のほほんとしててもいいですか

ソプラノ歌手 佐藤容子のブログです。よろしくお願いいたします!

創作『お姫様と小間使い』

2008-04-20 | 『創作・短いお話』









小間使いの女はいつも、お姫様の身の回りの世話をしていた。




今日もそうだった。




昨日もそうだったように。





お姫様は美しかった。



小間使いの女もまあまあ美しかった。




小間使いの女は思った。



お姫様の美しさと私の美しさは大して変わらない。



お姫様の目の方が、ほんのちょっとパッチリしているだけだ。




なのに、なぜお姫様はお姫様で、私は小間使いなんだろう…。





でも、小間使いはお姫様が時々見せる不安そうな横顔を見ると、少し優越感を感じていた。




なぜなら、お姫様の運命は王様のそれによっていた。




王様の最後の愛妾であるお姫様は、王様の死と同時に城から追われる。




そして、卑しい身分に引きずり落とされる未来だ。





人は落差に強くないらしい…。





小間使いの私は落ちようがたかが知れていた。





お姫様が卑しい身分に身を落とせば、その痛みはひとしおだろう。





きれいな衣装で月を見上げるお姫様の心の痛みも、惨めな衣装で月を見上げる私の心の痛みも、大して変わらないと思うと、可笑しい。





そんなとき、人の幸せはどこにあるんだろうか…、と思う。





そうは言っても恐らくは明日も、お姫様にはお姫様の明日が、私には小間使いの明日が来るのだろう。




川の水が高みから下へ下へと向かうように、私も流れ落ちる明日をそのままこの身に受けようか。





明日の朝目覚めた時に、もし明日が目の前に横たわっていたら、そうしよう。






《おわり》
















〇空の写真は20日の朝8時頃に、部屋の窓から撮りました。
 この日は、昼間はくもっていましたが、朝はひと時だけきれいな空が見れました。


コメント
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