お花見をする猫を初めて見た。
公園に面した駐輪場の屋根で優雅にも桜を見ている。
羨ましい限りだ…好きな時、好きなだけ特等席でお花見を満喫出来る。
小柄で木登りが得意なのか、駐輪場横の銀杏や桜の木に登り、
屋根に飛び移ってお花見をする雌猫『茜』は、お腹も大きいヤンママのお転婆さんだ。
夕暮れ時に姿を表すので『茜』と呼ぶ様になった。
『茜』には連れがいて、兄弟なのか夫婦なのか…同じキジトラで良く似た雄だ。
二匹仲良く餌を貰いにやって来る姿が可愛くて、公園に毎日のように通い詰めていた。
日もすっかり暮れたある日、いつもの様に駐輪場へ行ってみると…
ボーイッシュな若い女の子が猫缶片手に紙皿と缶切持参でウロウロしていたので、声を掛けた。
話してみると落ち着いた口調で、獣看護士の学校へ通う学生だと応える。
こっちへ引越す前にロシアンブルーの『桜』という雌猫を飼っていて
四歳数ヶ月で亡くしたのを期に、仕事を辞め、獣看護士の学校へ行く決意をしたそうだ。
余程悲しい思いをしたのだろう。
その思いが、彼女の次のステップへと力を貸したのならば『桜』の死は決して無駄ではない。
毎年、桜の季節にはその時の気持ちを胸に頑張れるだろう。
野良猫に遇うとつい足を止めてしまう人は、
無意識にかつての相棒の「面影」を探しているのかもしれない。
気が付くと、屋根上の『茜』が桜の花びらの様に足元に降りて来ていた。
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