8月に包括的な業務提携を発表した日産自動車の内田社長(左)とホンダの三部社長(東京都中央区)
ホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議に入る。持ち株会社を設立し、傘下に両社がぶら下がるかたちで調整する。将来的に三菱自動車が合流することも視野に入れる
世界の自動車産業は米テスラや中国勢など電気自動車(EV)メーカーが既存大手を脅かしつつあり、テクノロジーとプレーヤーの両面で歴史的な構造転換が進む。国内3社は技術力など経営資源を結集し、世界3位グループへの浮上を目指す。
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世界3位グループの自動車メーカー誕生へ
ホンダと日産は近く覚書(MOU)を結び、持ち株会社の統合比率など詳細を今後詰める。日産は三菱自の筆頭株主だ。3社が統合すれば販売台数は800万台を超え、世界でも有数の自動車メーカーが誕生する。
ホンダと日産は3月から協業に向けた検討を始めた。8月に包括的な業務提携をし、車載ソフトウエアや部品の共通化などを協議してきた。三菱自もホンダ・日産連合に合流して協業する方針を示していた。
ホンダは燃費性能の高い独自のハイブリッド車(HV)向け技術を持ち、同車種でトヨタ自動車に次ぐ世界シェアを持つ。日産は世界初の量産EV「リーフ」を2010年に発売した。多目的スポーツ車にEV車種を広げるなど電動化技術に一日の長がある。
産業構造転換、再編迫る
ホンダは創業者の本田宗一郎氏の時代からエンジン開発など原則「自前主義」を貫いてきた。同社の方針転換は100年に一度といわれる自動車産業の変革期に立ち向かう決意を示す。
世界的な脱炭素の要請を受けて、エンジン車からEVへの移行が進んでいる。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の新車販売に占めるEV比率は35年には50%以上になる。
中国の価格競争力が突出
中国では政府による産業転換の支援を受けて、比亜迪(BYD)を筆頭に新興のEVメーカーが台頭している。中国汽車工業協会によると、EVなど新エネルギー車の販売比率は24年に4割に達する見込み。
価格競争力に優れている中国勢の技術力も高まり、日本が強かった中国や東南アジアの地盤は大きく揺らいでいる。24年1〜11月の中国の累計販売はホンダが30.7%減、日産が10.5%減と苦戦している。
日産は苦境が鮮明だ。現地勢の攻勢を受ける中国だけでなく米国でも販売が苦戦している。新車開発のスピードが遅く、米国で需要が高まるHVを投入できていない。
悲願だった仏ルノーとの資本関係の見直しを23年に実現したが、規模によるコスト削減効果も薄まっていた。
経営不振を受けて11月に世界の生産能力を20%削減し、全体の1割弱に当たる9000人規模の人員削減に踏み切ると発表するなど、リストラ策の策定が急務となっていた。
日産は立て直しにはホンダとの関係を深めることが必要だと判断したようだ。
EV基幹部品や車載ソフトなど共通化
ホンダと日産はEVの基幹部品や車載ソフトウエアの共通化のほか、電池の供給などの協業を急ぐ。ホンダは電池生産の整備に巨費を投じており、日産に車載電池を供給することによって負担を抑えられる。
両社で経営統合し、テスラや中国勢に対抗できるだけの稼ぐ力を高める。
世界では新たな枠組み作りが動き出している。米ゼネラル・モーターズ(GM)は9月、現代自動車とEVやソフトウエアなど次世代車の共同開発で提携を検討すると発表した。
欧州では9月に独BMWとトヨタが燃料電池車での全面提携を発表した。米国でも新興EVのリビアン・オートモーティブが独VWと提携した。
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※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
大手自動車メーカー2社の統合ということで大きな影響が予想されますが、こと技術面でいえば、すでに部品メーカーの統合は進んでいます。
具体的には、日産系の日立オートモティブシステムズ、ホンダ系のケーヒン、ショーワ、日信工業がまとまって、日立astemoへと経営統合が進んでいます。
旧日立オートモーティブシステムズが得意とする自動運転などのソフトウェア開発と、ホンダ系サプライヤーが得意とするアクチュエーター制御などの要素技術を組み合わせることで、良い方向にシナジーが生まれることを願っています。
独特な文化を組織に浸透させてきた孤高のホンダにとっては、文化の異なる競合をグループ内に取り込むなど考えられないことであろう。
ホンダは経営資源が潤沢とはいえず、HVや二輪で収益を確保しながら、いかに電動化シフトを加速できるかが課題だ。
一方、統合による懸念要因が多くても、日産にとって選択肢は存在しない。
クルマの知能化などは変化が目まぐるしく、スピード感のある意思決定、実行ができなければ、変化についていくことは難しい。
両社はそれまでの延長線上で改善を繰り返して行くだけではなく、新しい発想を持ち、生き残れる市場を見極める必要だ。今後、どのような新しい価値が創出されるのかに注目したい。
統合実現には両社が乗り越えなければならないハードルは高いと考えます。
日産の株式を合計で35%(持ち合い15%、信託20%)を保有するルノーは諸般の事情からとにかく日産株を早期に売却したいという意向があると考えられます。
日産が株放出の騒動に巻き込まれず経営再建に集中し、かつシナジーを追求するためには、ホンダとのアライアンスは命綱。
一方、ホンダ内部には問題児の日産アライアンスへの抵抗勢力は強いのですが、さりとて日産を見捨てて400万台以下のホンダが孤高でどんな未来が開けるのでしょうか。
大所高所に立って両者の未来を考える時間をこのMOUで得て真剣に交渉するというとでしょう。
(ドイツ政府のエネルギー政策、EV推進政策が思惑通り進まなかった余波も受けて)VWグループも苦戦していますが、日産もEVへの注力が裏目に出ています。
EVは想定外の価格競争に晒されていますが、数年後の状況を読むのが難しい今、ハイブリッド技術を持っているホンダには強みがあります。自動車は日本の基幹産業の一つなので、なんとか競争力を維持してもらいたい。
奇しくも今日、ホンダは次世代e:HEV技術をプレスリリースしています。
この技術はホンダがこれまで培ってきた技術を満載しており、ホンダが10月に発表した次世代BEVである「Honda 0シリーズ」の系譜でもあります。
基幹部品であるインバータは日立アステモ製であり、現行シビックに搭載されたものをさらに小型化したパワー半導体モジュールを搭載すると考えられます。
これに対して、日産はHEVにおいてシリーズハイブリッド方式を採用します。
パワー半導体モジュールは三菱電機がサプライヤです。 これらの各社の虎の子の様な技術とケイレツを、今後はホンダと日産がどの様に共通化していくのかが、カギです。
和製弱者連合のリスクもある。 急速に進む業界変革の中で、スピードが遅い両社の「オールジャパン」では生き残りは難しい。
シャープを再建した台湾・鴻海精密工業のような外部の力が必要では。
日産救済色が強く見えるが、ホンダの将来も安泰ではない。中国ではEVの受注が低迷し、米国では新型EVプロローグを多額のインセンティブをつけて販売せざるを得ない状況で、ホンダはEVメーカーとしてのブランド力が弱い。
今回の経営統合をきっかけに、二輪事業の分社化や「脱エンジン」の軌道修正により、世界トップのエンジン車メーカーとしての圧倒的なブランド力を維持するような、ホンダにおけるリストラクチャリングと戦略変更も期待したい。
日産自働車はハイブリッドに注力せずEVに集中した為、ハイブリッド人気復活の米国で苦戦。
にもかかわらずEV大国の中国では新興メーカーに押されて苦戦。
EVが伸びている東南アジアでも中国に対抗できていない。
独VWと同様、このままでは不振が長期化するリスクがある。
ホンダは、ハイブリッド好調、かつアジア二輪車で稼ぐので相対的に優位だが、今のままではEV電池や自動運転の開発で世界をリードするのは難しい。
経営統合は、両社が勝ち残るために重要なステップとなろう。
ただ経営の主導権がどちらにあるのか?EVも自動運転も共同でやれば効率が高まるが、どういう勝負にするのか、経営の意思統合に手間取ると効果が薄れる。
ホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議に入ります。持ち株会社を設立し、傘下に両社がぶら下がるかたちで調整します。将来的に三菱自動車が合流することも視野に入れています。最新ニュースと解説をお伝えします。
日経記事2024.12.18より引用
歴史的な大型再編の決断を促したのは、台湾電機大手、鴻海精密工業の影だった
(8月の記者会見で握手する日産自動車の内田社長=㊧=とホンダの三部社長)
ホンダと日産自動車が経営統合に向けて協議に入る。歴史的な大型再編の決断を促したのは、台湾電機大手、鴻海精密工業の影だった。
鴻海は経営不振の日産に狙いを定め、水面下で経営に参画しようと動いていた。鴻海の思惑が実現すれば、ホンダと日産の協業が白紙に戻りかねない。両社は不退転の覚悟で一気に統合へ舵を切った。
今秋から日産の周辺に鴻海の影がちらついていた。鴻海は米アップルのスマホ「iPhone」の受託生産で成長を遂げた。
今もIT機器の受託生産が主力だが、2019年に次の柱として電気自動車(EV)事業への参入を表明。EVの設計や製造を受託するサービスを展開しているが、停滞する事業のてこ入れが課題だった。
鴻海のEV事業のトップは日産元ナンバー3
そのEV事業を担うのが関潤・最高戦略責任者(CSO)。日産の元ナンバー3で日本電産(現ニデック)社長を経て、23年に鴻海に招かれた。
世界のEV市場で「シェア40%」にする長期目標を課された関氏は、古巣の日産に目をつけた。
鴻海の関氏は日産の元ナンバー3
鴻海は顧客になると期待した米新興EVメーカーが相次ぎ破綻したこともあり、日本市場の開拓に力点を置いた。子会社のシャープの部品技術を活用しながら、自らEV開発まで手掛けることを9月に打ち出していた。
日産は10年にEV「リーフ」を量産した実績がある。鴻海は日産への出資を通じ、EV製造のノウハウと世界に持つ販売力を獲得したい思惑があったもようだ。
鴻海は日産への経営参画の手段として、仏ルノーが信託銀行に預けている日産株に着目した。ルノーは、1999年に経営不振に陥った日産株を取得し43%を出資する筆頭株主となった。
ルノーの影響力が強い不平等条約といわれ、日産は対等関係への修正を長年求めてきた。2023年11月、両社の資本関係が24年ぶりに見直され、ルノーが出資比率を引き下げて15%ずつを相互出資する形となった。
ルノーは保有する日産株の一部を段階的に放出するために、いったんフランスの信託銀行に移していた。現在も22.8%(9月時点)の日産株が信託銀行にあり、鴻海はその株式を取得すれば日産の経営に関与できると踏んだようだ。
日産は鴻海の動きを察知
鴻海は顧客になると期待した米新興EVメーカーが相次ぎ破綻したこともあり、日本市場の開拓に力点を置いた。子会社のシャープの部品技術を活用しながら、自らEV開発まで手掛けることを9月に打ち出していた。
日産は10年にEV「リーフ」を量産した実績がある。鴻海は日産への出資を通じ、EV製造のノウハウと世界に持つ販売力を獲得したい思惑があったもようだ。
鴻海は日産への経営参画の手段として、仏ルノーが信託銀行に預けている日産株に着目した。ルノーは、1999年に経営不振に陥った日産株を取得し43%を出資する筆頭株主となった。
ルノーの影響力が強い不平等条約といわれ、日産は対等関係への修正を長年求めてきた。2023年11月、両社の資本関係が24年ぶりに見直され、ルノーが出資比率を引き下げて15%ずつを相互出資する形となった。
ルノーは保有する日産株の一部を段階的に放出するために、いったんフランスの信託銀行に移していた。現在も22.8%(9月時点)の日産株が信託銀行にあり、鴻海はその株式を取得すれば日産の経営に関与できると踏んだようだ。
日産は鴻海の動きを察知
鴻海は顧客になると期待した米新興EVメーカーが相次ぎ破綻したこともあり、日本市場の開拓に力点を置いた。子会社のシャープの部品技術を活用しながら、自らEV開発まで手掛けることを9月に打ち出していた。
日産は10年にEV「リーフ」を量産した実績がある。鴻海は日産への出資を通じ、EV製造のノウハウと世界に持つ販売力を獲得したい思惑があったもようだ。
鴻海は日産への経営参画の手段として、仏ルノーが信託銀行に預けている日産株に着目した。ルノーは、1999年に経営不振に陥った日産株を取得し43%を出資する筆頭株主となった。
ルノーの影響力が強い不平等条約といわれ、日産は対等関係への修正を長年求めてきた。2023年11月、両社の資本関係が24年ぶりに見直され、ルノーが出資比率を引き下げて15%ずつを相互出資する形となった。
ルノーは保有する日産株の一部を段階的に放出するために、いったんフランスの信託銀行に移していた。現在も22.8%(9月時点)の日産株が信託銀行にあり、鴻海はその株式を取得すれば日産の経営に関与できると踏んだようだ。
日産は鴻海の動きを察知
日産はこうした鴻海の動きを察知し、水面下で買収防衛に向けた対策を協議していた。経営不振に直面する日産にとって、鴻海による経営参画は避けたかった。
日産は主力の米国や中国市場の販売不振が深刻で、24年4〜9月期の連結純利益は192億円と、前年同期比で94%落ち込んだ。
立て直し策として、世界で9000人の人員削減や世界生産能力を2割減らす構造改革を11月に打ち出したが、鴻海が経営に参画すれば、一段と踏み込んだリストラを迫られるリスクがあった。
鴻海の関氏には日産の内田誠社長との因縁もあった。
関氏は19年12月に日産の副COO(最高執行責任者)に就任した。
内田社長らに次ぐ「ナンバー3」として経営再建にあたる予定だったが、就任直後に日産を去り、日本電産の社長に転じた。「関氏は日産を捨てた」と日産側には映った。
ホンダ、日産との協業白紙に焦り
ホンダも鴻海の動向を警戒していた。ホンダは8月に日産と包括的な業務提携を結び、EVの基幹部品や車載ソフトウエアなどの共通化に向けた協議を始めていた。
「日産と鴻海が連携すれば、こちらの連携は白紙に戻す」
ホンダ関係者は日産に強く警告していたが、焦りの裏返しでもあった。
ホンダにとって日産との協業は成長の軸で、破談は何としても避けたかった。鴻海が日産に対して敵対的TOB(株式公開買い付け)に踏み切れば、ホンダがホワイトナイト(友好的買収者)になることも検討していた。
12月に入り、鴻海による水面下の動きは活発になってきた。
鴻海の関氏がフランス・パリでルノーのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)との会談を予定しているとの情報も伝わった。「その場で鴻海が日産株の取得を打診しても不思議ではない」(日産関係者)との見方もあった。
日産の大株主にアクティビスト
日産の経営環境は厳しさを増していた。11月にアクティビスト(物言う株主)の存在も明らかになった。旧村上ファンド系のエフィッシモが運用するとされるファンドが発行済み株式の2.5%を保有する第5位の大株主に名を連ねた。
さらにトランプ次期米大統領が掲げる関税引き上げも事業環境を一層不透明にする。日産はメキシコや日本の工場から米国に多くの車を輸出している。公約通りに関税引き上げとなれば、主戦場である米国市場での打撃は大きい。
経営再建に向けて様々な選択肢があるなか、内田社長は買収リスクを排除し、事態を打開するために最終的にホンダとの経営統合に向けた協議入りを選択した。
日産が筆頭株主の三菱自動車も将来加わることを視野に入れ、今後増大する自動運転などのソフトウエアや電池の投資負担に耐えられる体制づくりを目指す。
3社の統合が実現すれば、販売台数が800万台を超える世界第3位の自動車グループが誕生する。米テスラや中国勢と伍す競争力を得られる。
米ゼネラル・モーターズ(GM)は現代自動車とEVやソフトウエアなど次世代車の共同開発で提携を検討している。ホンダと日産が鳴らした再編の号砲は、今後は世界へ波及する。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
”シャープ化”した日産の救済に今必要なのは鴻海だったと思う。
高い技術力があっても、目まぐるしい世界の需要変動に対して適材適所で売れる商品を出す商品企画力が欠如している。
今の日産の苦境は鴻海が救済に打って出た時のシャープのようだ。中国勢よりスピード感に欠ける車メーカー同士がくっついて“○○○万台”で規模の経済性を追求するという発想は、独フォルクスワーゲンや仏PSAの昨今の経営失敗が示すように今や時代遅れだ。
求められるのはスピード経営と抜本的事業改革。前例なきスピードで収益改善と企業価値を向上させる具体的施策を早期に出せるかに注目。
日産株は急騰しているがホンダ株は日経平均以上の率で下落している。
ホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議に入ります。持ち株会社を設立し、傘下に両社がぶら下がるかたちで調整します。将来的に三菱自動車が合流することも視野に入れています。最新ニュースと解説をお伝えします。
日経記事2024.12.18より引用