Renaissancejapan

哲学と宗教、財閥、国際政治、金融、科学技術、心霊現象など幅広いジャンルについて投稿しています

ルネサス、逆風下の市況抵抗力 減益でも利益率3割維持

2024-04-25 20:09:01 | エレクトロニクス・自動車・通信・半導体・電子部品・素材産業

 

ルネサスエレクトロニクスが半導体の市況悪化に対する抵抗力を示している。

25日に発表した2024年1〜3月期連結決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期比24%減の798億円となった。一方、営業利益率(非経常項目などを除くベース)は3割台を維持した。安定した収益力を身につけ、M&A(合併・買収)など成長投資に打って出る。

 

ビジネスTODAY
ビジネスに関するその日に起きた重要ニュースを、その日のうちに深掘りします。過去の記事や「フォロー」はこちら

「(半導体市況の)ダウンサイクルの中でも及第点を取れた」。ルネサスの柴田英利社長は同日のオンライン会見でこう話した。

 

中国市場を中心に産業機器などが低迷し、売上高にあたる売上収益は2%減の3517億円と減った。

一方、利益率は32.3%と、同社が長期目標として掲げる25〜30%を上回った。

 

 

株価が一時5%上昇

23日に1〜3月期決算を発表した米車載半導体大手のテキサス・インスツルメンツは純利益が35%減だった。

営業利益率は35.1%とルネサスよりも高いものの、前年同期と比べると9ポイント下落した。ルネサスの落ち込みは相対的に低かったことが好感され、25日のルネサス株は午前9時の決算発表後に一時前日比5%上昇する場面があった。

 

同社はかつては半導体市況の影響を受けやすい収益体質で、市況が悪化すると利益率も下がっていた。

 

 

21年までに相次ぎ実施した大型M&Aが収益構造の改善につながった。

17年には米インターシル、19年に米インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)、21年に英ダイアログ・セミコンダクターといった半導体メーカーを買収し、圧力や温度などのデータを処理するアナログ半導体の技術を手に入れた。

 

ルネサスが強みを持つ機器の動きを制御する「マイコン」の技術と、買収先の半導体製品を組み合わせ、新たなシステムを顧客に提案する。注文が来てから半導体を単品で売るのに比べ、付加価値を付けやすい。

システムに組み込んだ部品が正しく動くかの検証はルネサス側で済ませているため、顧客が新たな製品を開発する時間を短縮できる。産業機器や通信などの市場も開拓し、半導体の市況が変動しても営業利益率は大きく振れなくなった。

 

特約店との取引見直し

自社と顧客の持つ在庫管理を徹底した効果も出てきた。その1つが特約店と呼ばれる専門商社との取引の見直しだ。

生産計画では特約店から受け取る受注予測などを参考にする。契約社数を絞ることで商流を把握しやすくし、在庫が膨らむリスクを抑制する。

 

ルネサスは10年4月に国内市場向けに約30社の日系商社と契約していた。収益性や受注予測の精度が優れる特約店に絞り、直近の取引は5社前後まで減った。

取引を継続する特約店でも扱う製品を絞るなどしてきた。24年9月には新たに半導体商社の新光商事との特約店契約を終了する。

 

ルネサスが同日公表した24年1〜6月期の売上収益(非経常項目などを除いた非GAAPベース)は前年同期比3%減の7067億円前後を見込む。営業利益率は3.5ポイント減の31.4%とした。

柴田社長は「1〜6月期が市況のボトム(底)なのは変わらない。産業機器やモバイル向けは当面顧客の在庫調整が続く」と話す。

 

ルネサスは次の成長に向けて、半導体の開発環境などソフトへの投資を拡大している。

24年2月には約9000億円で米ソフトメーカーのアルティウムを買収すると発表した。各国当局の承認などを得たうえで24年中に買収を完了する予定で、巨額買収に向けて自己資本を蓄積する必要がある。市況変動への抵抗力を保てるかが、次の成長の条件となる。

(向野崚)

 

 


アルプスアルパイン、5GとWeb3.0組み合わせ実証

2024-04-25 20:02:47 | エレクトロニクス・自動車・通信・半導体・電子部品・素材産業


アルプスアルパインなどは5GやWeb3を実装する実験を複合施設で実施する

 

アルプスアルパインなどは横浜市の複合施設で高速通信規格「5G」と次世代インターネット「Web3.0」を組み合わせた技術の実証実験を始める。

離れた場所から施設内の安全を確認したり、有事には駆けつけたりするサービスについて検証する。

 

フリービットの関連会社であるLTM(東京・渋谷)が運営する複合施設「LIVINGTOWN みなとみらい」(横浜市)で5月から7月にかけて実施する。インターネットサービスを手掛けるフリービットやNEC ネッツエスアイ(東京・港)も協力する。

アルプスアルパインは2023年3月、フリービットとWeb3.0を駆使した事業展開に向け、フリービットと資本業務提携を結んだ。アルプスアルパインは強みを持つ各種センサーや通信部品の用途拡大を進めている。

 

 

5G

 

 

 

 

 

日経記事202404.25より引用

 

 


キヤノン、微細化最先端に返り咲く AIチップ実装独占

2024-04-25 16:41:15 | エレクトロニクス・自動車・通信・半導体・電子部品・素材産業


ナノインプリントリソグラフィー装置を発売。極端紫外線(EUV)露光装置
に比べて低価格・低消費電力を訴求する(出所:キヤノン)

日経クロステック

キヤノンの半導体露光装置事業がかつての勢いを取り戻している。

フッ化アルゴン(ArF)液浸露光装置や極端紫外線(EUV)露光装置を事業化できず、オランダASMLやニコンとの開発競争に敗れた同社。ところがここにきて、生成AI(人工知能)を支える先端パッケージング向けの市場を総取りしている。

ナノインプリントリソグラフィー(NIL)装置を発売し、微細化の最先端にも返り咲く。フルラインアップで王者ASMLに対抗しようと、かつて撤退した通常のArF露光装置(ドライ露光装置)も開発を続け再参入の機会をうかがう。

 

半導体露光装置の金額ベースの市場シェアは、経済産業省の資料によれば足元でASMLが9割強を占める。

同社は台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子、米インテルなどの最先端工場に欠かせない、波長13.5ナノメートル(ナノは10億分の1、nm)のEUV露光装置市場を独占する。

露光波長別で1つ前の世代に当たるArF液浸露光装置(波長193nm)でも、ASMLは競合のニコンを大きく上回るシェアを持つ。液浸露光とは露光装置のレンズとウエハーの間を純水で満たし、純水にレンズの役割をさせることで通常の露光装置と比べ解像度を高める技術である。

 

メーカー各社は公表しないが、EUV露光装置の価格は200億〜300億円、ArF液浸露光装置は60億〜100億円ほどとみられる。ここにきてインテルが初号機を導入した、光の利用効率が高い高NA(開口数)EUV露光装置は、500億円に近いとの観測もある。

こうした高額な最先端装置で独り勝ちしていることが金額面でASMLが圧倒的シェアを握る理由だ。

ただし、5nm世代や3nm世代といった最先端の工場で使われているのはEUV露光装置やArF液浸露光装置ばかりではない。半導体の前工程(ウエハー工程)には数十もの露光工程が必要で、プロセスコストが高いEUV露光やArF液浸露光を使うのはクリティカルレイヤーと呼ばれる加工寸法が最小またはそれに近い層に限られる。

 

キヤノン光学機器事業本部副事業本部長の岩本和徳氏(半導体機器事業部長)は「例えば50層を露光する最先端半導体では、EUV露光を使うのは2〜3層、ArF液浸露光を使うのは最大10層ほどだろう」と話す。

加工寸法が比較的大きい層には、ArFドライ露光装置、フッ化クリプトン(KrF)露光装置(波長248nm)、i線露光装置(同365nm)などが使われる。価格はArFドライ露光装置が20億〜30億円、KrF露光装置が10億〜20億円、i線露光装置が5億〜10億円ほどとされる。

 

そしてキヤノンは「i線露光装置で8割ほど、KrF露光装置で3割弱の台数シェアを持つ」(岩本氏)。すなわちTSMCやサムスン電子などの最先端工場には、キヤノンのi線露光装置やKrF露光装置が多数導入されている。

微細化で最先端を走るEUV露光装置に注目が集まりがちだが、「i線露光装置やKrF露光装置を抜きに最先端半導体は製造できない」(同氏)。足元ではCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサー、シリコン(Si)や炭化ケイ素(SiC)製のパワー半導体向けの引き合いも強い。

 

先端パッケージング向けで業界標準握る

ここ数年でキヤノンが業界標準を握ることに成功したのが、2010年代に初号機を投入した後工程(パッケージング工程)向けのi線露光装置だ。

2.5次元/3次元実装と呼ばれる先端パッケージング工程において、再配線層やバンプ(金属端子)の形成に使う。

 

キヤノンは対応できる端子ピッチや処理能力で他社をしのぎ、「市場を独占している」(岩本氏)という。米エヌビディアのAI半導体向けなどで需要が急増し、TSMCやサムスン電子、インテルがこぞって力を入れる先端パッケージングの領域でキヤノンは独り勝ちしているのだ。

<picture class="picture_p166dhyf"><source srcset="https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO4714729015042024000000-1.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=638&h=773&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=ea1c927d84ca7d9599fb910b1ba8666e 1x, https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO4714729015042024000000-1.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=1276&h=1546&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=a4c81dee538dfe75b9c3d30970438b00 2x" media="(min-width: 1232px)" /><source srcset="https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO4714729015042024000000-1.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=638&h=773&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=ea1c927d84ca7d9599fb910b1ba8666e 1x, https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO4714729015042024000000-1.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=1276&h=1546&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=a4c81dee538dfe75b9c3d30970438b00 2x" media="(min-width: 992px)" /><source srcset="https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO4714729015042024000000-1.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=600&h=726&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=6107c3b8abcf834c37d2cbd288b91945 1x, https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO4714729015042024000000-1.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=1200&h=1453&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=7a858f258e7cc7b54384fef0deddfb5b 2x" media="(min-width: 752px)" /><source srcset="https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO4714729015042024000000-1.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=600&h=726&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=6107c3b8abcf834c37d2cbd288b91945 1x, https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO4714729015042024000000-1.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=1200&h=1453&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=7a858f258e7cc7b54384fef0deddfb5b 2x" media="(min-width: 316px)" /><source srcset="https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO4714729015042024000000-1.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=600&h=726&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=6107c3b8abcf834c37d2cbd288b91945 1x, https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO4714729015042024000000-1.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=1200&h=1453&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=7a858f258e7cc7b54384fef0deddfb5b 2x" media="(min-width: 0px)" /></picture>

 

半導体露光装置の金額ベースの市場シェアは、経済産業省の資料によれば足元でASMLが9割強を占める。同社は台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子、米インテルなどの最先端工場に欠かせない、波長13.5ナノメートル(ナノは10億分の1、nm)のEUV露光装置市場を独占する。

露光波長別で1つ前の世代に当たるArF液浸露光装置(波長193nm)でも、ASMLは競合のニコンを大きく上回るシェアを持つ。液浸露光とは露光装置のレンズとウエハーの間を純水で満たし、純水にレンズの役割をさせることで通常の露光装置と比べ解像度を高める技術である。

メーカー各社は公表しないが、EUV露光装置の価格は200億〜300億円、ArF液浸露光装置は60億〜100億円ほどとみられる。ここにきてインテルが初号機を導入した、光の利用効率が高い高NA(開口数)EUV露光装置は、500億円に近いとの観測もある。こうした高額な最先端装置で独り勝ちしていることが金額面でASMLが圧倒的シェアを握る理由だ。

ただし、5nm世代や3nm世代といった最先端の工場で使われているのはEUV露光装置やArF液浸露光装置ばかりではない。半導体の前工程(ウエハー工程)には数十もの露光工程が必要で、プロセスコストが高いEUV露光やArF液浸露光を使うのはクリティカルレイヤーと呼ばれる加工寸法が最小またはそれに近い層に限られる。

キヤノン光学機器事業本部副事業本部長の岩本和徳氏(半導体機器事業部長)は「例えば50層を露光する最先端半導体では、EUV露光を使うのは2〜3層、ArF液浸露光を使うのは最大10層ほどだろう」と話す。

加工寸法が比較的大きい層には、ArFドライ露光装置、フッ化クリプトン(KrF)露光装置(波長248nm)、i線露光装置(同365nm)などが使われる。価格はArFドライ露光装置が20億〜30億円、KrF露光装置が10億〜20億円、i線露光装置が5億〜10億円ほどとされる。

そしてキヤノンは「i線露光装置で8割ほど、KrF露光装置で3割弱の台数シェアを持つ」(岩本氏)。すなわちTSMCやサムスン電子などの最先端工場には、キヤノンのi線露光装置やKrF露光装置が多数導入されている。

微細化で最先端を走るEUV露光装置に注目が集まりがちだが、「i線露光装置やKrF露光装置を抜きに最先端半導体は製造できない」(同氏)。足元ではCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサー、シリコン(Si)や炭化ケイ素(SiC)製のパワー半導体向けの引き合いも強い。

 

先端パッケージング向けで業界標準握る

ここ数年でキヤノンが業界標準を握ることに成功したのが、2010年代に初号機を投入した後工程(パッケージング工程)向けのi線露光装置だ。2.5次元/3次元実装と呼ばれる先端パッケージング工程において、再配線層やバンプ(金属端子)の形成に使う。

キヤノンは対応できる端子ピッチや処理能力で他社をしのぎ、「市場を独占している」(岩本氏)という。米エヌビディアのAI半導体向けなどで需要が急増し、TSMCやサムスン電子、インテルがこぞって力を入れる先端パッケージングの領域でキヤノンは独り勝ちしているのだ。

 

半導体露光装置の金額ベースの市場シェアは、経済産業省の資料によれば足元でASMLが9割強を占める。同社は台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子、米インテルなどの最先端工場に欠かせない、波長13.5ナノメートル(ナノは10億分の1、nm)のEUV露光装置市場を独占する。

露光波長別で1つ前の世代に当たるArF液浸露光装置(波長193nm)でも、ASMLは競合のニコンを大きく上回るシェアを持つ。液浸露光とは露光装置のレンズとウエハーの間を純水で満たし、純水にレンズの役割をさせることで通常の露光装置と比べ解像度を高める技術である。

メーカー各社は公表しないが、EUV露光装置の価格は200億〜300億円、ArF液浸露光装置は60億〜100億円ほどとみられる。ここにきてインテルが初号機を導入した、光の利用効率が高い高NA(開口数)EUV露光装置は、500億円に近いとの観測もある。こうした高額な最先端装置で独り勝ちしていることが金額面でASMLが圧倒的シェアを握る理由だ。

ただし、5nm世代や3nm世代といった最先端の工場で使われているのはEUV露光装置やArF液浸露光装置ばかりではない。半導体の前工程(ウエハー工程)には数十もの露光工程が必要で、プロセスコストが高いEUV露光やArF液浸露光を使うのはクリティカルレイヤーと呼ばれる加工寸法が最小またはそれに近い層に限られる。

キヤノン光学機器事業本部副事業本部長の岩本和徳氏(半導体機器事業部長)は「例えば50層を露光する最先端半導体では、EUV露光を使うのは2〜3層、ArF液浸露光を使うのは最大10層ほどだろう」と話す。

加工寸法が比較的大きい層には、ArFドライ露光装置、フッ化クリプトン(KrF)露光装置(波長248nm)、i線露光装置(同365nm)などが使われる。価格はArFドライ露光装置が20億〜30億円、KrF露光装置が10億〜20億円、i線露光装置が5億〜10億円ほどとされる。

そしてキヤノンは「i線露光装置で8割ほど、KrF露光装置で3割弱の台数シェアを持つ」(岩本氏)。すなわちTSMCやサムスン電子などの最先端工場には、キヤノンのi線露光装置やKrF露光装置が多数導入されている。

微細化で最先端を走るEUV露光装置に注目が集まりがちだが、「i線露光装置やKrF露光装置を抜きに最先端半導体は製造できない」(同氏)。足元ではCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサー、シリコン(Si)や炭化ケイ素(SiC)製のパワー半導体向けの引き合いも強い。

 

先端パッケージング向けで業界標準握る

ここ数年でキヤノンが業界標準を握ることに成功したのが、2010年代に初号機を投入した後工程(パッケージング工程)向けのi線露光装置だ。2.5次元/3次元実装と呼ばれる先端パッケージング工程において、再配線層やバンプ(金属端子)の形成に使う。

キヤノンは対応できる端子ピッチや処理能力で他社をしのぎ、「市場を独占している」(岩本氏)という。米エヌビディアのAI半導体向けなどで需要が急増し、TSMCやサムスン電子、インテルがこぞって力を入れる先端パッケージングの領域でキヤノンは独り勝ちしているのだ。

 

後工程向け露光装置で業界標準を握る。4つの露光ショットをつなぎ合わせ、1つの大型パッケージとすることなどが可能だ(4ショット×4個の例)(出所:キヤノン)

 

 

前工程についても、i線から最先端までの「フルラインアップで顧客のニーズに応える」(岩本氏)戦略だ。

EUV露光装置やArF液浸露光装置の開発からはかつて手を引いたものの、14年に買収した米モレキュラーインプリントの技術を基に、キオクシアや大日本印刷と共同開発したナノインプリントリソグラフィー装置を23年10月に市場投入した。

ロジック半導体でいえば2nm世代といった最先端に対応できる。悲願だった微細化の最先端に返り咲いた。

 

ナノインプリントリソグラフィー装置はEUV露光装置と比べ、価格や消費電力をおよそ1ケタ下げられることが訴求点だ。

最先端半導体で「EUV露光を使う層数を増やさないための手段として使われることなどを見込んでいる」(岩本氏)。加工寸法が最も小さく規則的なパターンにはEUV露光、比較的複雑なパターンにはナノインプリントリソグラフィーを使うといったすみ分けを想定する。

 

キオクシアなどが手掛ける3次元NAND型フラッシュメモリー向けで量産への適用が検討されているほか、「DRAMやロジック半導体の顧客からも強い関心を持たれており、話を進めている」(同氏)。

まずはこれらのデバイスの量産向けプロセス開発への採用を目指す。

 

かつて製品化したものの顧客のニーズを捉えられず撤退したArFドライ露光装置についても、再参入を視野に入れ始めた。

事業化の有無について決まったことはないとするが「開発は継続している」(岩本氏)。最先端から非先端まで「露光装置を1つのメーカーでそろえたい」(同氏)という半導体メーカーのニーズを踏まえ、ミッシングピースであるArFドライ露光装置の投入機会をうかがう。

 

 


露光装置の稼働状態をモニタリング。ダッシュボードに表示して稼働率や歩留まりの向上につなげられるようにした。サポートルームでの使用イメージ(出所:キヤノン)

 

 

顧客サポートの強化に向けて、ビッグデータやAIの活用にも力を入れ始めた。

22年9月に「リソグラフィプラス」と呼ぶサービスを開始。専用のサーバーを設置することで、半導体工場内の露光装置の稼働状態をモニタリングし、ダッシュボードに表示して稼働率や歩留まりの向上につなげられるようにした。「十数拠点(の半導体工場)に導入され、数百人のエンジニアが利用している」(岩本氏)

 

ラピダス千歳工場の稼働後は「サポート拠点検討」

23年はメモリーを中心に半導体市場が落ち込んだが、24〜25年は回復が見込まれる。半導体受託生産会社(ファウンドリー)やメモリーメーカーからの中長期的な受注増を見込み、キヤノンは23年12月、約20年ぶりとなる半導体露光装置の新工場を主力拠点のある宇都宮市で着工した。

新工場は25年上期の竣工を予定し、同工場の稼働などによって半導体露光装置の生産能力は従来比でほぼ倍増する。販売台数も25年に21年(140台)比で倍増させる計画だ。

 

ラピダスの千歳工場、TSMCの熊本工場など、国内で半導体工場の建設が相次ぐことも追い風となる。ラピダス千歳工場については稼働開始後、千歳市近辺にサポート拠点を設けることを検討する。

TSMC熊本工場についても、熊本県のソニーグループの工場向けなどのサポート拠点を活用して支援する。

 


  半導体工場の建設が国内で相次ぐ。TSMC熊本第1工場の開所式の様子(写真:日経クロステック)

 

キヤノンは21年、「プリンティング(複合機など)」「メディカル(医療機器)」「イメージング(ミラーレスカメラなど)」「インダストリアル(半導体露光装置など)」という4つのグループに組織を再編した。

23年12月期の営業利益率はプリンティングが9.7%、メディカルが5.7%、イメージングが16.9%であるのに対し、インダストリアルは18.6%と他をしのぐ。全社売上高に占める割合は7.5%にとどまるが、高い成長を見込める「成長継続」事業と位置付ける。

 

今後はスパッタリング装置やウエハー接合装置を手掛けるキヤノンアネルバ、実装工程向け装置などを手掛けるキヤノンマシナリーといったグループ企業との相乗効果の創出を狙う。

グループ各社の「コア技術を融合し、新しいタイプの製造装置を開発したい」(岩本氏)としている。

(日経クロステック 大下淳一)

[日経クロステック 2024年4月12日付の記事を再構成]

 

【関連記事】

 

 

日経記事2024.04.25より引用

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

  • 山崎俊彦のアバター
    山崎俊彦
    東京大学 大学院情報理工学系研究科  教授
    •  
    ひとこと解説

    半導体の作り方は昔流行った「プリントゴッコ」と同じような原理で作っていきます。

    半導体ウエハの上に膜を作り、その上からパターンを焼き付けることで膜に薬品に反応する部分と反応しない部分を作ります。

    薬品に反応する部分は薬品によるエッチングで取り除きます。上から何かを処理をすると、膜が壁になり、膜がない部分にだけその処理がされるといううまい仕組みになっています。

    「パターンを焼き付けるだけか」と思ってしまいますが、あまりにも微細なパターンになっているので光が波の性質を現すようになり、光同士が干渉してボケたパターンしか描けないようになります。

    そのため、例えばUV光の利用など特殊な装置が必要となります。

 

 


トヨタ、中国テンセントと提携 EVにAIやビッグデータ

2024-04-25 16:34:10 | エレクトロニクス・自動車・通信・半導体・電子部品・素材産業

 
         トヨタはテンセントとの戦略提携を発表した

 

【北京=多部田俊輔】

トヨタ自動車は25日、中国ネット大手の騰訊控股(テンセント)と戦略提携すると発表した。

トヨタが中国で販売する電気自動車(EV)で、テンセントが人工知能(AI)やクラウド、ビッグデータなど3分野で協力する。

 

中国はEVが急速に普及し、中国勢の攻勢でトヨタの中国販売は苦戦している。次世代車の要となる車載ソフトで中国企業と連携し、開発速度を引き上げる。

25日開幕した世界最大級の自動車展示会である「北京国際自動車ショー」で、トヨタの最高技術責任者(CTO)を務める中嶋裕樹副社長が記者会見で発表した。今年中に共同で開発したソフトなどを搭載した車両を投入する。

 

テンセントは10億人以上が利用するSNSを抱えるネット大手で、自動車分野を成長領域と位置付けて強化している。トヨタはEVのIT機能で先行する中国勢に対抗する。

中国メディアによると、テンセントは独フォルクスワーゲン(VW)傘下のアウディなどと提携している。

 

中国ではEVの普及と同時に車内の様々な操作とスマートフォンを連携するなどの利便性が人気を集めており、自動運転技術との連携も進む。

中国ではスマホ大手の小米(シャオミ)、ネット大手の百度(バイドゥ)、華為技術(ファーウェイ)などが自動車分野に力を入れている。

 

中国では2023年にEVの販売台数が前年比2割増え、668万台を超えた。国際エネルギー機関(IEA)の予測では、中国のEV(PHVも含む)市場は30年に新車全体の3分の2を占め、35年には85%に達する見通し。

中国政府の政策支援もあり、巨大EV大国として存在感が高まっている。

 

【関連記事】

 

 

日経記事2024.04.25より引用

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

川端由美のアバター
川端由美

ジャーナリスト/戦略イノベーション・スペシャリスト
<label class="container_c93b8pm" data-option-container="true"><label class="container_c93b8pm" data-option-container="true">
ひとこと解説</label></label>

今まさに北京モーターショーの会場におり、4年ぶりということもあって、かなりの混雑ぶりです。

テンセントは、LINEのようなメッセンジャーで、中国では幅広く使われています。2022年にファーウェイが自動車部品に乗り出し、セレスに採用されて話題を生みました。

最近ではシャオミが発売したEVが爆発的に売れていますが、自動車単体での事業ではなく、自動車を通じて、シャオミのエコシステムに入る富裕層を増やすのが目的地。

アリババもEVスタートアップに投資しており、携帯電話会社を買収しました。 中国市場で戦うには、コネクテッドカーであることは必須で、さらに、IDを活用したユーザー体験の拡充まで求められます。

 

 


コソボ国防相「駐在武官を日本派遣」 中国対抗で連携

2024-04-25 15:51:54 | NATO・ウクライナ・ロシア・中国・中東情勢


コソボのマケドンシ国防相は「日本はアジア地域で戦略的に最も大事な国だ」と語る

 

旧ユーゴスラビアのコソボのマケドンシ国防相は近く日本に駐在武官を派遣する考えを表明した。

「日本は安全保障面でもアジアで最も重要な国だ」と言明。中国やロシアなど権威主義陣営に対抗するため、日本との情報交換や防衛当局間の交流を進める意向を示した。

 

首都プリシュティナで日本経済新聞のインタビューに応じた。コソボは2008年にセルビアから独立したが、同国やセルビア寄りのロシア、中国は国家承認していない。

マケドンシ氏は「セルビアでは投資や兵器供給などによる中国の影響力はかなり大きい」と強調した。「コソボと日本は地理的に離れているが、同じ中国の脅威に直面している」と語った。

 

同時に「日本はアジア地域で戦略的に最も大事な国だ」と指摘。軍事関連の情報の交換・収集に当たる駐在武官の派遣を決めたと明らかにした。

在京の駐在武官は中国を含めたアジアの動向分析も担う。日本側の受け入れの手続きが進めば、来年にも実現する見通しだ。

 

日本はすでに統合幕僚学校が開いている国連平和維持活動(PKO)関連の課程でコソボからの士官の受け入れを始めている。

マケドンシ氏はこうした防衛当局間の交流や協力を進めていく意向も示した。

 

 

ロシアのウクライナ侵略に関しては「独裁的な国々が覇権を握るのを諦めるまで、民主国家は防衛力を強化する必要がある」と指摘。国内での兵器生産を増やす必要があると強調した。

英国やイタリアなど欧州の軍需企業がコソボでの生産を検討していることも明らかにした。

 

コソボでは昨秋、多数派のアルバニア系住民と少数派のセルビア系住民の対立が先鋭化し、セルビア軍が国境地帯に多数の部隊を送り込む事態になった。

マケドンシ氏は「セルビアがコソボを国家承認するまで平和的な話し合いは期待できない」と述べ、軍事的緊張が続くとの見通しを示した。

(プリシュティナで、田中孝幸)

 

Ejup Maqedonci 独立前のコソボ解放軍を経て、軽武装のコソボ治安部隊の作戦・訓練部長などを歴任。23年8月から現職。親日家で、士官として日本で災害対応関連の研修を受けたこともある。46歳。
 

【関連記事】中ロ接近「欧州の火薬庫」緊迫 セルビアと周辺国に暗雲

 

 

ウクライナ侵略

<button class="buttonStyle_bnsd047 button_b1npj8pm lightFollow_l1htvmtg withIcon_wmdj4sp button_b112zex0 text_tmkk1ga icon_iq9yvql" title="トピックをフォローする" data-rn-track="main-topic-under-article" data-rn-track-category="follow_button" data-follow-button="" data-popover-target="follow-button" aria-pressed="false" aria-label="トピックをフォローする"></button>2022年2月、ロシアがウクライナに侵略しました。戦況や世界各国の動き、マーケット・ビジネスへの影響など、関連する最新ニュースと解説をまとめました。

 

 

日経記事3024.04.25より引用