北へふたり旅(109)

ホテルへ戻ったのは午後6時。
とりあえず部屋へはいる。窓の外、まだ陽は高い。
夕食の予約はしていない。
したがって今夜もどこかで札幌の食を楽しむことになる。
「なにが食べたい?」
「そうねぇ。最後はやっぱり札幌の味噌ラーメンかしら」
「どうせ行くなら、地元のおすすめがいいね」
「フロントのお姉さんに聞いてみましょう」
「すこし呑みたいけどね」
「駄目です。明日は長旅になります。
無理して途中で調子がわるくなったら大変です。
今夜は自重して、はやく寝ましょう」
「旅の最終日は早寝か・・・味気ないな」
「なに言ってんの。
不整脈が悪化したらそれどころではありません。
ラーメンを食べた後、すこしでいいのなら特別にユキちゃんのお店で
ビールくらい、許可します」
「ユキちゃんお店に出るの?。休みのはずだけど」
「きゅうな予約が入り、忙しくなったと店長さんから電話が有りました」
「混んでるのか・・・
となるとまた、放っておかれるな、ユキちゃんに」
「それがあの娘との出会いですもの。
2度あることは3度ある。
今夜も放っておかれるかもしれません。
有ればそれもまた運命です。うふっ」
フロントのお姉さんは地元のおすすめ店を、ていねいに教えてくれた。
「すこし解りにくいので」と地図まで添えてくれた。
ホテルを出て、時計台通りを南へくだる。
教えてくれたラーメン屋は、さいしょの交差点を左へまがる。
その交差点を右へ曲がると、ユキちゃんの居酒屋へつうじる路地が有る。
どうしょうか・・・思わず立ち止まってしまった。
「どうしたのあなた。いまなら渡れます」
「いや。ちょっと気になってね」
「なにが?」
「地元の人がおすすめの店は、たぶん、味が濃すぎると思う」
「濃厚なラーメンが食べたくて、
わざわざ、地元の人おすすめのお店へ行くんでしょ?」
「君の高血圧に良くないぜ。それに・・・」
「それに?」
「収まりかけた俺の不整脈が、また暴れはじめるかもしれない。
濃すぎる札幌の味噌ラーメンのせいで」
「言いたいことはわかりました。
ラーメン屋さんのある左ではなく、右へ行きたいという事ですね」
「そうは言ってない」
「停まったままのあなたの足が、そんな風につぶやいています」
行きましょうと妻が、ユキちゃんの居酒屋が有るビルの谷間を指さす。
(110)へつづく

ホテルへ戻ったのは午後6時。
とりあえず部屋へはいる。窓の外、まだ陽は高い。
夕食の予約はしていない。
したがって今夜もどこかで札幌の食を楽しむことになる。
「なにが食べたい?」
「そうねぇ。最後はやっぱり札幌の味噌ラーメンかしら」
「どうせ行くなら、地元のおすすめがいいね」
「フロントのお姉さんに聞いてみましょう」
「すこし呑みたいけどね」
「駄目です。明日は長旅になります。
無理して途中で調子がわるくなったら大変です。
今夜は自重して、はやく寝ましょう」
「旅の最終日は早寝か・・・味気ないな」
「なに言ってんの。
不整脈が悪化したらそれどころではありません。
ラーメンを食べた後、すこしでいいのなら特別にユキちゃんのお店で
ビールくらい、許可します」
「ユキちゃんお店に出るの?。休みのはずだけど」
「きゅうな予約が入り、忙しくなったと店長さんから電話が有りました」
「混んでるのか・・・
となるとまた、放っておかれるな、ユキちゃんに」
「それがあの娘との出会いですもの。
2度あることは3度ある。
今夜も放っておかれるかもしれません。
有ればそれもまた運命です。うふっ」
フロントのお姉さんは地元のおすすめ店を、ていねいに教えてくれた。
「すこし解りにくいので」と地図まで添えてくれた。
ホテルを出て、時計台通りを南へくだる。
教えてくれたラーメン屋は、さいしょの交差点を左へまがる。
その交差点を右へ曲がると、ユキちゃんの居酒屋へつうじる路地が有る。
どうしょうか・・・思わず立ち止まってしまった。
「どうしたのあなた。いまなら渡れます」
「いや。ちょっと気になってね」
「なにが?」
「地元の人がおすすめの店は、たぶん、味が濃すぎると思う」
「濃厚なラーメンが食べたくて、
わざわざ、地元の人おすすめのお店へ行くんでしょ?」
「君の高血圧に良くないぜ。それに・・・」
「それに?」
「収まりかけた俺の不整脈が、また暴れはじめるかもしれない。
濃すぎる札幌の味噌ラーメンのせいで」
「言いたいことはわかりました。
ラーメン屋さんのある左ではなく、右へ行きたいという事ですね」
「そうは言ってない」
「停まったままのあなたの足が、そんな風につぶやいています」
行きましょうと妻が、ユキちゃんの居酒屋が有るビルの谷間を指さす。
(110)へつづく