今年度から、学校のほうのレポートやらなんやらであまり本を読めておりませんので、投稿は5月6月と1回のみ。ひどいもんです。今月にはどうにか今読んでるけっこうな長編を読み終わればいいなあと思っております。
さて、この作品は小説ではありませんが、いちおう「読書した」ということで。
村瀬孝生さんという方、老人ホームで働いてのちに現在は宅老所の代表をされていまして、谷川俊太郎さんと交流があり、あとがきを書かれています。
施設に入所されている入所者のおじいさんおばあさんの面白おかしいエピソードや時に悲しいエピソードが書かれています。あれは吉本隆明さんでしたっけ、「良いことをするときはコソコソと悪いことをやってると思いながらやるのがちょうどいい」ってありまして、大っぴらに「ワタシは善行をやってます!」ってなると、ともすれば自分は偉い、立派と思ってしまうので、というもの。ただの承認欲求ですからね。
認知症の知能検査で物品テストというのがあり、5つの鉛筆とかパイプとかを出して「覚えてください」といって1分後に隠して「何があったか思い出してください」というやつなのですが、あるおじいさんはこれに激怒。なぜなら「何があったか聞くぐらいなら最初から隠すな」という言い分。まったくその通り。
年配になればなるほど「人様に迷惑をかけてはいけない」という教育と家庭での躾の中で育っているので、介助も容易にできません。
「あなたらしく生きてください、生きがいを持ってください」と言いながら、何時から何時まで食事、何時から入浴、何時に就寝、という施設側の作ったスケジュールについてこれない入所者を「問題を起こす」と扱う。おじいさんおばあさんはひとりひとりの「時間」があって、自分たちのペースがあるのですが、そのペースを待てないのは職員のほうで、菓子パンが好きな人は誤嚥しないため少量ずつ鳥のようについばんで食べると何時間もかかるからミキサーでペーストにしてスプーンで口に入れる。雲を眺めるのがすきな人はいつまでも眺めているので時間を決めて中に入れる。読書が趣味の人は同じページを繰り返し繰り返し読んで食事や入浴時間を守らないので本を隠す。
「あなた」って誰ですか。
具体的な話は書けませんが、入院していたおばあさんが生まれ故郷の西日本にある離島の病院に転院することになりました。何十年も前に家族の都合で関東にやって来たのですが、もう会話もしなくなって亜空間を見てるだけ。ところが島の病院からの報告で喋るようになったそうです。やっぱり空気感といいますか、聞き慣れた方言を耳にしたからか。
介護保険制度って、できた経緯は「住み慣れた家や地域で余生を送ってもらう」だったのですが、姥捨て山状態。これじゃイカンということで食事とベッド代は自己負担に変更。
「老い」とか「ぼけ」は、いずれ誰でも来ることですが、現状は社会からの隔離と抑制。そして施設間のたらい回し。このような状態で「一生懸命生きる」ってできますかね。
決して小難しい話ではなく、ライトタッチで書かれています。挿し絵もコミカル。ポップなメロディで警鐘を鳴らしています。
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