ロシア「影の船団」の一部とされるタンカー(写真奥)がケーブルを傷つけたという
(提供・フィンランド国境警備隊)=AP
【ブリュッセル=辻隆史】
フィンランドとエストニアをバルト海の海底を通じて結ぶ電力ケーブルが25日、破損した。欧州連合(EU)は26日、ロシア産原油を秘密裏に運ぶ「影の船団」がケーブルを意図的に傷つけた可能性を指摘した。
制裁を検討すると表明した。
北欧に面するバルト海では海底ケーブルの破損が相次ぐ。11月17日にはリトアニアとスウェーデンを結ぶインターネットケーブルが切断された。
18日にはフィンランドからドイツのロストクまでつなぐケーブルが破損した。デンマークなどはロシアを出港した中国船の関与を調べているが、全容解明には至っていない。
英BBCによるとフィンランド警察は今回、クック諸島に登録されたタンカーの錨(いかり)がケーブルを損傷した疑いがあるとみている。修復には数カ月かかる見通し。
エストニアの外相は12月26日、海底の重要インフラの損傷が「非常に頻繁」に起こるため、偶発的なものとはみなせないとの考えを示した。
EUの執行機関である欧州委員会は同日の声明で、海底ケーブルを今回傷つけたのはロシアの「影の船団」の一部だと名指しで非難した。
影の船団はロシアが原油を秘密裏に輸出する際に利用するものだ。老齢船など船齢の高い船を安く購入し、追跡を逃れるために戦跡の登録なども頻繁に変える。
影の船団は、原油輸出だけでなくケーブル破壊という工作活動にも従事している可能性がある。欧州委は影の船団への制裁措置を含めた対応をとる方針を明示した。
フィンランドとドイツの両政府は11月18日、「欧州の安全はロシアのウクライナ侵略戦争だけでなく、悪意あるハイブリッド戦争にも脅かされている」との共同声明を出した。ロシアが欧米に直接の武力攻撃ではない形で圧力をかけているとの分析だ。
国際通信の多くは海底ケーブルシステムで伝送されている。バルト海の海底には電力ケーブルも敷設され、欧州のエネルギー供給に重要な役割を果たす。
広い海のなかを走るケーブルの破損のリスクを事前に察知し、防ぐのはかなり難しい。疑いのある船を見つけても、その指示系統などを明らかにするハードルも高い。
EUは北大西洋条約機構(NATO)とも連携し、破損の検知技術の向上や修復能力の強化に取り組む。
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