携帯翻訳端末のポケトークは85言語に対応する。日本や米国、欧州、東南アジアなど世界で販売を伸ばす
携帯翻訳端末を手掛けるポケトーク(東京・港)は2025年中に新規株式公開(IPO)する。
東京証券取引所のプライム市場への上場を目指す。
新型コロナウイルス禍後にビジネスや観光向けに通訳需要が増えているほか、米国や欧州では公共施設の外国人や移民対応に使われている。調達した資金は成長投資にあてる。上場時の時価総額は約1000億円になるとみられる。
ポケトークは端末に話しかけると人工知能(AI)が音声を認識して別の言語に変換する仕組み。85言語に対応し、同時通訳並みの速さで自動翻訳してテキストと音声を出力できるのが特徴だ。
パソコン用ソフトウエア販売のソースネクストが17年に携帯翻訳端末事業に進出し、22年にポケトークとして分社した。
ソースネクストは現在、ポケトーク株を84%保有し、上場に向けてこのうち一部を売り出す。新規株式公開後も過半数の株式を保有し続け、連結子会社にとどめる。
ポケトークは新株を発行し、調達資金をAIの研究開発や販路拡大などにあてる。上場準備のため主幹事にみずほ証券を選定した。
手持ちのスマートフォンやタブレットで利用できる自動翻訳サービスも始めた
ポケトークは日本のほか、米国や欧州、タイやマレーシアといった東南アジアなど世界で販売中で、17年の発売から累計で100万台を出荷した。
国内では観光施設での外国語対応などインバウンド(訪日外国人)向けに販売が堅調なほか、海外では病院や学校、役所の外国人や移民対応向けに売れ行きが伸びている。
23年7月にはソフトバンクと業務提携し、同社の国内外の販路を使って販売台数をさらに100万台上乗せする計画を打ち出した。11月には専用端末を使わない自動翻訳のネットサービスも始めた。27年12月期には売上高で約500億円、純利益約75億円を見込む。
東証プライム市場への上場を狙うが、投資家からの評価が高ければ米ナスダック市場を上場先に選ぶ可能性もある。
AI通訳サービスでは「Google翻訳」や「Microsoft翻訳」など、スマートフォン向けの無料サービスが普及している。
ポケトークは上場によって資金を確保して、新たな端末やネット翻訳サービスも含めて技術開発のスピードを速める。
23年は米欧の金融引き締めなどで資金調達環境が悪化し、世界的にIPO投資が低調となったが、日本市場では半導体製造装置のKOKUSAI ELECTRICや楽天銀行、住信SBIネット銀行など上場時の時価総額が1000億円を超える企業が相次いだ。
足元では大型株に比べて出遅れていた新興株にも物色が広がっている。こうした株式相場の活況も新規上場準備を始める決断を後押しした。