
総務省の担当者(左)から行政指導を受けるLINEヤフーの出沢剛社長(5日午前、東京都千代田区)
総務省は情報漏洩が相次いでいるLINEヤフーに対する行政指導で、ソフトバンクにLINEヤフーへの資本的な関与を強めるよう異例の「口頭要請」を行った。
業務委託先の韓国ネット大手ネイバーはLINEヤフーの大株主でもあり、現行の経営体制が情報管理の安全確保を妨げていると判断した。
LINEはおよそ9600万人の利用者を抱える。地方自治体なども行政手続きの申請や決済に使う重要な「社会インフラ」になっている。
LINEヤフーは2023年11月に同社のサーバーが攻撃され、LINEアプリの利用者情報など44万件ほどが流出した可能性があると公表した。
その後、件数を約51万件に修正した。24年2月には韓国の業務委託先から従業員の情報約5万7000件が流出した可能性があることも判明した。
総務省はこのうち51万件の流出事案について、電気通信事業法で通信事業者に適正な扱いを求める「通信の秘密」の漏洩と認定した。再発防止策の実施状況を4月1日までに報告し、少なくとも1年間は四半期に1度、取り組みを定期報告するよう要請した。
LINEヤフーに64.4%を出資する中間持ち株会社のAホールディングス(HD)は、ソフトバンクとネイバーがそれぞれ50%ずつ出資する。
総務省は行政指導でLINEヤフーに「資本的な支配関係の見直し」を含めて再発防止策を講じるよう厳重注意した。ソフトバンクにはAHDやLINEヤフーへの出資など、資本関係の関与を強めるよう求めた。

行政指導の文書では、LINEヤフーのシステムやネットワークの構成に関して、業務の委託相手であるネイバーへの「強い依存」があると指摘した。
一部システムの認証基盤が共通になっており、旧LINEの従業員のIDなどもネイバーの管理システムに保存していた。
総務省は事案解明のため、電気通信事業法に基づく報告を1月に2度求めた。期限内に十分な回答が得られないことも多かったという。
総務省はアクセスログなど必要な情報の多くがネイバーに存在したため、情報収集や分析の点でも「依存関係」が支障を生んだと分析する。
LINEヤフーは、一部システムの開発・運用・保守を依然として大株主にあたるネイバーに委託している。
顧客向けサービスの体制を見直すか明らかにしておらず、総務省はネイバーの「支配的」な資本関係の見直しが必要だとみる。

自民党内からは「LINEヤフーの経営責任を問うべきだ」といった声もあがる。LINEヤフーは経済安全保障推進法で特定社会基盤事業者に指定されており、情報管理の甘さは経済安保上のリスクにもなる。
5日の行政指導を受けて、ソフトバンクは「親会社として実効的なセキュリティーガバナンス確保の方策を検討していく」との声明を出した。ネイバーは「保安策強化のためにLINEヤフーと協力していく」とコメントした。
総務省が言及した資本関係の見直しは「口頭要請」で強制力はない。ソフトバンクにとってもそのハードルは高い。
ソフトバンクはAHDの取締役7人のうち過半にあたる4人を送り込んでいる。会社法上ではすでにLINEヤフーの親会社だ。
LINEヤフーの足元の時価総額は3兆円弱で、ソフトバンクがAHDの保有比率を高めるには数千億円単位の投資が必要となる。
LINEヤフーのサイバー対策強化のために、ソフトバンクが多額を投じることに対して市場からの支持が得られるかも見通せない。
ソフトバンクの宮川潤一社長は過去の決算会見などで「LINEヤフーは子会社だが、上場企業でもあるのでコメントは控える」との発言を繰り返してきた。
上場企業同士のため必要以上の口出しは避けてきた経緯がある。親子上場という足かせがあるなかで、ソフトバンク主導で強引にLINEヤフーの社内改革を進めることは難しいのが実情だ。