根っから甘えん坊のエルくんは、わたしが朝食の支度を終えて席に着くと、
熱視線を注いで「うーにゅー」と鳴き、足に体を摺り寄せ、それから膝にぽーんと飛び乗る。
で、首っ玉に抱きつきながら、ゴロゴロ喉を鳴らして、耳たぶを舐め続ける。
名前を呼ばれて撫でられると、えらく幸せそうな顔をする。
毎朝の日課のようになっているが…そのためにわたしの朝ごはんはいつも冷めてしまうのだった。
お弁当詰めやゴミ捨てなどで朝は忙しいから、できればべたべたするのは昼下がりにしてほしいけど…
今や他の時間はそこまで甘えないのよね。何故?
さて、多頭飼いがうまくいくケースもあるから、と二匹の猫を飼った我が家。
結果は案の定、相性が悪くてうまくいかないほうであった。
仲がいいと、お互いの体をグルーミングしあったり、冬にはくっついて寝たり、
すれ違う時にあいさつしたりするものであるが、うちの猫らはそういうことはしない。
(エルは時々、さくらの額を舐めてあげたりするのだが、その時のさくらは実に嫌そうな顔をする)
さくらにしてみれば、大好きなダーリンに愛され、世話係にかしずかれて穏やかに暮らしてきたところに、
空気の読めない暴れん坊の小僧がやってきたのだから、ひたすら苛々するのであろう。
エルにしても、もっとおおらかに交流を持ってもらえるつもりでじゃれようとすれば、
大人猫に真剣に激怒されてしまうのだから、混乱して逆ギレするのも道理。
それでも猫は、お互いに干渉しあわないように場所を分け合って生活するという話を聞いたが、
エルはオス猫なので縄張り意識が強く、「自分のもの」と思う場所にさくらがいると、
別にそこに落ち着きたい訳でなくとも突進する。
たいていはさくらが面倒くさそうに移動するのだが、先住猫なのに気の毒である。
それもこれも、血縁のない二匹の多頭飼いを実施したわたしのせいなのであるが…。
さくらさんも…本当に神経質で社会性ないよね…。
エルも驚くほどKY。
ちょっとは成長したけど、まだまだ周りを困らせるわんぱく坊主なのです。
あんまり共用のものを独占しないでよ。
昨夜は夫が先に就寝したので、エルをケージに入れて、わたしはお風呂。
エルがいないとのびのびするさくらが、ひそかに遊んでいるようだったので、
寝る前に普段は猫出禁の和室をちょっとだけ開放。
するとお嬢さん、箪笥の上に上がって、
スーパーのレジ袋をためていた紙袋に入ってしまいました。
ガサガサガサ。
「これ、好き」
珍しくいたずら。
このあと、レジ袋の軽く縛ったもので遊び出したので、
興奮して食べないように見守りながら、時折ぽーんと投げてやると、市販のおもちゃよりも大喜び!
まるで「キングダム」の羌瘣みたいに軽やかに宙を舞い、ぱしぱしっと手を出してレジ袋を動かしていました。
日頃はおもちゃを出しても、エルの前では気乗りしない態度なんだけど。
本当は遊びたい気持ちを結構我慢してるんだろうなあ…。ひょっとして、エルより弱くなっているのかしら。
と、一瞬心配したけど、さくらのほうがエルに因縁つけて追っかけることも、よくあるのでした。
エルがさくらにちょっかいを出し、さくらから強く睨まれて
「そこまで怒ることないじゃん」的な声で鳴くこともあるし。
そんなに負けてないか。本気になれば迫力があるさくらのほうが強そうだな、と思い返しました。
二匹とも、どちらかが一方的にいじめられるわけではなく、
遊びとしては乱暴だけど、お互いにやってやり返す状態だから、険悪な仲というわけではないのかも。
まあ、姉弟ってそんな形もありか。