あちこち散歩みち

近畿圏内を小さくあちこち歩き・たまに寺社めぐり・日々のとりとめない暮らしなどを書いています

シェイクスピア書店

2021年08月31日 | 

『移動祝祭日』  アーネスト・ヘミングウェイ

 

この本の中にシェイクスピア書店についての記述があります。

この段にふれたくて仕方ありませんでした。

《抜粋》

 その頃は本を買う金にも事欠いていた。

本は、オデオン通り12番地でシルビア・ビーチの営む書店兼図書館、

シェイクスピア書店の貸し出し文庫から借りていたのである。

 冷たい風の吹き渡る通りに面したその店は、冬には大きなストーヴに

火がたかれて、暖かく活気に満ちた場所だった。

 店内にはテーブルが配され、書棚が並び、ウィンドウには新刊の

書物が展示されていた。壁には故人や現在の著名な作家たちの写真が

かかっていたが、どれもみなスナップ写真のようで、物故した作家たちで

すらいまも生きているように見えた。

 シルビアは生き生きとした、彫りの深い顔立ちをしていた。

 茶色の目は小動物のようによく動き、少女のそれのように活気があった。

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 初めてあの店に足を踏み入れたとき、私はとてもおどおどしていた。

貸し出し文庫に入会するための金も、持ち合わせていなかった。

ところが、シルビアは、入会金はいつでもお金があるときに払ってくれれば

いいと言ってくれたうえ、貸し出しカードをその場で作ってくれて、

何冊でも読みたいだけ持ち出してかまわない、と言ってくれたのである。

 

 

このように好意的に接したシルビアにたいし、

のちのちまで敬意を持ち続けたのです。

1920年代、パリに夫人と共に住んで、修行を積んだヘミングウェイでした。

 

 

 

 

コメント (2)
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