北へふたり旅(113)
「締めはやっぱり、ラーメンでっしょ」
「パフェじゃないのか?」
「パフェは昨日食べたでしょ。
すすきのの締めはやっぱりラーメン。それも大衆食堂の!」
「大衆食堂のラーメン?。やってるか?。もう午前零時だぜ」
「だから困るっしょ。群馬から来た田舎者は。
すすきのは眠らない街なの。食堂も午前3時まで営業しているっしょ」
案内されて驚いた。
入り口に定食と書かれた白い暖簾が揺れている。ホントに食堂が開いていた。
中へ入ってもっと驚いた。
カウンターだけの狭い店。7~8人が座ればもう満席だ。
壁にびっしり定食の名前がならんでいる。
ラーメンは・・・あった!。しかし、いちばん最後に貼ってある。
「末席に貼ってあるぞラーメンは・・・。だいじょうぶか?」
「真打は最後に登場。
だいじょうぶっしょ。ここのラーメンは絶品ですから」
「じゃ全員ラーメンにしましょ。大将、ラーメン5つ!」
いきなりアイルトンがラーメンを頼んでしまう。
だが誰ひとり反論しない。呑んだ後のあがりはやはりラーメン。
これに尽きる。
「人はなぜ旅に出るのでしょうか?。ねぇ、おじさま」
「アイルトンに聞いてみな。
彼は旅行社の人間。しかも凄腕だ。
日本中にたくさんの中国人観光客を送り込み、爆買いの火をつけた」
「わたしは旅に出させる側の人です。
なぜ旅に出たいかはそちらのお2人に聞くのが、正解と思います」
質問が戻ってきた。人は何故旅に出るのだろうか・・・
たぶん深い意味はない。
漠然と、旅へ行きたいと考えるときがある。
疲れているとき、いき詰まっているとき、そんなとき、
ふと遠くへ行きたいと思うことがある。
活力に満ちているときは旅に出たいなどと考えない。
ひとは気持ちが下向きになった時、気分転換やあらたな刺激を求めて
旅に出たいと考えるのではないだろうか・・・
「農家の仕事に休みは無いの。そのせいかしら」
妻がつぶやく。
ナスのシーズンは3月から7月まで。キュウリは9月から12月まで。
12月から3月まではホウレンソウとネギの収穫。
雪の降らない群馬の農家に、休みは無い。
8月。暇に見えるが土壌消毒をはじめ、普段は出来ないハウスの手入れ、
つぎの作物のための堆肥の準備など、やるべきことが山のようにある。
「機械化がすすんでも、収穫は人の手が頼り。
ナスもキュウリも規格があるから毎日、収穫しなければなりません。
小さすぎても駄目。大きすぎても駄目。
ちょうど良いおおきさを収穫するため、ひたすらハウスへ入ります。
暑いわよ。6月のビニールハウスは40℃をこえます。
毎日毎日、汗を流しながら、これが終ったら旅行へ行きたいねって、
もくもくと頑張るの。
ご褒美でしょうか。一年間、よく頑張りましたという」
農作業は重労働ではない。しかし、けして楽な仕事でもない。
第一次産業における最大の課題は、機械化がすすまないこと。
とくに収穫において機械化がすすまない。
フルオートメーションのハウスもあるが、設備だけで数千万円かかる。
ほとんどの農家が対応できない。
目で見て手で取る。それがほとんどの農家の現状だ。
「いつまで働くことができるだろうかと考えながら、
「締めはやっぱり、ラーメンでっしょ」
「パフェじゃないのか?」
「パフェは昨日食べたでしょ。
すすきのの締めはやっぱりラーメン。それも大衆食堂の!」
「大衆食堂のラーメン?。やってるか?。もう午前零時だぜ」
「だから困るっしょ。群馬から来た田舎者は。
すすきのは眠らない街なの。食堂も午前3時まで営業しているっしょ」
案内されて驚いた。
入り口に定食と書かれた白い暖簾が揺れている。ホントに食堂が開いていた。
中へ入ってもっと驚いた。
カウンターだけの狭い店。7~8人が座ればもう満席だ。
壁にびっしり定食の名前がならんでいる。
ラーメンは・・・あった!。しかし、いちばん最後に貼ってある。
「末席に貼ってあるぞラーメンは・・・。だいじょうぶか?」
「真打は最後に登場。
だいじょうぶっしょ。ここのラーメンは絶品ですから」
「じゃ全員ラーメンにしましょ。大将、ラーメン5つ!」
いきなりアイルトンがラーメンを頼んでしまう。
だが誰ひとり反論しない。呑んだ後のあがりはやはりラーメン。
これに尽きる。
「人はなぜ旅に出るのでしょうか?。ねぇ、おじさま」
「アイルトンに聞いてみな。
彼は旅行社の人間。しかも凄腕だ。
日本中にたくさんの中国人観光客を送り込み、爆買いの火をつけた」
「わたしは旅に出させる側の人です。
なぜ旅に出たいかはそちらのお2人に聞くのが、正解と思います」
質問が戻ってきた。人は何故旅に出るのだろうか・・・
たぶん深い意味はない。
漠然と、旅へ行きたいと考えるときがある。
疲れているとき、いき詰まっているとき、そんなとき、
ふと遠くへ行きたいと思うことがある。
活力に満ちているときは旅に出たいなどと考えない。
ひとは気持ちが下向きになった時、気分転換やあらたな刺激を求めて
旅に出たいと考えるのではないだろうか・・・
「農家の仕事に休みは無いの。そのせいかしら」
妻がつぶやく。
ナスのシーズンは3月から7月まで。キュウリは9月から12月まで。
12月から3月まではホウレンソウとネギの収穫。
雪の降らない群馬の農家に、休みは無い。
8月。暇に見えるが土壌消毒をはじめ、普段は出来ないハウスの手入れ、
つぎの作物のための堆肥の準備など、やるべきことが山のようにある。
「機械化がすすんでも、収穫は人の手が頼り。
ナスもキュウリも規格があるから毎日、収穫しなければなりません。
小さすぎても駄目。大きすぎても駄目。
ちょうど良いおおきさを収穫するため、ひたすらハウスへ入ります。
暑いわよ。6月のビニールハウスは40℃をこえます。
毎日毎日、汗を流しながら、これが終ったら旅行へ行きたいねって、
もくもくと頑張るの。
ご褒美でしょうか。一年間、よく頑張りましたという」
農作業は重労働ではない。しかし、けして楽な仕事でもない。
第一次産業における最大の課題は、機械化がすすまないこと。
とくに収穫において機械化がすすまない。
フルオートメーションのハウスもあるが、設備だけで数千万円かかる。
ほとんどの農家が対応できない。
目で見て手で取る。それがほとんどの農家の現状だ。
「いつまで働くことができるだろうかと考えながら、
今年も一年、健康に頑張れたことに感謝する。
いつのまにかそんな歳になった。
そして旅に出る。
旅に出ることは、俺たちのこころのボーナスかな・・・」
「こころのボーナスですか。いい言葉です」
旅のプロのアイルトンが、なるほどと目を細める。
(114)へつづく
いつのまにかそんな歳になった。
そして旅に出る。
旅に出ることは、俺たちのこころのボーナスかな・・・」
「こころのボーナスですか。いい言葉です」
旅のプロのアイルトンが、なるほどと目を細める。
(114)へつづく