「大きくなったら、何になると?」
子供の頃、誰もが一度は尋ねられた言葉だろう。
大人達が良く使う、世代の違う子供との挨拶代わりのこの言葉を、
何故か大人になって、七年目に近所の子供に問われた事がある。
当時、隣の家の猫がボンネットを汚すので休日は車磨きに勤しんでいた。
実家の玄関先でホースを片手に愛車を磨いていると、
小学2~3年生位の少年が自転車に跨ったまま、私にこう言った。
「あんた、大きくなったら何になると?」
思わず、手が止まる。振り向くと、少年の日焼けした真顔がそこにあった。
きっと、大人の挨拶みたいに思ってこう言ったんだとは思うが、
ハッとした。
「もう大人ったい。あんたの車(自転車)も洗ってやろうか?」
子供の頃は「お花屋さん」だの、「スチュワーデス」だのと
可愛らしい職業を友人達が挙げる中、
変わり者だった私の将来の夢は、「法廷画家」だった。
もの凄い決心とかそういう類のものでなく、幼い夢は形を変えるもの。
色んなものに成りたがり、夢見る頃は過ぎて行く。
法廷画家ではなく、グラフィックデザイナーを生業としていた。
たまにCMの絵コンテなんかを頼まれていたりしていたが、
法廷画家の方とはそういった仕事や漫画家を経て成る方が多いと後で知った。
時に、子供の何気ない言葉は無意識に真理へ直行する。
あれから時は過ぎても、あの言葉は今も心に残っている。
川沿いで出会った貴婦人『華』と向かい合って写真を撮っていると小学生が声を掛けて来た。
「何しようと?」
「大きくなったら、何になるか考えよ~と。」
少年は、私の言葉より猫に夢中だ。
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