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『軍師官兵衛』  視聴メモ 第42回『太閤の野望』

2014年11月21日 10時23分07秒 | 日本史みたいな
『軍師官兵衛』第42回『太閤の野望』(2014年10月19日 演出・本木一博)


登場する有名人・武将の『信長の野望』シリーズでのだいたいの能力評価(テロップ順)

黒田 官兵衛 孝高  …… 知力84、統率力67
 (演・岡田准一)

徳川 家康      …… 知力102、統率力65
 (演・寺尾聰)

黒田 長政      …… 知力77、統率力63
 (演・松坂桃李)

浅井 茶々姫     …… 知力16、統率力21
 (演・二階堂ふみ)

母里 太兵衛 友信  …… 知力44、統率力80
 (演・速水もこみち)

後藤 又兵衛 基次  …… 知力14、統率力75
 (演・塚本高史)

石田 三成      …… 知力92、統率力60
 (演・田中圭)

井伊 直政      …… 知力69、統率力81
 (演・東幹久)

小西 行長      …… 知力72、統率力48
 (演・忍成修吾)

豊臣 秀次      …… 知力32、統率力35
 豊臣秀吉の甥。関白。(演・中尾明慶)

増田 長盛      …… 知力85、統率力37
 (演・有薗芳記)

福島 正則      …… 知力45、統率力83
 (演・石黒英雄)

加藤 清正      …… 知力63、統率力81
 (演・阿部進之介)

宇喜多 秀家     …… 知力50、統率力61
 宇喜多直家の嫡男。秀吉の養子でもある。(演・武田航平)

浅野 長吉      …… 知力74、統率力62
 (演・長森雅人)

小早川 隆景     …… 知力83、統率力77
 (演・鶴見辰吾)

豊臣 秀吉      …… 知力95、統率力94
 (演・竹中直人)


ざっとの感想

○鶴松丸の夭逝、そして大陸出兵の直前という、ギリギリのタイミングで豊臣秀次がやっと初登場! 遅い!! でも、間に合った!
 秀次の「豊臣家の数少ない貴公子のひとり」という存在感や、そのあまりにも頼りないキャラクターをよりドラマティックに『軍師官兵衛』に組み込んでいくのならば、やはり秀吉 VS 家康の歴史的決戦だった小牧・長久手合戦から登場したほうがおもしろかったと思うのですが……いつもの歴史ドラマど~り、まごうことなき「秀吉の傀儡」という意味合いで出てきましたね。初シーンではセリフもなしか……死兆星が日中でもくっきり目視できるレベルの哀しさですね。
 でも、演じている俳優さんが今をときめく「味わい深い脇役界の貴公子」中尾明慶さんなんですから、今後の秀次の活躍シーンが待ち遠しいですね。まぁ、出番はそんなに多くはないでしょうけれども……側室の最上駒姫、出てきてくれるかな……

○「国際戦争のための拠点要塞」という、日本史でもそうとう珍しい目的で建造された肥前国名護屋城は、やっぱり豊臣政権時代の大坂城や徳川政権時代の江戸城・名古屋城に匹敵するかそれ以上の威容を誇っていたのではなかろうかと思うのですが、内観はわかったから、できれば外観のほうを、ちょっとでいいのでドラマの中でおがませていただきたいです……そのうち、CG で製作したものが登場するかしら!?

○絵に描いたようにイケメンな宇喜多秀家も初登場! あなた、ほんとにあの陣内直家の息子さんなのか!? そこはかなくただようバカっぽさも、まさにけがれを知らぬ若殿って感じで、非常に絶妙なキャスティングですよね。宇喜多秀家と豊臣秀次は、まさに豊臣政権の光と影のような関係にありますからね。

●おい、小西行長! 「先陣は小西行長殿。」の宣告に「ニヤリ。」じゃねーだろーが!! 誰のせいでこんな急ごしらえな戦争になったと思ってんだバカヤロー!!
 それは「前線で何かあったら、日本に帰ってくるなよ♡ 」という秀吉からのメッセージなんじゃないのか? 海外事情はどうなのか知りませんが、日本の歴史上の多くの戦争で前線に送り出されるのは、だいたい「裏切る可能性がある」とか「ここで功績を残しとかないとあとがない」とかいう、けっこうヤバめな立場の武将だって相場が決まってますからね。そんなに名誉なことじゃあないと思うんですが……
 ここの行長は、やっぱり千利休切腹の遠因にもなった先週の最低人間っぷりを引き継いで、ダーイシの視線に冷や汗をかきながら「ハイッ、誠心誠意、がんばらせていただきまっしゅ!!」と震え声で叫ぶのが正解なのではないのでしょうか。
 「ニヤリ。」はわけわかんないですよねぇ。二重人格か、脚本のキャラクター造形がぐずぐずなのかのどっちかですよね。

●官兵衛と小早川隆景という、当時の日本で最高峰の司令官2人の提案した修正案に不満をつのらせるダーイシもダーイシですけど、「うん、じゃあ先陣は交代制で。」と、いとも簡単に太閤の意思をねじ曲げる秀家くんも秀家くんですよ。
 いや、そこはやっぱり軍師'S の意見がいちばん正しいわけなんでしょうが……そんな、いちいち各武将のメンツを考えなきゃ動けない遠征軍なんて、出陣する前からダメだ、こりゃ!!

○わずかな時間ながらも、渡海中のゲーゲーシーンをちゃんと映像化した製作陣に拍手を送りたいです。うん、そこは大事ですよ。
 母里友信と後藤基次でさえダメなのに、井上之房が平気な顔をしてにぎりめしを食べているという人選もいいですよね。有岡城救出作戦でもそうだったけど、井上さんはホントにひとりだけいいところをかっさらっていくな!

●制作上の都合でたぶんそうなるだろうなぁ、とは思っていたんですが、やっぱり、大陸出兵の戦場シーンが日本軍の進撃ばかりを簡単に映してナレーション処理するばかりで、相手である李氏朝鮮王国軍の軍装や防戦のもようがさっぱり描写されてないのは、やっぱり残念だったらありゃしねぇ!!
 予算上も放送スケジュール上も、そして現代における国際関係上もキビしいだろうことはよくわかるのですが……もうひとこえ、いけなかったかしらねぇ!?

●李氏朝鮮王国の首都・漢城が陥落したという報告を聞きながらも、「王を逃がしたか……」と落胆の色を隠さない官兵衛。さすがですね。
 でもよくよく考えてみれば、戦争で大将が死亡するなんてことはどこの国の歴史をひもといても滅多にないことですし(それこそ今川義元か龍造寺隆信くらい?)、たとえ死亡しても、その後継者がどこかで健在だったら戦争は終わらないわけです。その上さらに、アジア大陸は日本どころじゃなく逃げ放題な広さなんですからね……
 つまり、「首都が陥落した」というニュースを聞いただけで狂喜する秀吉、という描写は、あまりにも秀吉を馬鹿にしすぎた虚構なんじゃないか、と思うんだなぁ。いくらなんでも、そんなにボケてはいないと思うんだけど……

○長政「このひと月、敵の水軍に阻まれ、何も届いておりませぬ……」
 うをを、「敵の水軍」!? いま、「敵の水軍」って言った!? それ、李舜臣(イ・スンシン)じゃね!? そこよ! そこをどこよりも先に映像化してくれって言いたいのよ~!!
 でも最近の研究によれば、朝鮮水軍は日本軍の兵糧補給にとってそれほど決定的な脅威にはなっていなくて(完全な分断状態にはならなかったらしい)、とにかく問題だったのは「日本軍の補給範囲の急激すぎた拡大」と「朝鮮王国の深刻な食糧不足」だったのだそうで。前線まで兵糧が行き渡らないんですよね。『信長の野望』でも初心者がよくやってしまうイージーミスです。
 戦いに勝っても勝っても実入りが減るだけなんだったら、そりゃあ当時世界有数の軍事力を誇った日本軍だって、戦意も喪失しますよね。
 官兵衛が言うように「大義がない」から戦争に負けるんじゃあないんです。「ごはんがない」から戦争に負けるんです。

○何のためにのこのこ顔を出してきたのかわからないダーイシにますますイライラのつのる前線軍議なわけですが、一見無表情なだけのように見える黒田長政のつぶらな瞳が、まぁ~怖い怖い。
 これはまさに、あの城井鎮房を自ら斬り捨てるというエピソードを経た、『軍師官兵衛』の松坂桃李さんが演じているからこその殺気ですよね。見事な緊迫感でした。

 ところで、あの長政と後藤基次の不仲のきっかけになったという「基次見てるだけ一騎打ち」エピソードは、映像化されないんでしょうか? おもしろいのになぁ、映像化されたら。

●豊臣秀次の登場や、弟・秀長の死がかなり淡白に扱われているということもそうなんですが、秀吉周辺の人間模様ということになると、最近のドラマではまず確実に出てくるはずの「秀吉の生母・なか」や「秀吉の実姉・とも」が意図的にお話に顔を出さないという『軍師官兵衛』の采配が、今週も如実に現れていましたね。母ちゃんが死んだという、その直後のシーンで「めでたけれェ~♪」と能のお稽古とは……
 考えてみれば、秀吉一家だけの話にとどまらず、『軍師官兵衛』には、『秀吉』であたたかく描かれていた「ファミリー」の要素がかなり削がれているような気がします。それは、さかのぼれば柴田恭兵さんが退場したあたりから顕著になりましたよね。官兵衛と長政の関係も、ずいぶんとドライだし……
 その反面で「夫婦」をクローズアップするという趣向は、「官兵衛&お光」、「信長&お濃」、「秀吉&お寧」、「長政&お糸」あたりで強調されていたような気がするのですが、それも最近はあんまり観られなくなってますよね。「秀吉と茶々」の関係は、あれは夫婦じゃなくて「永遠にすれ違い続ける恋愛」ですから。秀吉が道化になるばかりで深みがないんだよなぁ。肝心の茶々も一向に魅力的にならないし。

 それで、じゃあ今はなにが『軍師官兵衛』の特色になってるのかっていえば、「ダーイシのジェラシー」と「寺尾家康の右目」でしょ……もっとなんかさぁ、フレッシュな見どころはないもんかねぇ!?

●「碁」だの「無断帰国」だのと……あまりにも姑息な手段で官兵衛を陥れるダーイシの短絡さ加減、ここにきわまれり! おまえは『小公女セーラ』の意地悪な女の子か!?
 いや、いくらなんでも、そんなに自分の利益のことしか考えてないひどい人じゃあなかったと思うんですが……全ては、関ヶ原合戦に通じる「負けフラグ」なのか!? 小西のキャラクターのまれに見るひどさも、そこなのかなぁ、結局。


結論、「第43回がとてもたのしみです。」

 「王を逃がしたか……」という発言からもわかるように、いちおう平和、平和と言いつつも、始めたからには確実に戦争に勝つことを目指す官兵衛ではあったのですが、全体的に時間の流れを休戦にササーッと持っていったために、「大戦争に積極的に参加した黒田家」というポイントがわざとかすむという、なんとも玉虫色なエピソードになってしまいました。まさに、「悪いところはぜんぶ秀吉と三成にひっかぶってもらう」という、本編の三成もかくやという脚本テクニックでしたね。ほら、だから「名将」と「戦争反対」なんて共存しっこないんですってば!

 余談ですが、私が歴史に興味を持つきっかけとなった記憶のひとつに、私が小学校高学年だったか中学生だったころに NHKの衛星放送第2で放送されていた、韓国の歴史ドラマ『朝鮮王朝500年 壬辰倭乱』(1985年制作)にドはまりした、というものがありました。
 これはタイトルのとおり、「壬辰倭乱(イムジンウェラン 文禄役のこと)」を朝鮮王国の視点からドラマ化し、物語の主人公を救国の英雄と今なおたたえられる李舜臣にしたという作品で、今週の『軍師官兵衛』のようなていたらくしかお目にかかれない日本人からしてみれば、まさしく「かゆいところに手の届く」内容になっていました。まぁ、朝鮮王国の当時の風俗やリアクションがよくわかるという反面、日本軍の軍装が「え……源平合戦? 段ボール製?」と感じられなくもない違和感もあったのですが、そんなことはどうでもいいでしょう。

 李舜臣の波乱の生涯のおもしろさや、日本人から観たときの内容の新鮮さもさることながら、私が当時、ガキンチョだてらにいたく感心したのは、制作した国からしてみれば悪逆非道の人でなしに見えてもおかしくはなかった豊臣秀吉の人間性を、日本制作のドラマと遜色ないほどに立体的かつ魅力的に造形して、「戦争をせざるをえなかった孤独な老王」として活かしていた、という点でした。確か、泉谷しげるさんみたいな人間味のある俳優さんが好演していたと記憶しています。もちろん、秀吉を無言でおびやかす徳川家康(顔は五木ひろし系)の存在もしっかり描写されていました。
 ミニチュア撮影ながらも迫力満点な海戦シーンもすばらしかったのですが、やっぱり、敵も味方も同じようにわけへだてなく活写するというそのスタイルに、私はかなり感動した記憶があり、あれから20年ほどたった今でも、私の心の中には強く、「歴史ドラマかくあるべし。」という教えが生きているような気がするわけです。


 つまりなにが言いたいのかといえば……最近の『軍師官兵衛』、視野せますぎ!! ここまでやったら NHK、いつか必ず石田三成が主人公の大河ドラマを作って穴埋めしろよ~!!

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