原田マハ作「リーチ先生」を読みました。イギリスの芸術家バーナード・リーチさんの伝記です。1887年(明治20年)生まれの彼は芸術家を志していました。1909年に来日し日本の陶芸に出合います。この小説の登場人物がすごいのです。尾形乾山、柳宗悦、高村光太郎、河井寛次郎、濱田庄司、富本憲吉、児島喜久雄、志賀直哉、岸田劉生など、今では人間国宝だったり、文化勲章を受章されていたり、高名な小説家で、どの方もリーチ先生にとってはとても大切な友達でした。私はお笑いが大好きでよく観ますが、漫才のネタを書くときには何秒に1回笑いを入れるように書かれるそうです。この小説は何行に1回の割合で感動が綴られています。原田マハさんの手腕がいかんなく発揮されて、私は思うつぼで、何度も感動し涙しました。この小説の登場人物はすべて本物ですが、リーチ先生の助手となる沖亀之助だけは作られた人物らしいです。それともう一人沖亀之助の長男高市です。すごくよく書かれているので小説上の人物だとは少しも感じられません。感動に次ぐ感動の大作であっという間に読み終わりました。最近は有難いことに何でもインターネットですぐ調べられるので、名前は知っているけどどんな作品を残されたのかな?と思って調べたり、「白樺」?を調べたり、作品を読みながら実際の人となりや作品を見る事が出来てまた感動しました。無名の職人による陶芸の作品は実用的に用いられてこその美「用の美」として出てきました。民藝品の中の美、そういう目で見られたらいいなと思いました。芸術作品とは自分の個性を伸ばすこと、誰の作品でもない自分らしい作品を作り上げること。またリーチ先生は日本の友達のことを「名もなき花」とも仰いました。ただひたすら謙虚に陶芸と向き合って極めた「名もなき花」、何と素晴らしい花かと思いました。インターネットで調べていたら家にあるお皿と似ているものがありました。
上の左端のお皿はリーチ先生の作品です。真ん中は小代焼、右端は布志名焼、3つともスリップウェアです。「スリップウェア」とは古い時代の陶器の一種。器の表面をエンゴーベと呼ばれる泥漿(でいしょう、水と粘土を適度な濃度に混ぜたもの)状の化粧粘土で装飾する方法が特徴。リーチ先生がイギリスの技術を日本に教えてくださいました。
このお皿とコップは上のスリップウェアに似ていませんか?この器は友達が陶器店を開いたときに買いました。
もしこれらがスリップウェアならどんなにうれしいでしょう!味わい深いです。小皿はソーサーにも出来ます。「用の美」ですからこれからはせいぜい普段使いするようにします。
原田マハさんは2017年に「リーチ先生」で第36回新田次郎文学賞を受賞されています。この本はもう一度読みたい本です。
2020-10-14(水) 図書館資料 請求番号:913/B/ハラ
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