自分が(それ)を必要としない、面白いと思わないからといって、じゃあ(それ)が世の中にとって必要ない存在なのかというとそういうわけでもなく、必要悪や絶対悪の議論はさておきですが、SNSなどで、わざわざ見たくないものを見て「こんな酷いこと言ってる!」「許せない!」って発信されてる方、多いですよね。自分はというと、もはや「お好きにどうぞ」英語でいうとアズユーライクイット、という心境でいます。
目立たぬように、はしゃがぬように、似合わぬことは無理をせず。
河島英五「時代おくれ」より。阿久悠さんの詞ってあらためていいですね。
そんな話はさておき。
三島屋変調百物語。もうシリーズ五巻までやってきました。前の四巻のとき、当ブログで「このシリーズは百物語までやるのか、あるいは主人公のおちかの心の傷が癒えたらそれでおしまいになるのか」なんて疑問を書いたのですが、この五巻でその答えが出てきます。
お客は、本所吾妻橋の近くで「どんぶり屋」という飯屋を営む平吉という男。なんでも、七歳になる娘が風邪をひいて、なかなか治らず、平吉の女房が(塩絶ち)といって塩気のものを一切口にしないという願掛けをしようと言い出しますが、平吉は断固反対します。その理由は、平吉がまだ幼いころに、その願掛けによって、平吉ひとりを残して一家全員死んでしまったから、というのですが・・・という「開けずの間」。
つづいてのお客は、髪問屋(美濃屋)の主の母。(おせい)は遠州(現在の静岡県)の漁村の生まれで、生まれつき声に特徴があって、地元では(もんも声)といって、亡者やあやかしを呼び寄せるというのです。ある日のこと。海辺にいたおせいに話しかけてくる声が聞こえます。しかし人はいません。目の前にはカモメが。このカモメが「いいことを教えてやる」というのです。ある旅籠に老夫婦が泊ってるがふたりの面倒を見ろ、というのでその旅籠に行って「女中に使ってください」とお願いします。じつはこの老夫婦も、夢の中で「娘が訪ねてくるので女中として迎え入れろ」というお告げが。庄屋の隠居夫婦の女中になったのですが、主に、御城のお姫様付きの女中になるようにというとんでもない話が・・・という「だんまり姫」。
女の子が三島屋に来て「話を聞いてほしい」といいます。身なりは汚く、話し方も乱暴。部屋に招き入れて、話をはじめますが、途中で帰ってしまいます。後日、女の子の住む裏店の差配人が女の子と一緒に三島屋にやって来て先日は失礼しましたと頭を下げ、(お種)という女の子も平謝り。差配人がお種に奉公先の話を持ってきたのですが、その奉公先というのが、一年で十両と破格の金額。内容は、仕立て屋の女中。ただ、その条件が「できるだけ性根の曲がった子」というのですが・・・という「面の家」。
今回のお客は、貸本屋「瓢箪古堂」の勘一。もともとこの貸本屋は勘一の父親の勘太郎が起こした商売で、勘一がまだ小さかった頃、写本をやってくれる栫井十兵衛という浪人がいて、とても丁寧なのでよく依頼してしました。ところがある日、栫井が店にやって来て、(井泉堂)という貸本屋から仕事を頼まれたのだが、その金額が百両で、しかもその写本をする冊子の内容を決して読んではいけない、という意味のよくわからないことで相談に・・・という表題作「あやかし草紙」。
さて、豪快にネタバレを。
ここから、百物語の「聞き手」がおちかから富次郎へとバトンタッチになります。富次郎は三島屋の次男で、奉公先で怪我をして療養という名目で三島屋に戻って来て、おちかの百物語をはじめは興味本位で聞いていただけだったのが、そのうちに語り手の内容を一枚の画にするという(「あやかし草紙」にその経緯があります)、おちかのアシスタント的役割になって、まあ、おちかがなぜ聞き手をやめることになったというのは書きませんが、とにかく富次郎が後を引き継ぐことに。
というわけで、富次郎が聞き手となる一人目の客は、兄の伊一郎。兄弟がまだ小さかった頃、手習所に通っていた帰りに、お稲荷さんの境内の木に白いほわほわした毛玉のようなものが。木に登ってつかまえようとしますが、消えてしまいます。後日、また境内に行くと、今度は木の根元に猫がいます。親から猫を飼ってはいけないときつく言われていたので富次郎はあきらめて友達の家で飼ってもらいます。ところがその猫は富次郎が好きだったらしく、三島屋まで付いてきてしまって・・・という「金目の猫」。
文庫のあとがきで宮部みゆきさんが「聞き手の交代はだいぶ前から考えていた」ということだそうで、とりあえずおちかが(第一期)で富次郎が(第二期)になります。AKB的にいえば「卒業」、エグザイル的にいえば「第2章」、だからなんだという話ですが、富次郎はまだ二十代前半、おちかも三島屋と完全に縁が切れたというわけではありませんし、今後が楽しみ。
目立たぬように、はしゃがぬように、似合わぬことは無理をせず。
河島英五「時代おくれ」より。阿久悠さんの詞ってあらためていいですね。
そんな話はさておき。
三島屋変調百物語。もうシリーズ五巻までやってきました。前の四巻のとき、当ブログで「このシリーズは百物語までやるのか、あるいは主人公のおちかの心の傷が癒えたらそれでおしまいになるのか」なんて疑問を書いたのですが、この五巻でその答えが出てきます。
お客は、本所吾妻橋の近くで「どんぶり屋」という飯屋を営む平吉という男。なんでも、七歳になる娘が風邪をひいて、なかなか治らず、平吉の女房が(塩絶ち)といって塩気のものを一切口にしないという願掛けをしようと言い出しますが、平吉は断固反対します。その理由は、平吉がまだ幼いころに、その願掛けによって、平吉ひとりを残して一家全員死んでしまったから、というのですが・・・という「開けずの間」。
つづいてのお客は、髪問屋(美濃屋)の主の母。(おせい)は遠州(現在の静岡県)の漁村の生まれで、生まれつき声に特徴があって、地元では(もんも声)といって、亡者やあやかしを呼び寄せるというのです。ある日のこと。海辺にいたおせいに話しかけてくる声が聞こえます。しかし人はいません。目の前にはカモメが。このカモメが「いいことを教えてやる」というのです。ある旅籠に老夫婦が泊ってるがふたりの面倒を見ろ、というのでその旅籠に行って「女中に使ってください」とお願いします。じつはこの老夫婦も、夢の中で「娘が訪ねてくるので女中として迎え入れろ」というお告げが。庄屋の隠居夫婦の女中になったのですが、主に、御城のお姫様付きの女中になるようにというとんでもない話が・・・という「だんまり姫」。
女の子が三島屋に来て「話を聞いてほしい」といいます。身なりは汚く、話し方も乱暴。部屋に招き入れて、話をはじめますが、途中で帰ってしまいます。後日、女の子の住む裏店の差配人が女の子と一緒に三島屋にやって来て先日は失礼しましたと頭を下げ、(お種)という女の子も平謝り。差配人がお種に奉公先の話を持ってきたのですが、その奉公先というのが、一年で十両と破格の金額。内容は、仕立て屋の女中。ただ、その条件が「できるだけ性根の曲がった子」というのですが・・・という「面の家」。
今回のお客は、貸本屋「瓢箪古堂」の勘一。もともとこの貸本屋は勘一の父親の勘太郎が起こした商売で、勘一がまだ小さかった頃、写本をやってくれる栫井十兵衛という浪人がいて、とても丁寧なのでよく依頼してしました。ところがある日、栫井が店にやって来て、(井泉堂)という貸本屋から仕事を頼まれたのだが、その金額が百両で、しかもその写本をする冊子の内容を決して読んではいけない、という意味のよくわからないことで相談に・・・という表題作「あやかし草紙」。
さて、豪快にネタバレを。
ここから、百物語の「聞き手」がおちかから富次郎へとバトンタッチになります。富次郎は三島屋の次男で、奉公先で怪我をして療養という名目で三島屋に戻って来て、おちかの百物語をはじめは興味本位で聞いていただけだったのが、そのうちに語り手の内容を一枚の画にするという(「あやかし草紙」にその経緯があります)、おちかのアシスタント的役割になって、まあ、おちかがなぜ聞き手をやめることになったというのは書きませんが、とにかく富次郎が後を引き継ぐことに。
というわけで、富次郎が聞き手となる一人目の客は、兄の伊一郎。兄弟がまだ小さかった頃、手習所に通っていた帰りに、お稲荷さんの境内の木に白いほわほわした毛玉のようなものが。木に登ってつかまえようとしますが、消えてしまいます。後日、また境内に行くと、今度は木の根元に猫がいます。親から猫を飼ってはいけないときつく言われていたので富次郎はあきらめて友達の家で飼ってもらいます。ところがその猫は富次郎が好きだったらしく、三島屋まで付いてきてしまって・・・という「金目の猫」。
文庫のあとがきで宮部みゆきさんが「聞き手の交代はだいぶ前から考えていた」ということだそうで、とりあえずおちかが(第一期)で富次郎が(第二期)になります。AKB的にいえば「卒業」、エグザイル的にいえば「第2章」、だからなんだという話ですが、富次郎はまだ二十代前半、おちかも三島屋と完全に縁が切れたというわけではありませんし、今後が楽しみ。
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