建国後の合衆国ー14 家父長的権威の衰退と近代家族https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/50d8dea63fd8e50975de0d2578a6355b
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父親の権威の衰退と徒弟制の教育監督機能の弱体化は、家庭内教育担当者としての母親の役割を強めました。
市場原理の働く厳しい競争社会で、脱落者にならずに生き残っていく事のできるような、創造的ではないにしても、知的で勤勉で自制力のある人格を育て上げる事こそ、まさしく『女の領域』となりました。
メリー・P・ライアンはニューヨーク州オネイダ郡の女性たちの生活を丹念に調べ、その著『中産階級のゆりかご』の中で、彼女たちの子育ての努力を資本主義社会に生き抜く一家総ぐるみの『家族戦略』として描いています。
19世紀における出生率の急激な低下を、家庭内における女性主権確立と短絡的に結びつけた説明をする人がいます。
しかし、この説明は『華族戦略』を考えないと説得性を欠いています。 当時の多くの女性にとって『女性主権』はあくまでも家族共同体という価値の中に位置づけられていたからであります。
『女の領域』の理想的な担い手となりうるのは、新しく台頭しつつあった起業家の女房など、生産労働から手を引き、もっぱら家事と子育てに専念する『中産階級』の妻たちでした。
そして19世紀中頃までに、都市中産階級の妻たちだけでなく、西部の農家の主婦たちも野良仕事をしなくなっていました。
特にアングロサクソン系農民の場合、そうでした。 そして、信心深く貞節で忍耐強く思慮深い、慈愛に満ちた女性の理想像が女性たち自身によって描かれ、これがベストセラーになりました。
このことはまた、文筆だけでは食っていけないナサニエル・ホーソンなどの悩みの種でした。
ライアンのいう『家族戦略』は、もちろん家庭内教育だけにとどまらず、より高度の学校教育の要求へと向かいます。
家計の担い手となる男子だけでなく、子供に初歩的な知的訓練を与える母親を作るためには、当然女子教育も重視されました。
これは学校教育だけでなく特に女の子の場合は一人でも食っていけるピアノの教区も含まれます。個人的家庭教師や教会などで雇ってくれるケースもありますからね。
この延長線上に、安価な知的男子労働力が極度に不足していた合衆国では、職業としての女教師が誕生します。
以後アメリカでは、初等学校教師を『女の仕事』とみなす伝統が今日まで続いています。
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