店主敬白(悪魔の囁き)

栄進大飯店の店主さがみやがおくる日々の悪魔の囁き。競馬予想や文学・音楽・仕事のグチやちくりまでいろいろ。

強烈なヒト

2005-04-22 13:49:11 | 小説・読んだ本
 先月からぼつぼつと、立原正秋全集を図書館から借りてきている。
 今「13」まで読み終わっているところだが、この中の「血と砂」という作品にとんでもない女の人が出てくる。
 百合子という医者の妻で、とにかく男とエッチしていなとダメ。
 夫以外の愛人がいるのは当たり前で、しかもその愛人に昼夜かまわず電話をかけまくり、そいつの職場に押しかけて(日参して)いき、昼休みの時間にエッチを要求。
 そして夕方まで職場の近くで待機し、終業時間にまたもや相手を拉致(拉致としか言いようのない強引さ)していく。
 ストーカーなんて言葉のなかったのどかな時代だか、これでは出待ち入り待ちのライブハウスの追っかけのねえちゃんも顔負けである。
 こんなことを繰り返しているので、愛人からも「ついていけない」と愛想をつかされ続けているのだが、次から次へと相手を探し、弄ばれようと愛人に売り飛ばされようと恨んでもすぐ忘れ、ひたすらエッチに没入していく。
 心の支えとしての愛が欲しいのでも、癒しが欲しいのでもない。
 ただただ「やりたい」のだ。
 それでしか心のスキマや欠落を埋めることができない。
 通り過ぎたあとに何があるということも、決して振り向かず、肉欲を貪り続けるだけの生活。
 何故自分がそんなにやりたいかなんてもちろん考えてもみない、「小脳」だけで生きているようなヤツは、早くもここにいたのかと思った。
 立原は「日本が平和になってしまったので(平和ボケで)ああいうのが出てくる」とこの女性を斬っているが、平和だからエネルギーがありあまり、ひたすら肉欲につっ走っていくのか。
 なんかこの女、平和とは別に心に問題がありそうなんだけど。
 そんなわけでこいつがストーリーと全然別なところであまりに強烈な行動を続けるので、おいらは主人公やその周囲の人々の姿をすっかり忘れ、ずっとこの女を話の中で追い続けてしまった。
 立原正秋をこんな読み方しちゃいけないんだろうけどね。