路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

男の背中

2008-03-09 | 『小鉄』

団地で『茜』と一緒に居た頃の『小鉄』は、弱虫で

『ボス猫』が時々現れると、いつも逃げてばかりいた。

橋向こうからやって来る大人しい年寄りの『影虎』の姿ですら

やはり、遠くから確認していたくらいだ。


まだ、川沿いから四丁目の路地裏へ逃亡の日々が続いている模様で

朝の通勤時に良く会うようになった。

再会すると、喜んでお腹を見せてはゴロンゴロンと転げ回る。

少し薄汚れた体で、川沿いに居た頃よりは痩せたみたいだ。

顔を見ると、傷がある。

耳にも少し。

人間からの虐待でない事を祈りつつ、

子供の頃、猫を3匹飼っていた友達が言った事を思い出した。



「雄猫はね、弱虫ほど後ろ足の方に怪我をして帰ってくるんよ。

 強者は逃げないから頭や耳に怪我をするったい。
 
 ほら、「じゃりん子チエ」の小鉄は額に傷があるやろ。勇者の証やん。」



子供ながらに妙に納得した覚えがある。

勿論、『小鉄』の名前は「じゃりん子チエ」から来ている。

あんな風に、人間のテツなんかより頼りになる

強くて優しい雄猫になって欲しかったからだ。



『小鉄』の傷が勇者でなくとも、強者の証であれば良い。

ひとしきり私と遊んで、ブロック塀にマーキングをした後

妙に納得したように、ゆっくりだが

しっかりと歩き出す『小鉄』の背中が大きく見えた。




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コメント (4)
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