クラシックな音楽的生活

日々、家の中にヴァイオリンとピアノの音が流れています。

清塚信也ピアノリサイタル その3

2016-03-05 | 日記

ショパンの「舟歌」。

39歳で亡くなったショパンが、最晩年に作曲した最高傑作だそうです。

そんな名曲が、あまり一般的に知られていないのはなぜなのかしら。

清塚信也さんも、この曲のことを、

「クラシック曲の中には掘り出し物があります。この曲もそんな掘り出し物と言えます。」

と紹介していました。

「舟歌」は、清塚さんにとって、ショパンの作品の中で最も好きな曲であると同時に、

思い出深い大切な曲なのだそうです。

出会いは中学生の頃、「ひと目惚れしてしまった。」と語っていました。

コンクールでぜひ弾きたいと思い、当時の先生に申し出たのだそうです。

その最初のレッスンで、意気揚々と練習してきた「舟歌」を弾き始めたその時、

「違う!」と、なんと最初の一音で止められたそうです。

最初の一音は、「ドの♯のオクターブ」。

もう一度弾き直すと、また、「違う!」。

その後も、「違う!」「違う!」「違う!」「違う!」「違う!」「違う!」・・・

最初の一音で、3時間が経過したそうです。

もういい加減にしてくれ!と思った頃、ようやく先生が教えてくださったこと。

この最初の一音は、「フォルテ」とあるけれど、

健康で元気な中学生男子が出すフォルテなどでは決してない。

8歳の頃から結核を患い、体が極端に弱かったショパンが、

最晩年である36~37歳にかけて最後の力を振り絞って書き上げた傑作。

最後となったお披露目のリサイタルでは、この曲ともう1曲のたった2曲しか弾けなかった。

まさに命を削って弾いた曲。

そのような「舟歌」のフォルテが、そんなフォルテであるはずがない。

中学生であった清塚さんには、理解できたようでいて、やっぱり理解しきれていなかった、と。

「今は、ようやく理解できたと思っています。」

と語って、大切に大切に弾き始めた一音目。

心に沁みました。

泣きました。


コンサート前の腹ごしらえ。



「オー バカナル」のバゲットサンドとデニッシュ。




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