店主敬白(悪魔の囁き)

栄進大飯店の店主さがみやがおくる日々の悪魔の囁き。競馬予想や文学・音楽・仕事のグチやちくりまでいろいろ。

それは深く激しく

2010-03-12 22:31:48 | 小説・読んだ本
 今回は有馬頼義「遺書配達人」
 戦争名作シリーズと銘打たれた軽装本だけど、確かに名作かもしれない。
 
 中国戦線でひとりだけ内地に送り返された男が、戦友たちのかわりに残された家族に各戦友の遺書を届けに行く、オムニバス形式の小説だ。
 戦後の混乱・生きるため必死の日々、そしてその中で何かが壊れ、何かが生まれていく・・・。
 そこに書かれているのは新しい時代への「希望」なんておめでたいものじゃない。
 戦争で家族を亡くした人たちの、「遺書配達人」の、怒りと怨念だ。
 なんか風俗小説っぽく読みやすくできているけれど、書いてあることはかなり重い。
 遺書がすべて配達されても、決して戦争は終わらない・・・。


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