こんばんは。みなさん、今日も一日お疲れさまでした。
今日は時間があいたので、久しぶりに一人カラオケに行ってきました。
いいですよ、一人カラオケ! 私の場合はだいたい二時間ぶっ続け、間奏の時間に次の曲を設定して、ずっと何かの曲を唄っているという楽しみ方です。時間制なんで、休んでるのがもったいなく感じちゃうんですね……唄っている間は気づかないのですが、終わったときには声がかすれてしまって。ついつい夢中になってしまうんです。今日はデレク・アンド・ドミノスの「いとしのレイラ」を重点的に唄ってみました。
さて、歌を唄うのは好きなんですが、歌う曲があまりに素敵な名曲だと、困ったことが一つ。
唄っている最中に涙ぐんでしまって、ただでさえ怪しい音程がますますとりづらくなってしまうんですね! 名曲というものは、本当に不思議な力が宿っているんだなぁと実感します。歌詞という形を通して、情景や心情ががものすごい速さで脳に入り込んできて、心をはげしく揺さぶる。言葉の持つ魔力とは、本当に素晴らしいものです。
言葉の魔力といえば、こういう思い出があります。
大学に入学したばかりで、生まれて初めての独り暮らしに右往左往していたころの話。
私そうだいは、夢見る少年少女が高い確率で発症するという青春の病「寺山修司熱」にうかされていました(同時併発・大槻ケンヂ熱)。
「言葉の魔術師! かっけぇ!」
幸運なことに私は東京に近い大学に入学できたので、毎日のように新宿の紀伊国屋書店に通っては、寺山修司の著作や彼についての評論などを買いあさっていました。
「恐山イカす~! 書を捨てます! 町に出ます!」
そんな中で手に入れたのが、寺山修司が監督・脚本をつとめた映画『田園に死す』(1974年)のビデオです。
まぁ、重度の寺山熱に冒されていた人間にとっては、ちと刺激の強すぎる内容でしたね。とにかく出演している人達の一挙手一投足、発するセリフの一言一言にいちいちしびれていました。
特に一番イチコロになったのが、こんなシーンで出てきたあるセリフです。
物語の中盤、主人公の少年は、近所の厳格な大地主の家にとついできた嫁(演・八千草薫 美人!)との駆け落ちを計画します。嫁は、姑で大地主一族の現在の当主でもある老婆(演・原泉 悪そう!)の陰湿ないじめを受けていて、少年はなんとか彼女を助けてやりたかったのです。そしてある晩、大地主の家族全員が大広間で夕食をとっているスキに、少年はあらかじめ嫁としめしあわせて開けてもらっていた窓から、嫁の部屋に忍び込むことに成功します。
ところが! 少年はあやまって部屋の中の物にぶつかり、大きな音をたててしまいます。
音は大広間にも聞こえてしまい、家族は食事の手をとめます。
「なんのおどだ?(舞台の設定上、青森弁です)」
一瞬表情のくもる嫁! それを見逃さなかったかのように、最も恐ろしい老婆の顔がおもむろに動き、鋭い眼光が嫁をロックオン! そこで一言!
「アンダルシアから聞こえたんでねぇの?」
え~!! 映画を観ていた私は天をあおぎました。アンダルシア!? なんでアンダルシア!? アンダルシアって、スペインのアンダルシア? 情熱の国から青森へズームイン?
最高だ……わけがわかんねぇ!! 寺山修司はやっぱり天才だ。
続きを言うと、この老婆の地球的スケールのセリフの受けての嫁のセリフは「……さぁ?」でした。うん、そうだよね。わかんないよね、さすがの八千草薫でも。
私はますます寺山修司にお熱になってしまったわけなんですが、実はこのエピソードには、あまりにも哀しすぎる結末があります。
引き続き寺山修司関連の本を集めていた私は、ビデオを買ったおよそ半年後に、今度は『田園に死す』の脚本が収録された映画シナリオ集を手に入れました。
例の「アンダルシア」発言の真意をいまだにつかめずにいた私は、喜々として問題の夕食シーンのページを探します。きっと何かの解説がされているに違いない、と。そして、見なければ良かった残酷すぎる真実を目の当たりにしたのです。
なんと、「アンダルシアから聞こえたんでねぇの?」のセリフは無かったのです! そのかわりに記されていたのは、
「あんたの部屋から聞こえたんでないの?」という一文でした。
あぁ~……青森弁だったからね……
あんたの部屋から聞こえたんでないの……あんだのへやからきこえたんでねぇの……あんだるひぇやからきこえだんでねぇの……あんだるしぇやからきこえだんでねぇの……アンダルシアから聞こえたんでねぇの!!
寺山さん、ぜんぜん関係なかったんだ……そらみみ~、あ~わぁ~。
私の中での寺山修司熱は、なぜか急速に冷めてゆきました。別に寺山さんは悪くないんですけどね。
その後、何度か『田園に死す』のビデオを見返してはみたのですが、あの頃の私を一番しびれさせた「アンダルシア」のセリフを老婆が語ることは、二度となかったのでした。
いやァ~、日本語って、ほんっとに、ふしぎですねェ! それじゃまた、お会いしましょう!
今日は時間があいたので、久しぶりに一人カラオケに行ってきました。
いいですよ、一人カラオケ! 私の場合はだいたい二時間ぶっ続け、間奏の時間に次の曲を設定して、ずっと何かの曲を唄っているという楽しみ方です。時間制なんで、休んでるのがもったいなく感じちゃうんですね……唄っている間は気づかないのですが、終わったときには声がかすれてしまって。ついつい夢中になってしまうんです。今日はデレク・アンド・ドミノスの「いとしのレイラ」を重点的に唄ってみました。
さて、歌を唄うのは好きなんですが、歌う曲があまりに素敵な名曲だと、困ったことが一つ。
唄っている最中に涙ぐんでしまって、ただでさえ怪しい音程がますますとりづらくなってしまうんですね! 名曲というものは、本当に不思議な力が宿っているんだなぁと実感します。歌詞という形を通して、情景や心情ががものすごい速さで脳に入り込んできて、心をはげしく揺さぶる。言葉の持つ魔力とは、本当に素晴らしいものです。
言葉の魔力といえば、こういう思い出があります。
大学に入学したばかりで、生まれて初めての独り暮らしに右往左往していたころの話。
私そうだいは、夢見る少年少女が高い確率で発症するという青春の病「寺山修司熱」にうかされていました(同時併発・大槻ケンヂ熱)。
「言葉の魔術師! かっけぇ!」
幸運なことに私は東京に近い大学に入学できたので、毎日のように新宿の紀伊国屋書店に通っては、寺山修司の著作や彼についての評論などを買いあさっていました。
「恐山イカす~! 書を捨てます! 町に出ます!」
そんな中で手に入れたのが、寺山修司が監督・脚本をつとめた映画『田園に死す』(1974年)のビデオです。
まぁ、重度の寺山熱に冒されていた人間にとっては、ちと刺激の強すぎる内容でしたね。とにかく出演している人達の一挙手一投足、発するセリフの一言一言にいちいちしびれていました。
特に一番イチコロになったのが、こんなシーンで出てきたあるセリフです。
物語の中盤、主人公の少年は、近所の厳格な大地主の家にとついできた嫁(演・八千草薫 美人!)との駆け落ちを計画します。嫁は、姑で大地主一族の現在の当主でもある老婆(演・原泉 悪そう!)の陰湿ないじめを受けていて、少年はなんとか彼女を助けてやりたかったのです。そしてある晩、大地主の家族全員が大広間で夕食をとっているスキに、少年はあらかじめ嫁としめしあわせて開けてもらっていた窓から、嫁の部屋に忍び込むことに成功します。
ところが! 少年はあやまって部屋の中の物にぶつかり、大きな音をたててしまいます。
音は大広間にも聞こえてしまい、家族は食事の手をとめます。
「なんのおどだ?(舞台の設定上、青森弁です)」
一瞬表情のくもる嫁! それを見逃さなかったかのように、最も恐ろしい老婆の顔がおもむろに動き、鋭い眼光が嫁をロックオン! そこで一言!
「アンダルシアから聞こえたんでねぇの?」
え~!! 映画を観ていた私は天をあおぎました。アンダルシア!? なんでアンダルシア!? アンダルシアって、スペインのアンダルシア? 情熱の国から青森へズームイン?
最高だ……わけがわかんねぇ!! 寺山修司はやっぱり天才だ。
続きを言うと、この老婆の地球的スケールのセリフの受けての嫁のセリフは「……さぁ?」でした。うん、そうだよね。わかんないよね、さすがの八千草薫でも。
私はますます寺山修司にお熱になってしまったわけなんですが、実はこのエピソードには、あまりにも哀しすぎる結末があります。
引き続き寺山修司関連の本を集めていた私は、ビデオを買ったおよそ半年後に、今度は『田園に死す』の脚本が収録された映画シナリオ集を手に入れました。
例の「アンダルシア」発言の真意をいまだにつかめずにいた私は、喜々として問題の夕食シーンのページを探します。きっと何かの解説がされているに違いない、と。そして、見なければ良かった残酷すぎる真実を目の当たりにしたのです。
なんと、「アンダルシアから聞こえたんでねぇの?」のセリフは無かったのです! そのかわりに記されていたのは、
「あんたの部屋から聞こえたんでないの?」という一文でした。
あぁ~……青森弁だったからね……
あんたの部屋から聞こえたんでないの……あんだのへやからきこえたんでねぇの……あんだるひぇやからきこえだんでねぇの……あんだるしぇやからきこえだんでねぇの……アンダルシアから聞こえたんでねぇの!!
寺山さん、ぜんぜん関係なかったんだ……そらみみ~、あ~わぁ~。
私の中での寺山修司熱は、なぜか急速に冷めてゆきました。別に寺山さんは悪くないんですけどね。
その後、何度か『田園に死す』のビデオを見返してはみたのですが、あの頃の私を一番しびれさせた「アンダルシア」のセリフを老婆が語ることは、二度となかったのでした。
いやァ~、日本語って、ほんっとに、ふしぎですねェ! それじゃまた、お会いしましょう!
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