星さんぞう異文化きまぐれ雑記帳

異文化に接しての雑感を気ままに、気まぐれに

ケロウナ便り(12) 穏(おだやか)

2006年06月07日 18時32分36秒 | Weblog

ケロウナの印象を漢字一文字で表すとしたら、私は「穏(おだやか)」が適当だと思っています。

7~8月の炎熱と気温零下に及ぶ真冬を経験するとまた別の印象をもつかも知れませんが、気候は別にしてケロウナの風土というか人間模様というか、町が醸し出す雰囲気がなんとも穏やかなのです。温かいと表現しても良いかも知れません。なぜこんな印象を持つのか考えてみました。

まず第一に自然環境が大きく貢献しているのは間違いありません。山と湖のコンビネーションが人間の情緒を安定させてくれるのでしょう。岩盤を剥き出しにしたロッキーのような高い山々では圧倒されて息苦しくなりそうですが、ケロウナは山というより丘の部類に入る600メートル以下のなだらかな小山が遠くに稜線を連ねながら、その丘の斜面を葡萄をはじめいろいろな果樹が覆い、緑したたる景観を作り出しているのです。その丘の中腹あたりから湖のレベルにかけてのなだらかな斜面に住宅が点在して、一幅の絵を思わせるようななんとも平和な穏やかな風景です。こんな環境に浸るだけで心が和み、癒されてこちら側の心の鎧が解けて、なんでも素直に受け入れようとする心理状態になるのではないでしょうか。

全長160キロといわれるオカナガン湖はケロウナあたりで一番幅が狭くなり湖を横切る国道に橋が架けられています。オカナガン湖に架かる唯一の橋だそうです。湖と言うより「河」のような景観で、湖面に反射する夕陽がオカナガン湖の両岸に広がるワイナリーの葡萄畑を照らし出す時刻には、あたり一面黄金色に輝く別世界となるようです。極楽浄土もかくありなんと思われる、有難くも穏やかな景色ではありませんか。
(写真は滝沢さんから拝借)

穏やかさを醸し出すもう一つの要素はケロウナの人間模様でしょう。街全体がしっとりと落ち着いているのです。それもそのはず、60歳以上のシニア世代がケロウナの人口の25%を占めていると聞いて納得です。若者も居るし、小さな子供も居るには居ますが、とにかく「大人」が目立つのです。動きも悪く言えば緩慢、良く言えば落ち着いてバタバタしない余裕のペース。投げかけられる視線も穏やかで友好的。眉間に縦しわ寄せて辛気臭い顔をした御仁にはまず出くわしません。時間がゆっくり流れているのが実感できるといったら言い過ぎかな?

カナダに移住して辛苦の末に功成り名を遂げた先輩の日本人。日系移民の先達の評判のおかげで対日感情がきわめて良好なケロウナです。日本人と言うそれだけでそれとなく好意の目で見てくれるケロウナの人々。少なくともアメリカ本土で感じるような「差別のまなざし」がケロウナでは微塵も感じられないのです。これは大変気持ちの良いことで、短期とはいえそこに住む者としては有難いことです。先達に感謝!

これはアメリカでも経験したことですが、老若男女を問わず人の名前を覚えるのが皆さん早くて上手です。国民が、市民が多様な民族構成となっているので生活の知恵として人々の間に定着しているのでしょうが、とにかく負けます。

ゴルフ場の花壇整備の仕事をしている女性(Flower Girlと呼ばれています)の脇を通り過ぎようとしたら、どうも去年の夏に声かけあった人のようで、顔に見覚えがあります。

Hello Sanzo! You are back.  Nice to see you again!
いきなり名前を呼ばれて嬉しいやら驚くやら。
Oh, what a surprise, you remembered my name. You are, ah, ah, Janie, right?
私も負けずに脳みそのしわ伸ばして精一杯の笑顔で応えます。
It's Annie, but it's OK. Have a great stay this summer,  Sanzo!
恥ずかしくて、申し訳なくて、会わす顔なくて、そそくさとその場を離れ、「二度と忘れまいぞ!」「二度と忘れるんじゃないぞ!」と自分に言い聞かせたものでした。

来年の夏にまたAnnieと再会したときにはこちらからNice to see you again, Annie!!と先手を打つのが楽しみです。