『仮面劇場』(由利麟太郎もの)、『吸血蛾』(金田一もの)、『女が見ていた』、『夜光虫』(由利麟太郎もの)、『悪魔の設計図』(由利麟太郎もの)、『毒の矢』(金田一もの)、『金田一耕助の冒険』(金田一もの)、『花園の悪魔』(金田一もの)、『幻の女』(由利麟太郎もの)、『呪いの搭』、『恐ろしき四月馬鹿』、『刺青された男』、『双仮面』(由利麟太郎もの)、『ペルシャ猫を抱く女』、『塙侯爵一家』、『誘蛾燈』、『悪魔の家』(由利麟太郎もの)、『芙蓉屋敷の秘密』、『殺人暦』、『青い外套を着た女』(由利麟太郎もの)、『空蝉処女』(由利麟太郎もの)、『死仮面』(金田一もの)、その他『迷宮の扉』や『怪獣男爵』などのジュブナイル16タイトル