晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮部みゆき  『きたきた捕物帖』

2022-03-05 | 日本人作家 ま

去年まで朝食は基本的にパンでしたが、今年に入ってからパンと米飯を交互に食べています。別にこれといって大した理由などないのですが、朝食はパン、昼食は麺類が多く、一日のうちで米飯を食べるのが夕食のときぐらいで、お米をあまり食べていません。世の中的には深刻なコメ余りの状況とのことですから少しでも貢献しないと。ほんとに少しですが。

お箸の国の人だもの。

さて、宮部みゆきさん。本の帯には「新シリーズ始動!」と書いてありましたが、現在シリーズものは「三島屋変調百物語」がありますよね。あ、そういえば「杉村三郎シリーズ」もまだ完結してないんでしたっけ。

深川元町の岡っ引き、文庫屋の千吉親分が、ふぐの毒に当たって死にます。というスタート。これは別に事件性があるわけではありません。ここで「岡っ引き」の説明。江戸は時代が経つにつれて人口が増えてピーク時には百万人を超えるまでになりますが、当時の警察機能である「町奉行」は増員されませんでした。この役職は表向き一代限りとされてはいましたが、実際は世襲。そこで町奉行が(警視庁)とするなら、現場で捜索などをやる(所轄署の警官)あるいは(派出所のお巡りさん)的な働きをするのがこの岡っ引き。目明しともいいます。どういう人かというと、もとはアウトローだった人が更生して町奉行側に協力する側になるというパターン、あるいは「江戸の治安を守る」というボランティア精神の強い一般市民。与力や同心は汚れ仕事を専門とすることで「不浄役人」と蔑まれてはいましたが、れっきとした直参(徳川将軍家直属)の武士。ですが岡っ引きは非公認。奉行所から正式に十手を授けられたいわゆる「十手持ち」はいましたが、幕府から俸給が出ていたわけではないので彼らはあくまで町奉行の協力者。当然「本業」ではないので他に仕事を持ったり女房に仕事をさせていたり。この岡っ引きにはそれぞれ(下っ引)と呼ばれる子分がいました。よく岡っ引きが「親分」と敬称されるのはこの(下っ引の)という意味ですね。

長くなりましたが、死んだ千吉親分には五人の子分がいました。しかし、生前「うちの子分のだれにも跡目を継がせない」と言い残してあって、子分の中で一番若い北一はショック。北一の歳は十六で、三つのときに迷子だった北一を千吉が拾ってくれます。最年長の子分は千吉の本業の文庫屋を継ぐことに。あとの子分たちは他の岡っ引きの世話に。ところで「文庫屋」の文庫とは現在でいうポケットに入るサイズの本ではなく、ここでは本を入れる紙の箱。千吉の文庫は十手に付いている朱房にちなんで「朱房の文庫」という名で定評。北一は生計の道が無いので、当面は文庫の振り売り(天秤棒を担いで流し売り)をすることに。さらに住む場所も富勘という差配人に長屋を紹介してもらうことに。

千吉には(松葉)という目の不自由な妻がいて、北一はまともに話をしたことがありませんでしたが、側を通って「北一かい」と呼び止められます。足音と雰囲気だけで判別できてすげえなあと感心していると「あんた、商売道具をどこかに忘れてきてないかい」と。北一が千吉の訃報を知ったのは、とあるお武家の下屋敷の前を通っていたら中から侍に「岡っ引きの千吉の子分だろう、はやく戻れ」と呼び止められ、天秤棒を預かってもらっていたのです。

松葉がどうしてわかったのかはさておき、その下屋敷は生垣の向こうに大きな欅の木がよく見えて、北一は「欅屋敷」と名前をつけています。で、天秤棒を取りに欅屋敷に行って声をかけてくれた侍に会います。もともと千吉と碁仲間だった青梅新兵衛という侍はこの屋敷の留守居で、北一のよき相談相手となってくれます。

そんなことがあって、ある日のこと。差配人の富勘が面妖な話を持ってきます。知人の家に「呪いの福笑い」というのがあって、それで遊ぶとなぜか家族の誰かが怪我や病になると気持ち悪がられて奥にしまってあったのを今年の正月にそれを知らない子どもが福笑いを出して遊んでしまい、三日後にその子どもが火傷し、お婆さんが眼病に、お父さんが歯痛に。なんでも三代前の嫁の祟りだそうで、解決方法は福笑いの目鼻口を正確な位置に置いて「いやあ美人ですね」と褒めるんだそうですが・・・という「ふぐと福笑い」。

さらに、近くの手習い所に通う男の子が突然消えた「双六神隠し」、有名な菓子屋の次男坊という道楽息子と小さな糸屋の娘の別れ話の「だんまり用心棒」、味噌問屋の跡取りが祝言をキャンセルし、突然あらわれた死んだ元妻の生まれ変わりという女と暮らし始める「冥土の花嫁」という四話仕立て。

「だんまり用心棒」の中で、湯屋の釜焚きをしている喜多次という男が登場します。無口で髪はボサボサ。なぜか肩に烏天狗の入れ墨があり、湯屋の前で倒れていたそうで、氏素性は不明。北一に恩義を感じて北一の手助けをすることに。(北一)と(喜多次)のふたりの「きたさん」で(きたきた)ですね。

北一の住む富勘長屋は「桜ほうさら」に出てきた長屋で、謎の稲荷寿司屋というのも出てくるのですが、こちらは「初ものがたり」に出てきて謎のまま。欅屋敷の新兵衛の屋敷の主の正体や、喜多次のバックグラウンドなどなどこれからわかってくるのでしょう。喜多次、松葉、富勘、新兵衛たちの助けを借りて(岡っ引き見習い)の北一の今後が楽しみ。


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