オヤジ達の白球(76)2つの解体班
朝8時。つぶれた慎吾のビニールハウスの前に部員全員が集まっている。
その中に県職の柊の姿がある。
「なんだぁ?。この場に俺が居たのじゃまずいか。
不満そうだな、その顔は」
「不満はないさ。ただ驚いているだけだ。
孤立した集落の救助作業で忙しいと聞いていたから、今回はてっきり
不参加だとばかり思っていた」
「救助活動は続いているさ。自衛隊や消防の連中が必死に頑張っている。
俺もついさっき、孤立の現場からここへ着いたところだ」
「孤立した集落の救済だって?。
確かお前さんは、立ち往生の車の救済へ飛んでいったはずだが・・・」
「道路はすっかり片付いた。
残った問題が、過疎集落の孤立だ。
山間の集落が大雪のため道路が寸断されて、孤立した状態がいまもつづいている。
いまはそっちで陣頭指揮だ」
「道路の次は孤立集落の救助か。たいへんだな。県の総合土木職という仕事も」
「だがここだって、俺が居なきゃ困るだろう。
ビニールハウスの解体を知っているのは、俺だけだ。
総合職の前は、農業普及所勤務で県内の農家を飛び回っていたからな」
「そいつはありがたい。
だが、強い味方がもうひとりいる。北海の熊だ。
やっこさんは会社で、ビニールハウス撤去グループの責任者に任命されたそうだ」
「それは好都合。
じゃ北海の熊と手分けしてチームを、解体班と仕分け班の2つにわけよう」
「2つにわける?。どういう意味だ?」
「これだけの人数がいれば、ビニールハウスの解体と、部品の仕分けが同時に出来る。
捨てる部材もある。だがあとで使える部品もけっこう有るからな」
「おいみんな。こっちへ集まってくれ」
柊が、全員にむかって大きな声を出す。
「内野の選手は俺の前へ。外野の選手は北海の熊のほうへ集まってくれ」
内野の選手たちが、ぞろぞろと柊の前へ集まって来る。
「内野の諸君の仕事は、解体の現場から出てくるさまざまな部品の選別と管理だ。
ビニールハウスは、いろいろな留め具で出来上がっている。
溶接されている箇所はひとつもない。
パイプをはじめすべての部品が、留め具によって接合されている。
つまり接点の数だけ留め具の部品が有ることになる。
変形した留め具は使えないが、無傷なら再利用することができる」
「なるほど。
ビニールハウスを再建するための部材が、極端に不足しているという話は聞いた。
そういうことか。
使えるものはすべて再建のために、選別してストックしておくんだな」
「そういうことだ。
変形したパイプは使えない。しかし原型をとどめたものや、無傷のものは再利用できる。
内野の君たちは、リサイクル班としてすべての部品の選別と管理にあたる」
熊の前へ、外野の選手たちが集まる。
「外野のおれたちは、解体班だ。
これからみんなに作業用の道具を手渡す。
マイナスのドライバーと金づち、ビニールを切断するためのカッター。
つかうのはこの3つの道具だけだ」
「シンプルな道具ばかりだな。
解体のための道具が、いろいろ必要だとばかり思っていたが・・・」
「これで十分さ。
建てるときは、金づちひとつで充分だ。
ビニールハウスは昔は農家が、農閑期にみずから手仕事で建ててきたからな。
難しくはない。しかし、手順を間違えるとやっかいなことになる。
解体の手順を説明するから、耳をかっぽじってよく聞いてくれ」
「メモをとる必要があるか?」
「それほど難しくはねぇ。話を聞くだけで十分だ。
ただし。安全を確保するため現場へ入るときは、全員ヘルメットを着用してくれ」
全員にヘルメットと軍手が渡される。
「了解だ。じゃ俺たちは、何から手を付けたらいいんだ?」
(77)へつづく
ご無沙汰いたしました。
カテーテル以来、はや、まるまる2ヶ月。
全快とはいきませんが、1日、5時間ほどの農作業にようやく耐えられる身体になってきました。
とはいえ、自分の身体と相談しながらの、よちよち歩きの回復期です。
すこしずつ負荷を増やし、元気な身体と精神力を取り戻したいと思います。
本日より、続編を執筆したいと思います。
休暇中にもかかわらず、たくさんの方が訪問してくれたことに、こころより感謝をもうしあげます。
10月5日。落合順平
朝8時。つぶれた慎吾のビニールハウスの前に部員全員が集まっている。
その中に県職の柊の姿がある。
「なんだぁ?。この場に俺が居たのじゃまずいか。
不満そうだな、その顔は」
「不満はないさ。ただ驚いているだけだ。
孤立した集落の救助作業で忙しいと聞いていたから、今回はてっきり
不参加だとばかり思っていた」
「救助活動は続いているさ。自衛隊や消防の連中が必死に頑張っている。
俺もついさっき、孤立の現場からここへ着いたところだ」
「孤立した集落の救済だって?。
確かお前さんは、立ち往生の車の救済へ飛んでいったはずだが・・・」
「道路はすっかり片付いた。
残った問題が、過疎集落の孤立だ。
山間の集落が大雪のため道路が寸断されて、孤立した状態がいまもつづいている。
いまはそっちで陣頭指揮だ」
「道路の次は孤立集落の救助か。たいへんだな。県の総合土木職という仕事も」
「だがここだって、俺が居なきゃ困るだろう。
ビニールハウスの解体を知っているのは、俺だけだ。
総合職の前は、農業普及所勤務で県内の農家を飛び回っていたからな」
「そいつはありがたい。
だが、強い味方がもうひとりいる。北海の熊だ。
やっこさんは会社で、ビニールハウス撤去グループの責任者に任命されたそうだ」
「それは好都合。
じゃ北海の熊と手分けしてチームを、解体班と仕分け班の2つにわけよう」
「2つにわける?。どういう意味だ?」
「これだけの人数がいれば、ビニールハウスの解体と、部品の仕分けが同時に出来る。
捨てる部材もある。だがあとで使える部品もけっこう有るからな」
「おいみんな。こっちへ集まってくれ」
柊が、全員にむかって大きな声を出す。
「内野の選手は俺の前へ。外野の選手は北海の熊のほうへ集まってくれ」
内野の選手たちが、ぞろぞろと柊の前へ集まって来る。
「内野の諸君の仕事は、解体の現場から出てくるさまざまな部品の選別と管理だ。
ビニールハウスは、いろいろな留め具で出来上がっている。
溶接されている箇所はひとつもない。
パイプをはじめすべての部品が、留め具によって接合されている。
つまり接点の数だけ留め具の部品が有ることになる。
変形した留め具は使えないが、無傷なら再利用することができる」
「なるほど。
ビニールハウスを再建するための部材が、極端に不足しているという話は聞いた。
そういうことか。
使えるものはすべて再建のために、選別してストックしておくんだな」
「そういうことだ。
変形したパイプは使えない。しかし原型をとどめたものや、無傷のものは再利用できる。
内野の君たちは、リサイクル班としてすべての部品の選別と管理にあたる」
熊の前へ、外野の選手たちが集まる。
「外野のおれたちは、解体班だ。
これからみんなに作業用の道具を手渡す。
マイナスのドライバーと金づち、ビニールを切断するためのカッター。
つかうのはこの3つの道具だけだ」
「シンプルな道具ばかりだな。
解体のための道具が、いろいろ必要だとばかり思っていたが・・・」
「これで十分さ。
建てるときは、金づちひとつで充分だ。
ビニールハウスは昔は農家が、農閑期にみずから手仕事で建ててきたからな。
難しくはない。しかし、手順を間違えるとやっかいなことになる。
解体の手順を説明するから、耳をかっぽじってよく聞いてくれ」
「メモをとる必要があるか?」
「それほど難しくはねぇ。話を聞くだけで十分だ。
ただし。安全を確保するため現場へ入るときは、全員ヘルメットを着用してくれ」
全員にヘルメットと軍手が渡される。
「了解だ。じゃ俺たちは、何から手を付けたらいいんだ?」
(77)へつづく
ご無沙汰いたしました。
カテーテル以来、はや、まるまる2ヶ月。
全快とはいきませんが、1日、5時間ほどの農作業にようやく耐えられる身体になってきました。
とはいえ、自分の身体と相談しながらの、よちよち歩きの回復期です。
すこしずつ負荷を増やし、元気な身体と精神力を取り戻したいと思います。
本日より、続編を執筆したいと思います。
休暇中にもかかわらず、たくさんの方が訪問してくれたことに、こころより感謝をもうしあげます。
10月5日。落合順平
これは相当重症かな??と心配していた
矢先に・・ほんと嬉しく安心しました
人間はなんといっても体が資本です
体が不調ですと、読み書き算盤全部
だめです。これからは無理せずに
自分の体をもっといたわってあげて
いつもの元気な自分を取り戻してください
ひとまず 再開に感謝申し上げます
そしてまだまだ お大事に・・
そんなことを実感している昨日、今日です。
若い頃ならV字で回復したのでしょうが、
この歳になると一進一退の繰り返しになります。
焦らず、頑張り過ぎず、諦めず、
コツコツと基礎体力の備蓄と増進につとめています。
1日に8000歩を目安に歩くことにしました。
農作業であるくのは、せいぜい2500歩から3000歩。
不足した歩数を補うために、午後4時頃から
1時間ほどかけて歩きます。