店主敬白(悪魔の囁き)

栄進大飯店の店主さがみやがおくる日々の悪魔の囁き。競馬予想や文学・音楽・仕事のグチやちくりまでいろいろ。

あんまり友人に持ちたくない女

2010-03-17 17:20:41 | 小説・読んだ本
 杉本苑子「新とはずがたり」
 他の作者が「とはずがたり」をもとに書いた小説というのは、
「美貌と後深草院との特別な関係ゆえにねたまれる悲劇の女性=二条」
 ということになっている。
 でも、この杉本氏の作品の二条は
「なんか、いや~な女」
 なのである。特別あくどいとか権勢を欲しいままにしたとか、強欲だとかではないけれど、ねちねちと陰でとんでもないことをしているカンジで、女の武器の弱さや涙でガンガン攻めてくる。
 でも、そんな武器があっても恋愛という「勝負のつかない勝負」には「勝てる」わけじゃないんだけどさぁ・・・。

 この作品の主人公は西園寺実兼、つまり原点の「雪の曙」と言われる二条の恋人だった男性だ。良家のお坊ちゃまでそれなりにやり手で、皇室との姻戚関係もばっちり。
 テキトーにお人よしで、テキトーに人が悪くて財産もあるし、当時の宮廷女房ならば、
「自慢できるステキな恋人」のはずである。
 でもその恋人さえ、二条はさんざんに振り回す。

 この作品の二条は「男性から見た二条」である。
 ふだんは陰気かと思うほどおとなしく、琵琶の名手で美貌。
 でもいったん感情的になると・・・
「やはりあなたは破竹(琵琶の名器)が欲しくて私に近づいたのですね・・・」
 ここからはじまりえんえん、相手を責めまくる。
 それどころか宮中から出奔、あげくの果てには出家・・・そして旅に出てしまう。
 もう、ヒステリー全開で暴走していくのだから、この人っておとなしく無力でもはかなげでもなく、けっこうエネルギーがあるんじゃないのか?
 決して男性遍歴を重ねても、それに流される悲劇の女性じゃないと思う。
 少なくとも、この作品では・・・そう、本人が悲しんでいるほどには不幸じゃないんじゃないのか?
 彼女は思い切ったことをずばずばやってのけ、相手をハラハラさせながらもけっこうしぶとく生き抜いている。出家して旅に出て無事に帰ってこれたのも、当時の治安を考えるとたしいた幸運だし、実兼もなんだかんだいいつつ、彼女の面倒を見ているし、院も最後まで 彼女を記憶のかなたに忘れ去りはしなかったのだから・・・。

 もし、こんな人が友人にいたら、おいらはかんべんだ。
 えんえん「いじめられた」「男に冷たくされている」など気分の悪いときにはさんざんグチって、こっちに近寄ってこないときにはちゃっかり自分の人生を楽しんで、友達のことなんか忘れていそうだからだ。 
 あくまでも女、どこまでも女・・・こんな言葉はこの小説の二条のためにあるもんだと思う。

店主の最近見ているDVD

2010-03-17 01:04:36 | Weblog
 ①タイタニア・・・やっぱ面白い。でも壮大そうに見えてあんなちょっとで終わるのはもったいない気がするんだけどな。ゴージャス対貧乏を銀英伝ぐらい続けて欲しかったけどさあ。原作って短かったよね?
 でも、なんか銀英伝に比べて脇キャラがあんまり好きになれない。
 まあ、メインの人物が多いぶん、ちょっとだけ出てくる人っていうのはそんなにカッコよくないのかも。
 ②昔の必殺・特番シリーズ・・・アメリカ行ったり桜田門外の変に巻き込まれたり、現代版ができたり・・・むちゃくちゃだけどやっぱ必殺。現代篇も見た。すけべそうな中条きよしがミョーに生臭いので、中条きよしはやっぱ時代劇で見たほうが好きだな。
  
 

贋作王ダリ

2010-03-17 00:14:45 | 小説・読んだ本
 今回はこの本。
 ま~とんでもない内容の本である。
 20世紀を代表する芸術家、ダリ。
 その狂気じみた私生活と、そのとんでも私生活を維持するためにタレ流しにされた贋作「芸術」。
 読んでいてめまいがするようなダリとガラの果てしない欲望。
 お金のためなら、贅沢のためなら白紙にサインをしてばんばん売ってしまうのである。
 (もちろん後から、絵が印刷されてくる)
 油絵と違って大量生産できるリトグラフの世界は、これだから怖いのだ。
 なんか芸術愛好家をナメきったような世界がえんえん続くんだけど、
「どうせみんな、資産(投資)として作品を買ってるんだから、いいじゃん」
「こんなもん買うほうが悪いんだよ」
 と言われてるようで、だんだんハラが立ってくるのだ。
 そう、白紙にサインをしながら朝食をとっているシーンを読んでいると、かなりムカムカしてくる。そばにいたら思わず殴りたくなるほどにだ。
 まあ、こんなことしてたら主人公(絵画の斡旋人)じゃなくてもイヤ気がさしてくるんだろうな、と思うけどね。
 読後感はかなり悪い。
 でもそれは作者のせいでも主人公のせいでもない。
 ダリ夫婦とその二人を骨抜きにして「金もうけマシン」にしてしまった周囲の連中、
あんたらがすべて悪い。