ブックレビュー:
『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて
慶応大学に現役合格した話』
(坪田信貴 著、KADOKAWA、2013年12月)
概要が一目でわかるという点では文句なしのタイトルです
ね。(ちょっと長いけれど……。)
新作ではないのですが、この本をもとにした映画「ビリギ
ャル」を昨年末にテレビで観たのをきっかけに、読んでみ
ました。
慶応に合格した「ビリギャル」こと「さやかちゃん」が、
受験勉強を始める前の状態に、まず度肝を抜かされました。
本の中には具体的にいろいろ書いてあったけれど、私が一番
驚いたのが、さやかちゃんが東西南北をちゃんと理解、把握
していなかったという話。(本当かな~?)
そんな状態から1年余りで偏差値を70前後まで上げて、慶応
に合格してしまうとは……すごいとしか言いようがありません。
もともと、勉強に向いているタイプだったのかもしれません
が、努力して集中し続けたことは、称賛に値すると思います。
私も、同じくらいのことをするのは難しいでしょうけれど、
見習いたいです。
指導した塾の講師、坪田先生も素晴らしい。プロフェッショ
ナルとして、レベルが高いと思います。
本の中には具体的な勉強方法や教材名が書かれているので、
実際に受験を控える人にも参考になることはありそうです。
実は私も以前、塾の講師をしていたことがあり、現在の仕事
は留学生のための日本語の授業なのですが、同じ教師という
目線からもいろいろなことを考えさせられました。
その中でも、特に印象が強かったのは、さやかちゃんが学校
の授業中に寝るようになったときのことです。
これは、受験勉強が大詰めになった段階で、志望校に合格する
ため、学校の授業よりも塾の勉強のほうに時間を割かなければ
ならなくなり……
睡眠時間も削って勉強するため、寝られる時間が学校しかない
という状況になってしまい、止むに止まれずそうしていたそう
なのですが……
授業を担当していた学校の先生も、これには困ったことでしょ
うね。
さやかちゃんのお母さんからも、事情を説明され、寝かせてや
ってほしいと懇願されては……。
もちろん、生徒の受験を応援したくない教師はいないので、そ
れがさやかちゃんのためになるなら、そっと寝かせておいてや
りたいと思う先生もいたことでしょう。
ただ、クラス全体のことを考えると、ことはそう単純にはいき
ません。
例えば、クラスに40人ほどの生徒がいたとして、その中のたっ
た1人でも授業中に居眠りを始めたなら、たちまちその場のエ
ネルギーは変わってしまいます。
だらーんとした空気に、クラスのみんなのモチベーションは
確実に下がります。
教師の心も、密かに傷つきます。
私が昨年の秋学期、実際に担当していた日本語のクラスでは、
居眠りではないのですが、自分のレベルより下だという考えの
ため、授業をろくに聞いておらず、宿題もほとんどやってこ
ない学生がいて……
その学生の姿勢がクラス全体に与えた影響は大きかったと思う
のです。
さあ、やろう、という雰囲気のときに、冷や水を浴びせられる
ような気が、授業中に何度したことか。
このことを思うと、先生とさやかちゃんのクラスメートたちが
ちょっと気の毒になります。
それでも、物凄い高みを目指してがんばっているさやかちゃん
のことを理解して、見守ってくれたみんながいたからこそ、さ
やかちゃんは慶応に合格できたのでしょうね。
結末がハッピーなサクセスストーリーなのは、読んでいて確か
に救いがあるけれど、その中にはいろいろなことを感じされら
れる要素が、多分にふくまれています。
私は今回、教師の視点で読んでみて、さやかちゃんの居眠りの
部分が一番、心に響きました。
単純に、いい、悪いと評するのではなく、起こったことをその
まま、感じて受け容れようという気持ちになったのです。
教師として。
そうそう、坪田先生も、こんなことをおっしゃっています。
「ダメは人間などいません。ダメな指導者がいるだけなのです。」
いいえ、先生。「ダメな指導者」も、どこにもいませんよ。
もとより、「人間」もいません。
だって、私たちは、観察する「意識」なのですから。
『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて
慶応大学に現役合格した話』
(坪田信貴 著、KADOKAWA、2013年12月)
概要が一目でわかるという点では文句なしのタイトルです
ね。(ちょっと長いけれど……。)
新作ではないのですが、この本をもとにした映画「ビリギ
ャル」を昨年末にテレビで観たのをきっかけに、読んでみ
ました。
慶応に合格した「ビリギャル」こと「さやかちゃん」が、
受験勉強を始める前の状態に、まず度肝を抜かされました。
本の中には具体的にいろいろ書いてあったけれど、私が一番
驚いたのが、さやかちゃんが東西南北をちゃんと理解、把握
していなかったという話。(本当かな~?)
そんな状態から1年余りで偏差値を70前後まで上げて、慶応
に合格してしまうとは……すごいとしか言いようがありません。
もともと、勉強に向いているタイプだったのかもしれません
が、努力して集中し続けたことは、称賛に値すると思います。
私も、同じくらいのことをするのは難しいでしょうけれど、
見習いたいです。
指導した塾の講師、坪田先生も素晴らしい。プロフェッショ
ナルとして、レベルが高いと思います。
本の中には具体的な勉強方法や教材名が書かれているので、
実際に受験を控える人にも参考になることはありそうです。
実は私も以前、塾の講師をしていたことがあり、現在の仕事
は留学生のための日本語の授業なのですが、同じ教師という
目線からもいろいろなことを考えさせられました。
その中でも、特に印象が強かったのは、さやかちゃんが学校
の授業中に寝るようになったときのことです。
これは、受験勉強が大詰めになった段階で、志望校に合格する
ため、学校の授業よりも塾の勉強のほうに時間を割かなければ
ならなくなり……
睡眠時間も削って勉強するため、寝られる時間が学校しかない
という状況になってしまい、止むに止まれずそうしていたそう
なのですが……
授業を担当していた学校の先生も、これには困ったことでしょ
うね。
さやかちゃんのお母さんからも、事情を説明され、寝かせてや
ってほしいと懇願されては……。
もちろん、生徒の受験を応援したくない教師はいないので、そ
れがさやかちゃんのためになるなら、そっと寝かせておいてや
りたいと思う先生もいたことでしょう。
ただ、クラス全体のことを考えると、ことはそう単純にはいき
ません。
例えば、クラスに40人ほどの生徒がいたとして、その中のたっ
た1人でも授業中に居眠りを始めたなら、たちまちその場のエ
ネルギーは変わってしまいます。
だらーんとした空気に、クラスのみんなのモチベーションは
確実に下がります。
教師の心も、密かに傷つきます。
私が昨年の秋学期、実際に担当していた日本語のクラスでは、
居眠りではないのですが、自分のレベルより下だという考えの
ため、授業をろくに聞いておらず、宿題もほとんどやってこ
ない学生がいて……
その学生の姿勢がクラス全体に与えた影響は大きかったと思う
のです。
さあ、やろう、という雰囲気のときに、冷や水を浴びせられる
ような気が、授業中に何度したことか。
このことを思うと、先生とさやかちゃんのクラスメートたちが
ちょっと気の毒になります。
それでも、物凄い高みを目指してがんばっているさやかちゃん
のことを理解して、見守ってくれたみんながいたからこそ、さ
やかちゃんは慶応に合格できたのでしょうね。
結末がハッピーなサクセスストーリーなのは、読んでいて確か
に救いがあるけれど、その中にはいろいろなことを感じされら
れる要素が、多分にふくまれています。
私は今回、教師の視点で読んでみて、さやかちゃんの居眠りの
部分が一番、心に響きました。
単純に、いい、悪いと評するのではなく、起こったことをその
まま、感じて受け容れようという気持ちになったのです。
教師として。
そうそう、坪田先生も、こんなことをおっしゃっています。
「ダメは人間などいません。ダメな指導者がいるだけなのです。」
いいえ、先生。「ダメな指導者」も、どこにもいませんよ。
もとより、「人間」もいません。
だって、私たちは、観察する「意識」なのですから。