Tokyo FMホールで、東京室内歌劇場の主催するオペラ、モーツアルトの『魔笛』を観てきました。
これは、構成・演出を青島広志先生が執り行い、ブルーアイランド版としておなじみです。
設定が、モーツアルトの設定とは違い、登場人物が妖怪屋敷の生物たち、人間世界の住民たち、に分かれています。
忍者志望の若者タミーノが、夜の女王の娘パミーナを救いに、妖怪屋敷に忍び込みます。
感想を一言で言うと、うける。
こんな笑ったオペラはありません。
なにがおかしいかというと、出演者の衣装、メイク、せりふ、動き、完全にお笑いです。
ですが、そこに本物の音楽が来るので、エネルギーのギャップから来る印象は鮮烈です。
小学生の笑いを何度が聞き、まずこんなオペラ、ないよな~、と思いました。
でも、コケティッシュな動き、ずーっと観ていると、ただ笑いを取ろうとしているのではないことが、感じられてきます。
裏演出があるのです、と、勝手に理解しました。
おもしろい動きは記号でした。
記号を各役に持たせて、ストーリーの理解速度を速めていました。
また、夜の女王、若者タミーノ、娘パミーナには、おもしろい動きは極力させずに、セリアとしての純粋性を保っているように感じました。
なんて、そんなのはわたしの単なる印象です。
出演者の皆さん、歌も去ることながら、おもしろい演技が達者です。
あー、また観たい。
出演者のなかに、二期会研究所の同期の坂野由美子さん、知り合いの阿部祐介さんがいました。
坂野由美子さんは国立音大の先輩でもありますが、すっごい気持ちの優しい方、いろいろお世話になりました。
今回は、パパゲーナ役だったのですが、青島先生の作った設定では砂かけばばあ、で…
でも、コメディアンの才能を爆発させて、子供の笑いをさらってました。
歌は、さらに精進されて、的確な歌唱でした。
阿部祐介さんは、モノスタトスでしたが、黒人小姓、という役で、これまたおもしろい役回り…
達者な演技でうまくオペラの進行役になっていました。
主役のタミーノ、青地英幸さんは、美声で、豊かで…
美しい娘、パミーナは浅野美帆子さん、丁寧で心の機微を感じる歌
童子の武澤佳絵さん、美声で音程も正確、すばらしいモーツアルト、印象的。
侍女の三津山和代さん、きれのある演技、おもしろすぎました。
僧侶の、ここではナメクジですが、神谷真士さん、笑いのつぼにはまり…個人的に気に入りました。
青島広志先生は、音楽の楽しさを伝えるために、1秒も惜しまず、といった感じです。
情熱と普通の人間には計り知れない大きな才能、人間的な魅力を感じました。
坂野由美子さん
阿部祐介さん
二期会でお世話になった前澤悦子先生、演出の青島広志先生