店主敬白(悪魔の囁き)

栄進大飯店の店主さがみやがおくる日々の悪魔の囁き。競馬予想や文学・音楽・仕事のグチやちくりまでいろいろ。

その名はイワキジュンイチロウ!

2010-01-27 21:38:21 | Weblog
 俳優の夏夕介さんが、お亡くなりになった。
 夏さんというと、世間の皆様には「特捜最前線」のイメージが強いんだろうな。
 確かにメジャー作だし。
 でも、おいらにとっては「突撃!ヒューマン」の人だったのだ。
 ヒーローが目の前で戦ってくれる作品というのは、そうはない。
 たとえ遊園地などのショーで、ヒーローに会えても、それはそのときだけのことだ。
 しかし、ヒューマンは戦い続けた。子供たちの前で。
 決してブラウン管だけの、フィルムだけの世界に戻ることなく。
 だから人間=human 臭かった。
 そんな(人間臭い)ヒーローは「特撮にうるさい方々」にはあわなかったのか、いつしかこの番組はそんなに話題にもあがることなく、テレビの歴史のどこかに消えていった。
   
 そう、ヒューマンは、「先生」だった。
 エリート臭ぷんぷんの軍人系でも、子供には手の届かないレーサーやカメラマンといったカッコイイけど「特別なお兄さん」ではなかったのだ。
 おいらがどんなにバカでできが悪くても、運動音痴でも・・・いつかは・・・
 この「イワキジュンイチロウ」がやってきて、助けてくれる。
 どうしてもできないこと(あくまで子供レベルの話だけどさあ)を解決するにはどうしたらいいか、教えてくれる。
 そう思っていた。
 いつかは・・・ね。
 優しく、力強いあの手が、おいらもしくは私(だけじゃないと思う)にさしのべられる・・・。
 そう信じていたかったんだよ。
 等身大(これは何も巨大ヒーローを否定するものではない、あくまでもキャラとして等身大、身近にいる雰囲気という意味だ)のヒーローってそういうものだと思う。
 
 そんな役を演じた夏さんがいなくなってしまった。
 噂では、ヒューマンは番組の性質から、DVD等にはなりにくい、ときいているけれど、ぜひ「キョーダイン」以前の夏さんの勇姿を残して欲しいと思う。
 
 そして合掌。ひたすら合掌。
「ぼくらの先生」に。 
 
 

女優の生涯はこんなにも・・・

2010-01-27 09:19:47 | 小説・読んだ本
 ジョイス・C・オーツ「ブロンド」

 あの稀代のセクシー女優、マリリン・モンローの伝記小説だ。
 いや、女優の伝記というより、ノーマ・ジーンという不幸な女の子の一代記、といったほうがいいかもしれない。
 まあこのレビュー見てこの本を読みたいなんて思う人はいないだろうから言うけど、読後あと味は「めっちゃ悪い」。
 とにかくやなヤツのオンパレードである。
 ノーマの母親、里親、恋人(大統領も含む)、ビジネスパートナー、結婚相手(元野球選手も)・・・よってたかって彼女を傷つけ続けたような関わり方しかしていない。
 相手の要求に応えようとして、無様に失敗し、傷ついていく彼女を見ているとそれはそれは痛々しいのである。
 (この場合「イタイ」ではなく、「痛ましい」ということだ)
 なんで、家族に無条件に愛されてはいけない?
 なんで、家族のかわりに自分を愛してくれる人を探してはいけない?
 なんで、不器用ではいけない?
 なんで、美貌だけじゃなくて主婦としても完璧じゃなくちゃいけない?
 なんで、セクシー女優から向上していこうしてはいけない?
 なんで、他人は彼女の人生に恐ろしい予言をする?
・・・何かひとつ人並み以上に突出したものを持っているからといって、そのほかのこともできてアタリマエなのか?
 こうして彼女はずっと、まわりの人間の欲望にふりまわされていく。 
 ちっぽけな願いすらズタズタにされて。

 上下巻のうち、晩年に向って暴走していく下巻は特に圧巻だ。
 まあ小説だから史実ではないけれど、トラップだらけのストーリーが頭の中に滝のように流れこんでくるカンジだ。